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おばさん冒険者、職場復帰する  作者: 神田柊子
第二話 おばさん冒険者、特命依頼を受ける

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8(第二話完結)

「あの隠し部屋の薬草畑は、自然のものだったらしい」

「えっ、そうなの?」

 アリスは驚いて、手に取っていたカップをテーブルに戻した。

 特命依頼から帰ってしばらく経ったころ、アリスは冒険者ギルドの応接室で、ドムから話を聞いていた。

「あんなに茂っていたのに?」

「ダンジョンの隠し部屋に特定の植物が群生しているのは、よくあるだろ?」

「あー、まあ、そうね」

 アリスはうなずく。

(リーナが誘拐されたときも、爆裂草を隠し部屋から摘んで武器にしたって言ってたし)

「今回は、薬物の原料が群生しているダンジョンを、そうとは知らずにたまたま犯罪組織が拠点にしてたってわけだな」

「そうなのね……」

「あれを犯人が見つけてたら、あそこを手放すことはなかっただろうよ」

「それもそうよね。犯人たちに発見されなくて幸いだったってことかしら?」

「だな」

 ドムは言葉を切って、眉間に皺を寄せる。

「あの闇騎士だがな。公開する情報は制限することになった」

「制限って?」

「魔物は餌が合わないと異常行動を取ることがある、ってのが公表する情報だ。違法薬物が魔物に影響を与える、ってのは隠すことになった。犯罪組織に伝わって悪用されちゃ困るってぇわけだ」

 ソシレ伯爵や西の領主たちと、冒険者ギルドの本部の幹部が決めたらしい。

「リーナや『籠目』にも伝えたが、アリスも口外しないように気をつけてくれや」

「わかったわ」

 アリスは了承して、お茶を飲む。

 難しい話は終わりなのか、ドムもお茶を手に取った。

「『籠目』といやぁ、正式に採取専門になったぞ」

「そう。良かったわ」

 身体に不安がある中での討伐は危険だ。

 採取のときにも魔物に出会うことがないわけではないが、討伐が目的でないなら避けようがある。

「年には敵わんなぁ……」

 ため息をつくドムに、アリスは聞いてみる。

「あなたはどうなの?」

「俺かぁ? そうだなぁ。俺も、今また七字名の魔物を討伐しろって言われても無理だろうな」

 お前は? と聞き返されて、アリスは少し考える。

「接近戦は厳しくなってきたかしら? 防御壁で吹っ飛ばすのなら問題ないんだけど」

「防御壁だけでも十分戦力だろ」

 ドムは笑って、

「『籠目』に採取依頼を回せるようになるから、お前も好きに依頼を受けて構わんぞ」

「そうねぇ」

 好きな依頼、とアリスは考える。

「リーナを連れて行ける依頼がいいわね」

「お、そうか? 何ならパーティを組むか?」

「うーん。あたしがリーナとパーティを組んだらウィルがかわいそうだから、それはやめておくわ」

「ウィルと組むのか? あんなに逃げ回ってたのに、ついにか!?」

 ドムが身を乗り出すのも当然で、結婚前アリスはウィルとパーティを組んではいなかった。ソロのアリスにウィルが付きまとっていたのだ。

(それが、なんだかんだで結婚してエディが生まれて……。人生ってわからないものねぇ)

 初めて王城の交流会で会ったウィルは、無気力そうな王子だった。それから十年以上経って、こんな辺境まで追いかけてくるとは思ってもみなかった。

 アリスが昔を懐かしんでいたところに、ドアが叩かれた。

 ドムが返事をすると、顔を出したのはリーナだった。

「あのぅ、アリスおばさんに指名依頼が来たんですけど……」

「指名依頼? 何の?」

「護衛です」

 それからリーナは言いにくそうに付け加える。

「えっとですね、依頼主が……、なんと! この間の捜査員のテリーさんなんです!」

「嫌よ!」

「『リリンの森』の植物は今まで採取依頼を出してたけど、護衛依頼を出せば自分で取りに行けるって思ったみたいで……」

「却下!」

 アリスが顔を背けると、リーナは困り顔で、

「気持ちはわかりますけどー」

「だから、却下よ!」

 ドムが「またおかしな奴に気に入られたみたいだな」と大笑いしたから、アリスは柔らか防御壁をぶつけてやった。

第二話終わり

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