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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第一章 神祇官へ
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第八話

ある日、いつものように訓練の後、神のいやいけに入っているとあおい名無ななし様が訪れた。あおい名無ななし様は沢山の血を流していて、今にも倒れそうだ。


あおい名無ななし様! 大丈夫ですか!?」


私が心配で手を差し伸べた時、彼は力が抜けたように前に倒れた。私はそのままあおい名無ななし様を抱き留める形になった。


宵闇よいやみ、ごめん。ちょっと今回はしくじったんだ」

「……無理をなさらないでくださいね」


あおい名無ななし様は自分で立とうとしたので私はそのまま支える体勢になり、一緒に池の中に入った。あおい名無ななし様は顔色も悪く、短い息をしていて手を離せばそのまま溺れてしまいそうなほど弱っている。


池の中で支えていると、無数の光の玉があおい名無ななし様を包むように浮き上がってきた。

しばらくするとあおい名無ななし様の息が穏やかになる。


……もう支えなくても大丈夫そうだ。


「今回は本当に危なかったよ。いつもかくしやしろ封印ふういんを解いて悪しきものの消滅させているんだけど、悪しきものが思ったより強くてね。一人で消滅させようとして失敗したんだ」

「本来は数人で消滅を行うものなのですか?」

「そうだね。本来は数人で組になり対処する。神祇官じんぎかんも立ち会うからそのうち宵闇よいやみかくしやしろにくることになると思うよ」


あおい様は柔らかな笑顔でそう話をする。


宵闇よいやみ、ありがとう。もう大丈夫だ」


私はそっと手を引き、ゆっくりと彼から離れる。


「……久しぶりだね。元気だった?」


彼はしばらくじっとしていたけれど、ゆっくりと自分の力で座った。


「はい」

「どうしたんだい? 何か困りごとでもできたかな」


あおい名無ななし様が微笑みながら聞いてきた。


「毎日訓練を欠かさずにしているんですが、中々上手くいかなくて……」

「焦ることはないよ。君が努力しているのを他の人伝から聞こえてくる。宵闇よいやみは素晴らしい神祇官じんぎかんになると思っている」

「は、…ぃ…」


優しく話しかけてくれるあおい様に私は嬉しさで褒められて恥ずかしくなり、うまく言葉を返せないのを見た彼は笑顔になった。


「あっ、瘴気しょうき当たりも治ったし、私は戻りますねっ。わ、私、頑張ります」

宵闇よいやみ、頑張ってね」

「はい」


私は勢いよく頭を下げてから神のいやいけを後にした。あおい名無ななし様には変なやつだと思われたかもしれない。


でも、凄く嬉しかった。

今まで能無しと笑われて誰からも評価されることがなかったから。


きっとあおい名無ななし様にとっては何のこともない言葉だけれど、褒められ慣れていない私にとっては乾いた砂に水を掛けたように染み込んでいく。嬉しくて、嬉しくて小躍おどりしてしまいそうになる。もっと頑張ろうと思えた。




そうして日々努力をしていたある日のこと。


宵闇よいやみ、今日は鯉柄こいがらの山にあるほこらで濃い瘴気しょうきが発生したようなんだ。瘴気しょうきを散らしにいってきて下さい」

「分かりました」


私はいつものように衛門府えもんふ瘴気しょうきの出ている場所を聞いてから準備をし、人間界へと向かった。ほこらの近くへ転移してきたが、既に瘴気しょうきが辺り一面に広がっている。瘴気しょうきの濃さを考えると私が今まで対処してきたものよりも随分と濃い。


不安を覚えた私は衛門府えもんふ言霊ことだまを飛ばした。


「鯉柄の山へ来たんですが、瘴気しょうきが多くて一人では対処しきれないかもしれません。救援をお願いします」

「分かった。すぐに人を送る。それまでは一人で対応可能か?」

「なんとかやってみます」


一人でできるだろうか?


不安に思いながらほこらへ一歩一歩近づいていく。


ほこらの前に到着すると、瘴気しょうきほこらが見えなくなっている。そしてその中心部分には悪しきものが取りついていた。


「……ケェ、クェ……」


何かの音を出しながら悪しきものは瘴気しょうきを産んでいる。まだ一人で悪しきものと対峙はしたことがない。出来るだろうか?


幸いなことに悪しきものはまだ私に気づいていない。


そっと薙刀なぎなたを取り出し、悪しきものに斬りかかったのだが、瘴気しょうきに阻まれて薙刀なぎなたは音を立てて弾かれてしまった。悪しきものは瘴気しょうきを圧縮し、固く鎧のようにまとっていたようだ。


私の攻撃で気がつきまとっている瘴気しょうきの形を変えて攻撃をしかけてきた。私は攻撃をかわしながら薙刀なぎなたで応戦する。今まで瘴気しょうきだけで訓練をしていたけれど、悪しきものがいると瘴気しょうきはこんなに変わるものなんだと知った。


何度も薙刀なぎなたで斬りつけていくけれど、今の私の力量では歯が立たない。

多少持っている薙刀なぎなたを伝い瘴気しょうきを取り込んではいるけれど、あまり効果はないようだ。手をかざ瘴気しょうきを取り込み、相手を弱らせるのが一番早いのだが、攻撃が早く薙刀なぎなたの手を止めることができない。


私達天上人てんじょうじんが持っている武器は生まれた時から所持しているもので人によって形や効果が大きく異なっている。主に衛門府えもんふで働く武官達が持つ武器は斬ることはもちろん瘴気しょうきを払う効果があるのだが、私の薙刀なぎなた瘴気しょうきを払う力はない。


薙刀なぎなたを通じて瘴気しょうきを吸うことは訓練で少しずつできるようになっているけれど、攻撃をかわしながら吸うことは今の私にはまだ難しい。


悪しきものの攻撃は薙刀なぎなたの刀身を掴もうとするように粘度のある瘴気しょうきを放ってくる。私は瘴気しょうきを避けたり、切ったりしているが、瘴気しょうき薙刀なぎなたの刀身に触れる度にまとわりつき、動きを鈍くさせている。


どうすれば悪しきものを倒せるだろうかと考えている時に後ろから声が掛かった。


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