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第4話 呪力制御

「だーう……に、さま」


 僕は、屋敷の一室で、黒髪の赤子と戯れていた。


「よーし、今日はよちよちの練習だ」

「よちよち」


 彼女は天音。

 僕の従姉妹にして義妹に当たる子だ。

 赤ちゃんらしく好奇心旺盛で、あと少し甘えん坊な可愛いやつだ。


「ふふ。今日も二人は仲良しさんね」

「はは……父さんのことももう少し構って欲しいなあって……」

「大丈夫。天音はちゃんとあなたのことも好きなはずよ。ね?」

「ぱーぱ」


 天音がお父さまの方へと歩いて行くと、ぎゅっとその足に抱きついた。


「うおおおおおおおおお、天音!! なんて可愛いやつなんだ!! しかも、こんなにハイハイが上手に……この子は天才だああああああ!!!!」


 お父さまが感激のあまり天音を抱き上げると、頬をスリスリしはじめる。


「う……だーう……」


 さすがに髭の感触は勘弁のようだ。


「先生も良かったのかしらね。歳は一年ぐらいしか違わないのにね」

「確かに、不思議なものだな。それに、不思議ついでと言ってはあれだが、伊織は決定的に他の子と違う部分がある」

「そう……ね」


 二人が顔を見合わせる。

 恐らく、僕の中にある力のことを言っているのだろう。


 あの晩、出産の間際、謎の男が侵入してきたが、僕はその時に力を解放して、彼を消し飛ばしてみせた。

 間近で見ていたお母さまによれば、あれは間違いなく呪力の発露だったそうだ。


「一度、確かめてみるか」


 お父さまが一枚の札を取り出す。


「人差し指と中指で挟むように持ってみろ」


 僕と天音は促されるままに符を指に挟む。


「それは呪力の量を測る符だ。真ん中に模様がうっすらと描かれてるだろう? 呪力が高ければ高いほど、この模様が黒く変色して――」


 ――ビリッ。


 お父さまが説明している間に、僕の持つ札がバラバラに破れてしまった。


「ふむ……」

「あら……」


 二人は困ったような表情を浮かべている。


「だーう」


 一方の天音は札の模様全体が変色しきっている。

 これは……どうなんだ?


「超ヤバいぞ」

「ですね」


 お父さまがゆっくりとこちらに近付いてくる。

 そして、わしっと僕の頭を掴むようにして撫でる。


「伊織、お前も天音と一緒に修行してみないか?」

「え……?」

「もちろん、お前がいいなら……だが」


 考えるまでもなかった。

 僕は今日まで、睦さんたちに世話になってきた。

 直接の血の繋がりもないこんな僕を……


 なら、僕のやることは決まってる。

 また、この前みたいな脅威が現れるかもしれない。

 そんな時に恩を返せるように、僕は強くならなきゃいけないんだ。


「やります……やらせてください!」


 こうして、僕の呪力の修行が始まるのであった。

 女性だけが呪力を授かるこの日本で、どうして僕に呪力が宿ってるのかは分からない。

 だが、この状況は僕にとっては何より喜ばしいことだった。


 僕は前世、力が無くて家族を守れなかった。

 新たな生を受けたこの世界でも、僕は両親を失った。


 だが、今の僕には新しい家族がいる。

 彼らは僕を本当の家族のように迎え入れてくれた。


 僕は今度こそ大切な人たちを守りたい。

 僕の中に何か力があるなら、それを鍛えたいのだ。


 そしてまず、僕たちは庭に敷かれたカーペットに横になっていた。


「呪力の基本はまず集中だ……ただその場で横になるだけで良い。体内にある、空気とは異なる何かを掴むんだ」


 端的に言うと、呪力の操作は呼吸に近いらしい。

 だが、生まれたての場合、この呪力の感覚はとてもピーキーで、それでこうしてリラックスした状態で操作を学ぶことが基本なのだそうだ。


「だーう……だあ!」


 ちなみに天音の方はご覧の通り、じっとしていることが既に難しいそうで、早々にギブアップしていた。

 まあ、本当ならこの歳でやることではないそうなので無理もない。


 だけど僕には関係ない。

 出来ることは何だってやるんだ。

 それは、早ければ早いほど、僕の身になる。


「確かあの時は……こうやって」


 イメージとしては胸の中にある何かに手を突っ込むような感じだ。

 手を突っ込むと言っても生身の手というよりは、観念的な……


 そう霊体の手だ。


 僕には生身も身体とは別に、霊体のようなものが重なり合うように存在している。

 それを動かして呪力を引き抜いて……


「おお。掴んだか……!」

「一度だけでなく、二度も呪力を引き出すなんて、凄いわ、伊織!」

「あ……え……こ、これどうすれば」


 引き抜いた呪力が凄まじい勢いで渦巻き始めた。


「よし……よし、構わん。そのまま射出するんだ! 空に向かって打てば、結界が受け止めてくる。後の責任は俺がとる」


「う、うん。呪力を放つには、こうして……」


 ――ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!


 前にかざした手から、極太の光線が射出された。

 いわゆるゲロビというやつだ。

 それは屋敷の上空に一直線に飛んでいくと、凄まじい爆発を引き起こした。


「あ……」

「きゃっきゃっ」


 唖然とする両親。

 手を叩いて大はしゃぎの妹。


「け、結界がああああ!! 結界が破壊されましたあああああああ!!!!」

「奥様、旦那様!! 避難を避難をおおおおおおおおおお!!!」


 どうやら僕の攻撃は屋敷の結界を破壊してしまったようだ。

 屋敷の従者達が右往左往している。


 やばい。やってしまった……


 僕は目の前の光景を見て、自らの力に戦慄するのだった。


「やばい……母上にめっちゃ怒られる……」

「えっと……どんまいです」

「ごめんなさい、お父さま、お母さま……」


 まさか、こんな惨事になるとは……

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