てるてるぼうず
前書き
この文章の構成を紹介しよう。
上の1~9段落は小説『空蝉』である。
下の1~9段落は小説『天気雨』である。
その他は作者の独り言である。
もし物語が好きなら、『空蝉』、『天気雨』だけを読むといい。
もし私の考えが好きなら中「半須短歌」だけでも。しかし内容についていくため、『空蝉』と同時に読まなければいけない。
『空蝉』、『天気雨』はそれぞれ段落に分けられているが、同じ小説ならどの順に読んでも良い。なぜなら、この小説には主人公が9人いる。
さて、どのような文章が待っているか、それはあなた次第です。
上・空蝉
一
外の銀杏の葉がひらひらと落ちている。
君は教室の左にいて、黒板を眺めていた。君は時々こっちを見て、目が合って、すぐに目を黒板に向けるのだ。そういう僕も、君がこっちを向いたら黒板を眺めるのだ。
先生が、
「では(2)を時雨亜紀さん、いくつになりましたか?」という。君は少し焦って、
「え~と、、、x=-1または3です。」
「あ~。惜しい、すっごく惜しい。今回はxの範囲がプラスなので、3だけになって…」
その日は淡々と授業が続き、放課後になった。文化祭が近づいていて、準備をしなければいけなかった。今はお化け屋敷で貞子が出てくる井戸を作っていた。僕のクラスの人はみんな協力的であった。僕はクラスの展示のリーダーなのでとても助かった。しかし、優柔不断であったせいで、指示には滞りがあった。僕が言いたいことを副リーダーの星野さんが言語化してくれた。
「ペットボトルを丸く置いて、その上から段ボールを貼るんだけど、・・・」
「じゃあ、まずペットボトルをガムテープでくっつけて円形にして、その周りにこの段ボールを、丸くしたガムテープを使ってくっつけたら良さそうだね。じゃあ女子は、ガムテープをO字に丸くして、男子はペットボトルをくっつけて、底が浮かないよう気をつけてね。」
一週間後、文化祭の前日には全員の役割の確認をした。物が壊れることもなく無事、リハーサルも終わった。その後、学校の前庭の銀杏の木の下に星野さんに呼ばれた。なんとなく何が行われるかは分かっていた。
「奏汰君、私と付き合ってください。」
正確な言葉は忘れてしまった。なぜならこの後にこの甘酸っぱい味が、肺に入るような、喉を溶かしてしまうような、毒物になってしまったからだ。
僕は優柔不断だった。もちろん亜紀のことも浮かんだ。僕は長い間迷った。そして星野さんが言った3秒後。私は、
「こちらこそ。」
と言ったようだ。
このことはすぐに学校の人々に伝わった。もちろん亜紀にも伝わった。亜紀に会って、
「明日の朝、私の家に来てくれますか?」
と言われ、いい予感も、悪い予感もした。
文化祭当日、早く起きて亜紀の家に行った。雲一つない良い天気で、秋なのに蝉が鳴いていた。どうやら亜紀のお母さんは僕が来ることを知っていたようだ。亜紀の部屋は階段を上ってすぐ右の部屋なので階段を上った。
床に紙切れが一枚落ちていて、
「かなたの恋が晴れますように。」
嫌な予感がした。急いで扉を開けた。そこには1つ。いや。1人。
てるてるぼうずがつらされていた。
二
時計の針が一刻、また一刻。
私の前に好きな人がいる。金子君だ。今は数学の授業中で、退屈そうに外の銀杏を眺めていた。私は数学の授業を聞かないと分からないので、真面目に聞こうとしていたが、片隅に彼が写っていた。
文化祭が近づいて、私は彼と同じクラス展委員になった。私は副のリーダーで彼は副のつかないリーダーだった。彼は言葉足らずなことが多く、私が助けてあげた。
一週間後、みんなでリハーサルをした。お化け屋敷だけど、誹謗中傷が禁止されているから、少し迫力が小さくなった。でも文化祭でできるお化け屋敷で最高傑作のものができた。
私は文化祭を彼と回りたかった。そのためプロポーズするなら今しかないと思った。前庭には彼がいつも見ている銀杏の木がある。そこでなら告白できる気がした。
「こんなところに急に呼び出してごめんね。奏汰君。突然だけど、私と付き合ってください。」
私は初めて金子君のことを下の名前で呼んだ。そういえば奏汰君のことを考えてなかった。もしかしたら別の子を好きになっているかもしれない。そんなことを考えて3秒が過ぎた。
「こちらこそお願いします。あなたのことをもっと好きになれるよう頑張ります。」
翌日、私は早めにやってきた。というのも装飾品の中に誹謗中傷がないか、忘れ物がないか、ごみが落ちてないかといったことを、クラス展委員リーダー、副リーダーは確かめ、直さなければいけなかったからである。しかし、彼は来なかった。仕事は少なくて済んだが、珍しい。きっと風邪をひいたのだろう。
朝の点呼の時、先生が、
「時雨亜紀さんと金子奏汰さんについて知ってる人はいるか?」
と聞いていた。どうやら欠席連絡がなかったらしい。クラスのみんなは私を見たが、何にも連絡は来ていなかった。
彼は何時間か遅れてやってきた。こんなに文化祭に適した日はないというのに、彼は青ざめた顔で、何も話さなかった。無理やり聞き出すと蝉の声がうるさかったらしい。そんなわけないと思ったが、これ以上聞くのは良くないと思った。
私は彼から離れた。きっと一人にした方が良いのだろう。私は彼と回りたかった。けれど彼のために離れなければいけなかった。
二人用のトロッコに、私だけが乗っていた。
三
ドアの風鈴がどこかものさみし気な香りを運んだ。
学校から帰ってきた亜紀はいつもだったら、靨を輝かせているのに、今日は八の字を寄せていた。何か学校で厭なことを言われたのか、体調を崩しているのか、いずれにしろ聞いておいた方がいいのだろう。その日の夕ご飯、亜紀のお皿にはいつもより多くのご飯を盛った。
「今日の学校はどうだった?」
今日の亜紀は何がかは分からないが、いつもとは違った。数秒後、
「特に何も。あ、、、、、、、、、、、、そういえば明日の朝、金子君家に来るから。」
太陽がアスファルトを照らす、文化祭の日、一緒に行くのかと思ったが、その眼には楽しさというより、嬉しさのような丿乀が見えた。金子君は初めて見る無の顔をしていた。金子君を2階に見送ると、私はこの前買ったセイロン茶をあげようとして戸棚から取った。すると、すぐに、哭き号ぶような呻き声が聞こえた。手に持っていたティーバッグを落として、急いで駆け上がった。そこには亜紀の無様な姿があった。
私と金子君はその場に1時間か、いや2時間、目を失っていた。その後彼から、麦茶を飲みながら、すべてを聞いた。
「亜紀さんは僕に恋していました。そして、僕も亜紀さんに恋してました。しかし、僕は裏切ってしまいました。私は星野さんという別の女の子に告白されて、OKを出してしまいました。もしかしたらそのことで自殺してしまったのかもしれません。」
その後、普段の亜紀がどのような暮らしだったかを聞いた。もしかしたら恋がすべてではないと、安心させたかったからだ。
「彼女は周りの女子たちと仲良く話していたように見えました。とくに小林さんとはよく話しているように見えました。」
彼は1文ずつ、ゆっくり、ぼんやり話した。彼は何回か、家に来たことがあったので、普段の話し方を知っていた。いつもも、ゆっくり、ぼんやり話しているのに、今日は、当たり前だが、震えていた。
2つのコップには麦茶が満ちていた。
四
真面目に授業を聞いているのは半分か。
まあ、文化祭も近いから、仕方ないと言えば仕方ない。しかし、教師としては授業をしっかり聞けば満点まではいかないが、90点を取れるように授業を作っているのだ。もちろん、このクラスの担任として何事にも本気になってほしいと願っている。
「では(2)を時雨亜紀さん、いくつになりましたか?」
「え~と、、、x=-1または3です。」
「あ~。惜しい、すっごく惜しい。今回はxの範囲がプラスなので、3だけになって、で、ここでおさえとかないといけないのは対数関数の真数条件なんだよね。私のおすすめなんだけど、途中式の1行目で真数条件を書いておくと間違えないから。」
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
なるべく授業に聞いてもらえるよう、生徒に相談されやすいよう、優しく教えているつもりだ。
放課後からは文化祭準備だ。といっても私は何もしない。基本的に事務以外のことは口に出さないようにしている。あまり重要でない仕事は職員室ではなく、教室で作業するようになった。生徒たちを見ていると、このクラスは素晴らしい。リーダー・副リーダーのナイスな連携、全員の協調性、何もかもが上出来である。
当日の教員の仕事はあまり大変なものではなかった。朝の点呼、担当場所での警備であった。私はバンド会場の担当であり、音楽オタクでもある。警備とはいえ、する仕事のほとんどは誘導、注意で、基本的に音楽を聞いているだけの娯楽であるはずだった。
雨を想像できないほど晴れた朝の点呼で2人がいなかった。時雨亜紀さんと金子奏汰さんだ。二人は真面目で無断遅刻は初めてだ。けれどこんな事ごときで深く心配していたら、教師としてやっていけない。
午前は歌詞が短歌のオリジナルのデュエット楽曲を聞いた。
「
A『長々し 夢にも出づる 君の顔 だからさ僕を 見放さないで
こんなこと 二度とはしない 信じてよ 僕一人じゃ 生きていけない』
B『ぬばたまの 闇より黒き 濁りたる 君の心の 本音の言葉
鈍色の 君の言葉に 騙されし 過去の自分を 恨みにくしむ』
A『君の眼に 輝く涙 どうしてさ 君は怒りで いっぱいなのに』
両『二人とも 愛し合っては いたのにね どうして今は できないのかな
もらぎもの 心狂わす ひと悪魔 川の流れの ように変われり』
A『いけないと わかっていたの それなのに 僕の一生 君に捧げむ』
B『八雲立つ 出雲に集ふ 神々よ 彼との縁を いざ切り給へ』
B『透き通る 君の瞳に 誘われて 許せぬことぞ 許さむとする
言の葉を 巧みに使ふ 過去の君 そういふ君が 好きでいたから』
A『君に言ふ 最後の言葉 この言を 君が望まば 最後にしよう
あかねさす 君を愛する この心 絶えなば絶えね わが玉の緒よ』
B『君の言ふ その言葉聞き わが心 変わらむとすは 己等の仲』
両『いざ行かん 新たな道を たどる旅 いばらの道を 歩いた後に
過去の旅 今は忘れて 進みたる 新たなうれし 見つけるために』
B『我思ふ 君との旅の そのほかの 旅には何の 意味・価値やある』
A『君許す その行動を 忘れずに 共に歩こう この先の道』
両『から衣 着る君の袖 振り給ふ 茨超えてぞ ただ道ぞある』
」
素晴らしい歌詞だ。一度不倫したが、二人の元の信頼関係で再び共に歩み出したのだ。恋愛に悲劇はつきものである。私はそういう悲劇を経験したことがないし、見たことがない。だからこそ楽観的な考えになっているのだ。
正午になると金子奏汰さんが来た。そこで恐ろしい話を聞いた。少年少女の悲劇だ。
午後もバンド警備をしなければいけなかった。
「
この歌は君への悲しみと喜びのはざまのぼくのこと
『
あの夏に 広がってた 入道雲を 覚えてるか?
僕が君を 幸せにすると 告白した あの夏のこと
三年前 あの砂浜で 顔を赤らめ 頭を下げ
何もかもが 報われたように 君は僕に 言葉返した
目をつぶる僕の前 言葉がもう決まっていたように
あなたと一緒に いられるならば それ以上のことは 望まないよ
私もあなたを 幸せにするさ それ以上のことを させてよ
あの時君が言ったあの言葉いまもぼくの心の中で叫び続ける
あの町に 輝いてた 星と夜景を 覚えてるか
僕が君と 僕らの子供と 見とれていた あの夜の事
二か月前 あの小丘で 顔を笑わせて 上を向いて
流れ星が 叶えてくれたから 僕たちをずっと 幸せにした
この道に 置かれている 白いスミレは 見えてますか
僕が君を 守れなかった 事故が起きた あの昼のこと
一日前 この十字路で 顔を赤らめ 笑いながら
最期君が いった言葉が 心の隙間で 叫んでいる
あなたと一緒に いられたことを 何一つも 後悔はしないさ
私があなたを 幸せにできていたら もう 大丈夫だから
君と一緒に いられたからね できるだけ幸せに したつもりだ
君が僕を 幸せにしたように 互いが幸せなら いいじゃない
あの時君が言ったあの言葉いまもぼくの心の中で叫び続ける
』
この歌は君への幸せと楽しさを独りで泣きそうになるぼくのこと
」
恋愛に悲劇はつきものである。これは完全にプラスの状態から、少しのマイナスになる時の幅が大きいからである。今日の悲劇は、小さいプラスから完全なマイナスへ行った。
ドラムの音が私の耳を貫いた。
五
一匹の蝉が閑かにないた。
文化祭初日、奏汰が帰ってきた。中学生の時は「あ~。楽しかった。」と言って帰ってきたのに、今日は無言でカーディガンを放りながら、自分の部屋に行った。カーディガンを洗濯機に入れようとポケットを調べた。そこにはくしゃくしゃになった紙が入っていた。
「かなたの恋が晴れますように。」
奏汰の字ではなかった。奏汰は恋をしていることを初めて知った。誰の字だろう。そしてなぜぐしゃぐしゃにしているのだろう。
夕飯は私が先に食べた。聞いてはいけない質問のため、この問いは一生措いてしまった。
その後奏汰は学校を休むことが多くなった。ずっと青白い顔をして一週間に一回しか行けなかった。授業についていくのは簡単だった。2年前に辞めた塾でもう学んでいた。自慢になるようだが奏汰は頭がいい。先生からも信頼されている。
後日、先生から電話が来た。
「担任の和泉です。本日は金子奏汰さんの欠席状況についてお電話しました。お母さんも知ってらっしゃるように、お子さんの欠席数が増えてきています。何か心当たりはありますか?」
「私にもわかりません。ただ一つ気になっていることがあって、この前、、、いえ、何でもないです。」
「そうですか、、、」
「先生は何か知ってらっしゃるのですか?」
「、、、、、、、、いえ、何も。本日はありがとうございました。何か分かればお電話ください。」
そう言って電話は切れた。
リビングには電話を置く音だけが響いた。
六
「皆さん。おはようございます。皆さんの思いが届き、今日は快晴で、文化祭に素晴らしい天気ですね。さて、文化祭で皆さんにとってほしい行動について私から面白い話をしましょう。皆さんはてるてる坊主を知っていますね。そして童謡の『てるてる坊主』は分かりますか?『てるてる坊主てる坊主明日天気にしておくれ』というフレーズの。でもその歌詞を全部覚えている人は少ないと思います。あの歌ではもし晴れたら金の鈴、甘いお酒といったご褒美を約束しています。しかしもし晴れなければ『そなたの首をちょんと切るぞ』と脅しています。この由来は諸説あるのですが、昔ある時、長雨に困り果てていた大名の前に、『必ず雨を止めてみせる』と豪語する有名なお坊さんが現れました。しかし、お坊さんがいくらお経を唱えても雨は一向に止みませんでした。怒った大名は、嘘をついた罰としてお坊さんの首をはね、白い布で包んで吊るしたそうです。すると翌日、見事な青空が広がったそうです。私が皆さんに言いたいことは、この由来を覚えとけ、やてるてる坊主をたくさん作れということではなく、皆さんが今回の文化祭で、お客様の信頼を得られれば、直接ではないかもしれないですが皆さんは報われるということです。裏を返すと皆さんがお客さんのことを裏切れば、皆さんに天罰が下されるかもしれません。今日は皆さん一丸となっておもてなしをしましょう。私の話は以上です。」
「校長先生、ありがとうございました。」
八
掃除機の音がうるさい。
今日は日曜日でデザイナーの仕事はなかった。休日というのはどこかへ行くには短すぎる。私は絵を描くのが好きだった。けれど仕事となると事務の作業が多く、時々嫌いになりかけた。しかし洗脳のように自分を言いくるめた。することがなくただニュースを眺めていた。
「続いてこちらの事件です。先日都内で自殺した高校生が発見されました。自殺した人物は高校一年生の女子高生で、女子高生の両親は…
『もっと娘と一緒に話をしたかった』
さて、続いてのニュースです。…
」
おやおや、哀れなニュースがやっている。私はこのニュースを見て、なぜ少女が自殺したか考えた。いじめなのだろうか、失恋なのだろうか。私は独りで考えるのが好きだった。それは独りでしかできない。そして一日中考えることで自分を見つめなおすことができる。自分はどうなりたいのか、自分は何が好きなのか、誰が好きなのか。そんな風に、私はデザイン活動を続けた。
未だ私の描きたいものは描けていない。この仕事を7年続けているが、万人にうけるものというのは存在しない。私の目標は人を救うことだ。私は曲で救った人、救われた人を知っている。そんな風に私はデザインで人を救いたい。今回も救えなかった。そもそもデザインで人を救うのは99%無理である。その1%とは、服を作り続ける忍耐力、絶望に耐える精神力、アイデアを思いつく天賦の才、何もかもが必要なのだ。私はまた絶望に耐えなければならない。
私は恋に恋をしている。私は未だ人に恋の感情を抱いていない。きっと人に恋せばこの恋は消える。恋というのは無様なものである。人に話せば嘲笑われる。自分に言っても嘲笑われる。このことは誰にも話せない。
だから人は恐ろしい。
九
「小学校の頃に私を狂わせた事件を紹介しよう。
どうやら私に似た人が帰りの電車で私の知人に暴言を吐いたようだ。
『ちゃんとあやまった?』
その日だけで20回は聞いただろう。はじめは私は何のことか分からなかった。私は謝らなかった。知らないことをなぜ謝らなければならないのだろう。そのせいで私は嫌われていたのかもしれない。
嫌がらせを受けることが多くなった。私はメンタルが強いせいか、精神的な嫌がらせは感じなかった。しかし身体的な嫌がらせを私は好まなかった。例えば、昼休みにサッカーをしたく、校庭へ行った。5時間目が始まる前に教室に戻ると、別の知人に、なぜ自分と遊ばなかった、と腕をつねられた。その時に言われたことを今も覚えている。
『お前のためだ。』
私はこの先の短い一生この言葉を嫌っていくつもりだ。
きっとこれを読んでいる君は、何故助けを求めないのか気になっているだろう。私は自分のせいで周りの人が不幸になるのが嫌だった。私が先生に言ったら、この人たちは怒られるだろうそれが嫌だった。それに私は、もう一つの事を嫌っていた。それは、なぜ先生に言ったのか、と言われることだった。そのため私は親・先生に笑顔を見せた。
ある日、この嫌がらせが目に余り、先生が給食前にクラスのみんなを叱った。私は泣いた。その日のデザートは三色団子だった。その日は学校でずっと泣いていた。嫌がらせをしていない人からも『ごめんね』と言われる。どんなに苦しいことか。先生にいじめについて聞かれた。時系列はぐちゃぐちゃかもしれないし、質問も覚えていない。私はいじめを認めたくなかった。ずっと友達でいたかった。いじめと認めてしまったら、戻れない。
そして、中学生になった。もともと同じクラスの小林さんもいた。ここで奏汰と出会った。小学校のメンバーが減ったからであろう。嫌がらせも減り、だんだん楽しくなっていった。これも全て奏汰のおかげかもしれない。
それから今、高校1年生まで奏汰と同じクラスで居れた。
つい昨日、奏汰が星野さんと付き合ったニュースを聞いた。その時私は支柱を失った気がした。」
ここまで書いて、私はこの紙を水で濡らして、千切って、ティッシュにくるんで、ごみ箱に捨ててしまった。新しい紙を取って一言、
「かなたの恋が晴れますように。」
私は濡れた手でロープを握っていた。
(この物語はフィクションであり、実在する人物・団体とは無関係です。)
十
恋物語を書くのは難しい。
小説家というのは頭の中に人間を飼っているようなものだ。その人間にはある程度の過去、性格が与えられていて、この人たちがどう動くのかを見ていく。思わぬように動くこともあれば、死ぬこともある。けれど、動き方には一定のルールがある。それは小説家自身の性格が根本となっている。そのため、小説家は頭の中の人間を見て、自分を見つめ直すことができる。また、小説家は考えるのが好きな種類の人間である。その考えの先には、哲学、恋愛論、心理学といった学問の問題にたどり着くことがある。
一つ例をあげよう。小説家はなぜ自分を一つの話にまとめない。一見すると、自身を表すのに多数の本は必要ない。しかしここに数多の話が必要な理由がある。それは自己を見つめ、新たに文を書くことで新たな自己に出会うのだ。
このように小説家というものは自己を深く掘り下げる哲学者である。これからは哲学者の一人として、この『空蝉』を読もうではないか。
中・半須短歌
一
私の頭の中の住人は面白い。
人は常に完璧を求めるが、完璧な人間は面白くない。なぜなら完璧に予測できてしまうからだ。私はこれをよくビデオゲームに例える。君が最もすごいと思うゲームを考えて欲しい。RPGでも、スローライフでも、オープンワールドのゲームでもいい。君はそのゲームがなぜ「すごい」か説明できるか。おそらくどんなゲームでも「思わぬ○○」があるはずだ。「思わぬ景色」、「思わぬ出会い」、「思わぬ敵」。これらを人間に当てはめるとどうだろう。「思わぬ話題」、「思わぬ顔」がある人間は面白いではないか。
では改めて、第一段落を読もう。この物語の主人公「金子奏汰」は優柔不断であった。面白い。ここで一つ問をたてよう。この人間は未来に起こることがなんとなく予想できていたが、実行しなかった。なぜ人の悪いところというものは、そう簡単に切り離せないのか。人は自分の悪いところを見つけると修正したくなる性質を持っている。ところが、変わる勇気というものを、人間は大きく失った。変わることは怖い。変わらないことで生きられることを知っている。変わってしまったら生きられないかもしれないという怖さがある。よく「高校デビュー」の話を聞く。高校デビューと聞くと悪いイメージがある。勇気を出した行動が悪く映えてしまう。私はそれは環境が悪いのではないかと考える。例えばこんな状況だ。君の友達がが同じ見た目で、同じ声で、急にいつもと違う話をしたら、その人はもう君の友達でない。
つまり、悪いことを切り離せないのは、人間が変わりたくないからだ。
先ほどの話と矛盾すると思った人がいるかもしれない。それは「人が変わらなければ、思わぬ展開はないので、面白さを求めるなら変わった方がいい。しかし変わってしまったらその人ではない。」というものである。この話には説明が必要だ。
結論から言うと、人はだんだんと変わっていくから面白い。その変わり方は微々たるものだが、変わり方は予測がつかない。しかし変わる原因は基本的に3つしかない。
一つ目が目的物。お金のことが多い。自己の幸福のために人は動く。
二つ目が恋。恋と言っても広義なもので、人との付き合いも含まれる。とりあえず、人と会い、自分の心が変わればよい。
三つめが他人の死。ここでは他人とは家族含める。
この三つは合わさって、人を変える。そして、自分の死を想定に作られている。しかし「基本的に」と書いたのは時々、それを人は忘れてしまうからだ。これも面白い。
二
ここに恋愛論の大きな問題がある。なぜ「恋は盲目」なのか。恋というのは頭に残る。考えるのが好きな人も独りの時は頭を恋で埋め尽くしてしまう。星野は金子しか見れていなかった。もはや二人以外はただのこけしだった。しかし、星野は、時間が短かったからだろうか、大した悲劇には至らなかった。
ではなぜ、恋は盲目になりやすいのか。それは恋が他と違って簡単に手に入れられ、大きい心の変化であるからだ。人は自分を変えると重要なことを忘れてしまう。
ここでは「重要なこと」とは何かを隠す必要がない。それは哲学の最大の問題である。人はなぜ生きるのか。人は自己の幸福のために動く。人生の幸福の総量を高めようと努力するのだ。これから先の幸福を微塵も感じなくなったら、人は死ぬのだ。
しかし重要なことを忘れていった人は、表面的にしか物事をとらえることができない。恋においては、「恋人の幸せが、自己の幸せ」と考える人が多いだろう。一般的にこれは正しい。なぜなら多少の痛みを負っても、それを失くすような愛を受けられるからだ。しかしそれはダウナー系麻薬にすぎない。痛みも過ぎては死に至る。麻薬も過ぎては死に至る。
だから恋は盲目なのだ。
三
人は他人の死をどう受け止めればよいか。亡くなった人が自分に近ければ近いほど絶望する。なぜなら自分の未来を大きく変えるからだ。先ほど挙げた3つの原因のうち、他人の死は特徴的である。そのミソは不可逆的で、自然的であることだ。人はできるだけ変わりたくない。恋は、初めはいい方へ進むから願う者がいる。しかし、他人の死は悪い方向へ進む。これを人は受け止めなければならない。
精神の弱い人はすべての友達を失くす。人は変わってしまったものに近寄らない。死というのは一人がいなくなるのではない。八百万のものが消えるのだ。
また、人が自殺したとき、その原因を探す人は少なくないだろう。大抵の場合、正確な理由を探すのは難しい。それは自分を原因として置いてしまうからだ。自分が原因でないと考えてしまっても、返って自己を苦しめる。だから自然死以外の死は嫌われている。
四
恋愛に悲劇はつきものである。そもそも人間は感情の落差で悲しみを感じる。直接感じることができない幸福を感じることができる喜びへ変える、底を1より大きいものとする対数関数だ。感じる喜びを高めるには、大いなる幸福を要する。小さい幸福(生きているだけで幸福は常にある)は大いなる哀しみを作る。幸福量がある正の幸福量より小さいときに、喜びの量が任意の喜びの量より小さくなる時に人は死ぬ。
恋愛の幸福量は異質だ。それゆえ、恋愛を失うと感じる喜びは一気に落ちるのだ。
作中に登場した先生は悲劇を聞いただけで、感じてはいない。なぜ、楽観的になってしまうのか。それは、軽い失恋をエンターテインメントとして、捉えてしまうからだ(もちろん、人が死ぬのは軽くない)。そのため、恋バナや恋愛の曲、アニメが流行るのだ。恋愛は思わぬことが多いから人は取り憑かれる。必ず良いことしかないのならば、皆、しているはずだ。しかし、良さと危険の無さはトレードオフだ。
盲目になっても、危険を忘れない覚悟を持つ者にしか、恋愛は許されない。
五
親は子にどう接すればよいか。
方針は、「子を良い方向に進ませる」である。そのために、日本国憲法第26条第2項では「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」とされている。
もちろんこれだけが、親にある責任ではない。2021年のユーキャン新語・流行語大賞でトップ10に選出された「親ガチャ」という言葉がある。子は親を選べないから「ガチャ」なのだ。残念なことに、これは子だけでは変えられないため、残念に思う子が多くなる。しかし「子ガチャ」というのは無責任な言葉だ。親というのは、生まれてくる子がどんな子でも我慢しなければいけない。なぜなら選べないことを知っているからだ。
よく、「敷かれたレールを走っているだけの人生」と言うが多い。これはあながち間違いではない。親はこのレールを決定する使命がある。しかし、1本のレールは非常につまらない。親はもともと多数あるレールから悪いレールだけを取り除かなければならない。もちろん、レールを取り除くというのは会話による。
ではどのようにレールを取り除けばよいだろうか。レールにはいくつか種類がある。勉強、恋愛、友人関係、資産、犯罪など様々ある。有害なものは取り除かなければいけない。裏をかくと、無害なものは取り除いてはいけない。
勉強は時間が失われるということを除き無害である。
恋愛は絶望が存在するということを除き無害である。
友人関係は基本無害だが、いじめなどには気を付けなければいけない。
資産については必要な事、不要なことを見極める必要がある。
犯罪へのレールは取り除かなければいけない。
親として生きるのは難しい。
六
「今や世界は目的がない。そして目的がない時に来る当然のことゝとして、心そのものよりも、その心が如何見られるかといふことに念を置いて生きてる者等ばかりとなつた。」(中原中也『生と歌』より)
人は自己の幸福のために承認欲求を解消することが多い。他にやることが無いからだ。そして、過度な承認欲求は悪を生む。自己が原因の炎上はもちろんだ。それ以外にも、デマやプライベートの漏洩だ。これも恋愛と同じで、過度に熱中すると盲目になる。
承認欲求の悪いところは、求める欲求が漸く深くなることだ。そのため、いつか、過度に熱中してしまう。時が経つにつれ、抜け出すのが難しくなる。
作中で校長は「皆さんが今回の文化祭で、お客様の信頼を得られれば、直接ではないかもしれないですが皆さんは報われるということです。裏を返すと皆さんがお客さんのことを裏切れば、皆さんに天罰が下されるかもしれません。」といった。これはなぜだろう。それは、共同体全体の幸福量が上がると、共同体の任意の人物の幸福量が上がるからだ。自己中心的な行動よりも利他的行動の方が幸福度が上がりやすいことが社会実験により分かっている。
「情けは人の為ならず」とはよく言ったものだ。
七
小林のことは分からない。
八
どうすれば人の命を救えるのか。このことについて住人はよく考えている。
「死ぬな」だけでは人は救えぬ。何か生きる希望を与えないと人は死ぬ。生きる希望というのは、その人を愛してくれる人間だ。人を救いたいデザイナー、音楽家などはそのことを知らねばならぬ。
人は心をいくつかに分ける。
1つは主なる心。何をするときにも出てくる心だ。
2つ目以降は主なる心を変化させる悪魔だったり、その人の経験だ。
人は皆、良くあろうとする。それを拒むように2つ目以降が邪魔をし、うまくできない。だからこそ人間は面白いのだ。しかし、考える時は心を対等にし、ディベートさせなければいけない。なぜなら、物事の善と悪を見なければ、正しい行動はできない。
最後にこの考える人は面白いことを言っている。「私は恋に恋をしている。」というのはどういうことだろう。恋には様々なものがある。同性愛、異性愛、物への恋、概念への恋。ここでしっかり区別しておかなければいけないのは「愛」と「恋」の違いである。ここでは自ら好きになるのが「愛」で、自然と魅入ってしまうものを「恋」と定義しよう(「同性愛」、「異性愛」などは名詞として「愛」と呼んでいるが、恋として扱う)。さて、先ほど書いたいくつかの恋の種類には一つの共通点がある。それは恋をしたからそのように分類されるのだ。例えば、男性がある女性に恋をする。恋する前まではその男性はどれにも分類されなかった。恋をしてはじめて「異性愛」になったのだ。つまり「異性愛だから異性が好き」、「同性愛だから同性が好き」ではないのだ。
では、なぜ「人は恐ろしい。」のか。それは恋に恋しているこの人物が、恋と離れたくなかったからだ。人は一つの事にしか大きな愛情を注げない。人と会ったらもう恋と離れなければいけなくなるかもしれない。だからこの人物は人を恐れている。
九
いじめについて。いじめる気持ちは分からない。しかし私は、いじめが駄目であることが分からないほど落ちぶれていない。いじめというのは何もかも奪う。いじめっ子にも得はない。しかし残念ながらいじめられっ子はその何倍の苦痛を負う。
そしていじめの最も嫌われることは、誰にも相談できないことである。そのことについて、この「時雨亜紀」はよく知っている。そして周りからも助けが出ることはない。なぜなら本人も断るからだ。周りの人を巻き込みたくないのが一番だからだろう。学生のいじめられっ子は親に隠すためにも、毎日学校に行かねばならない。いじめられっ子は先生に報告することができない。
先生に怒られたとしても、いじめっ子は完全に反省しない。だが、いじめられっ子の気分は少し楽になる。別の言い方をすると幸福度が回復する。
小学生のいじめ程、悪質なものはない。中学以降は自己の評価に大きくつながるからだ。周りの者からは小学校のいじめは覚えられていない。いじめっ子も覚えていないかもしれない。いじめられっ子は「○○らに嫌がらせを受けて、それが辛い」ということを覚え続ける。また、それも話せない。それを隠すために人は何かに愛情を注ぐ。人でも、音楽でも何でもいい。そうでもしないと崩れてしまうからだ。それを少女は「支柱」と呼んだ。
これはいじめに限らないが、「お前のためだ。」というのは信用できない。人はそもそも自分のために動く。そして、人は上に立つと同時に、下の人を上げて「道徳的」を得ようとする。ある意味、文明化の使命論である。自身の望まない方法で「お前のためだ。」と言われても、誰が認められるのだろうか。
どうすればいじめはなくなるか。嫌がらせはエスカレートしていく。嫌がらせがないとつまらない。だから無理なのだ。
十
金子奏汰。星野宙。時雨琴音。和泉徹。金子彩羽。四月一日忍。小林慶子。森菊雄。時雨亜紀。半須短歌。
これまでこのじゅうにんについて語ってきた。さて、これからは小説家に戻ろう。なるべくバッドエンドにしたくない。これより一人の性格を変える。
金子奏汰。彼は進取果敢となる。
これでどうなるか、わたしのじゅうにんに任せようではないか。
下・天気雨
一
外の銀杏の葉がひらひらと落ちている。
君は教室の左にいて、黒板を眺めていた。君は時々こっちを見て、目が合って、すぐに目を黒板に向けるのだ。
その日は淡々と授業が続き、放課後になった。文化祭が近づいていて、準備をしなければいけなかった。今はお化け屋敷で貞子が出てくる井戸を作っていた。僕のクラスの人はみんな協力的であった。僕はクラスの展示のリーダーなのでとても助かった。
「ペットボトルを円形に並べてくっつけて、その周りにこの段ボールくっつけて」
一週間後、文化祭の前日には全員の役割の確認をした。物が壊れることもなく無事、リハーサルも終わった。その後、学校の前庭の銀杏の木の下に星野さんに呼ばれた。
「こんなところに急に呼び出してごめんね。奏汰君。突然だけど、私と付き合ってください。」
少しびっくりしてしまったが、亜紀のことを思い浮かべて、
「まずはありがとう。だけど、ごめんなさい。僕には別に好きな人がいるので。」
噂が広まるのも早いもので、星野さんを慰める声が多かった。
私は別で亜紀を呼び出した。
「中学の頃からあなたが好きでした。付き合ってください。」
「ええ、喜んで。」
文化祭当日。天気雨で銀杏が濡れていた。
二
時計の針が一刻、また一刻。
私の前に好きな人がいる。金子君だ。今は数学の授業中で、私は数学の授業を聞かないと分からないので、真面目に聞こうとしていたが、片隅に彼が写っていた。
文化祭が近づいて、私は彼と同じクラス展委員になった。彼は図なども用意してくれる、自分の仕事に熱心な人だった。
一週間後、みんなでリハーサルをした。お化け屋敷だけど、誹謗中傷が禁止されているから、少し迫力が小さくなった。でも文化祭でできるお化け屋敷で最高傑作のものができた。
私は文化祭を彼と回りたかった。そのためプロポーズするなら今しかないと思った。前庭には彼がいつも見ている銀杏の木がある。そこでなら告白できる気がした。
「こんなところに急に呼び出してごめんね。奏汰君。突然だけど、私と付き合ってください。」
「まずはありがとう。だけど、ごめんなさい。僕には別に好きな人がいるので。」
残念ながらフラれてしまった。数時間教室で落ち込んでいると、ある噂が入ってきた。金子君が星野さんに告白して成功したらしい。色々と小林さん達が慰めてくれた。
金子君が幸せになるのならば諦めるべきだ。
三
ドアの風鈴と笑顔が光っていた。
文化祭準備から帰ってきた亜紀はいつもより笑って、
「奏汰に告白された!!」
「えっ!!詳しく聞かせて!」
亜紀はずっと笑顔で話してくれた。
亜紀が金子君を好きだったことは薄々気づいていた。金子君は私たちの家の近くに住んでおり、賢いため、何回か家に来て教えてもらった。そのため今度家に来てもらったときは私も色々、教えてもらおうと思う。
亜紀は自室にこもって手紙を書いていた。内容は教えてくれなかったが、きっといいことを書いているのだろう。どうやら明日金子君に渡すらしい。
天気雨が降っていて、亜紀は折り畳み傘を持っていた。
2人のクラスのお化け屋敷は怖かった。
四
今日は全員が出席していた。素晴らしい文化祭だ。雨が少し降っていたが、それにより、お化け屋敷が冷えていた。
バンドの警備は面白い。ほとんどの団体は有名な曲を演奏していた。
「
この曲の歌詞はすべて15分で書かれてます
歌詞はない歌詞はない ここに歌詞はない
変な内容でも作らなければいけないんだ
歌詞はない歌詞はない ここに歌詞はない
未熟な僕でも作らなければいけないんだ
ああ 嗚呼 とりあえずサビに入ろうか
君がこの曲を聴いているということは きっとちゃんとした歌詞ではないのだろう
僕がこの曲を歌っているということは きっとちゃんとしたウタではないのだろう
この歌に込められた感情なんてないんだよ
この歌に込められた思いでなんてないんだよ
良さがない良さがない これに良さはない
心がなくても書きたいんだ
良さがない良さがない これに良さはない
歌えないのに歌詞を書いてんだ
ああ 嗚呼 とりあえずもっかいサビに入ろうか
君がこの唄を聴いているということは きっと君は笑っているだろう
僕がこの唄を歌っているということは きっとみんなを笑わせているのだろう
ネタ曲と呼ばれる曲たちなんて感情を込めなくていい
この歌がみんなを笑わせているといいな
ああ 嗚呼 メロディを変えたいな
きっとネタ曲を作っている人たちは笑わせることだけを考えているんだろうな
僕がこれを作っている間にそう思ったんだ
君がこのネタ曲を聴いているということは きっと君は笑っているだろう
僕がこのネタ曲を歌っているということは きっとみんなを笑わせているのだろう
ネタ曲と呼ばれる曲たちなんてたくさんあるから
僕もみんなを笑わせられるといいな
この15分で何かが変わったといいな
」
中でもオリジナル曲を演奏する団体もいた。不倫、恋人の死、失恋など恋の歌が多かった。百人一首には恋の詩が43首ある。古来、人々は恋に魅了されてきた。それの名残なのかもしれない。
五
文化祭前日、奏汰は、
「ご報告があります。亜紀に告白して成功しました。」
何と嬉しい報告だろうか。恋愛ごとにはあまり口を出さないようにしている。明日は文化祭の最終チェックで、早く行くらしい。私は忙しく、文化祭には行けない。
明日、玄関まで見送った。学校に行く途中、天気雨が降っていたが、傘を持たせていなかった。持たせなくて良かったのかもしれない。
六
少し前から降っていた天気雨のせいで、朝礼は教室の中で行われた。
「皆さん。おはようございます。今日は天気雨ですね。数十分で晴れるので、あまり気にする必要はないですね。さて、天気雨に関することを話しましょう。天気雨は狐の嫁入りとも呼ばれています。これは日本の伝説に因むのですが、あまり狐の嫁入りを見るのは良くないと言われています。人間の領域を越えた神聖な儀式を覗き見ると、狐の怒りを買って災いや祟りを受けると信じられていたからです。でもこれって狐にとって、とんだ災難ですよね。だって全ての狐が悪いというわけではありません。なぜこうなったかというと、狐がその世の人々に悪いことをしすぎて、信頼を失ったのでしょう。私が皆さんに言いたいことは、この由来を覚えとけや、狐にはついていくなということではなく、皆さんが今回の文化祭で、お客さんから信頼を失うと、これからも気に入ってもらえないということです。今日は皆さん一丸となっておもてなしをしましょう。私の話は以上です。」
「校長先生、ありがとうございました。」
八
デザイナーの仕事は難しい。日曜日ですることがないので、ただテレビを見ていた。
「続いて音楽のニュースです。最近、流行りの初夏南さんによる曲『15分』が話題になっています。町の人は、、、
『ネタ曲なのに歌詞が地味に深いのが良い』
『いつも学校行くときとかに口ずさんじゃう』
作曲者の初夏さんは、、、
『ネタオンリーで作ろうとしたら思いが少しのっちゃた』
と話していました。」
音楽で人を笑わせられるのは、素晴らしいことだ。私はデザインの仕事で人を救いたい。そのために、人を笑顔にさせるのは有効かもしれない。
九
明日、奏汰に渡す手紙を書こう。
「昨日話せなかったことを話すね(これからも話すと思うけど)。
実は、私もずっと奏汰のことが好きでした。小学校にいたころいやなことがあって、少し鬱気味で、中学に上がって、奏汰に会って、少し救われたの。
奏汰から告白されて、私、嬉しかった。
今日、色々なところを回りたい。まず私たちが頑張ったお化け屋敷、隣のクラスのトロッコ、演劇部。
できればたくさん並ぶところがいいな。」
天気雨が行きと帰りに降っていた。奏汰は傘を持っていなかったので、相合傘した。
(この物語はフィクションであり、実在する人物・団体とは無関係です。)
十
ハッピーエンドは美しい。『天気雨』単体ではつまらない。すべて読んだ読者はマイナスからプラスへ上がったから美しく感じるのだ。私はこれとはまた別の小説を書かねばならない。なぜならそれが小説家にとって生きる理由だからだ。
後書き
さて、後書きとしてキャラ設定を見ていこう。
金子奏汰、高校1年生で文化祭のクラス展委員長。徒歩20分の通学路に亜紀の家があり、たまに家に遊びに行く。時雨亜紀とは中学1年生から4年間一緒。
星野宙、高校1年生で文化祭のクラス展委員副リーダー。金子奏汰とは家が遠く、反対方向。金子奏汰とは違う中学出身。
時雨琴音、時雨亜紀のお母さん。49歳。旅行好きの元国語教師。そのため学生の恋愛に敏感。
和泉徹、金子奏汰たちの担任で数学の教師。29歳。生徒は全員さん付けで呼んでいて、自分は怒られてもいいから、生徒に点を取ってほしいと思い、授業ノート、雑談ノートを作っている。実は文章読解も好き、音楽は歌詞に注目する。一人称「わたくし」
金子彩羽、金子奏汰のお母さん。50歳。恋愛には口出ししない、子供思いの母親。
四月一日忍、金子奏汰たちの学校の校長。朝礼では面白い話をして、最後にどういう行動をしてほしいか示す。
小林慶子、小学校から時雨亜紀と同じ学校でいじめっ子、小学校の時、一度大きく怒られて、反省はしたが、少しだけ、とげのある話し方をする。小学6年生から、中学2年生以外時雨亜紀と同じクラス。
森菊雄、デザイナー。30歳。子供のころ、ショーウィンドーの服を見て、デザイナーになることを決意、初夏南の楽曲で「人の命を救うデザイン」を目指す。
時雨亜紀、高校1年生で金子奏汰たちのクラス。小学6年生からいじめを感じるが人にいない、小林さんに少しトラウマがある。
半須短歌、小説家。作者が生み出した、作者であり、作者でないもの。一人称「わたくし」
番外編
初夏南、音楽家。半須短歌の世界では有名な音楽家。実は初夏南(Nan Hatsuka)は半須短歌(Tanka Hansu)をローマ字にした時のアナグラム。
情景描写について
蝉の鳴き声・・・儚く、すぐに死んでしまうものの例え。
晴れ・・・てるてる坊主ができてしまった例え。
天気雨・・・雲は一つもないが、てるてる坊主はできていない。
楽曲について
『15分』は本当に15分で作られています。
歌詞は全て半須短歌(初夏南)によって作られています。動画投稿サイト・音楽配信サービスでの投稿・配信は予定していません。




