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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

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第六十二話

「おい、うずら。ここの瘴気しょうきは酷い。すぐに瘴気しょうきを散らそう。このほこらが原因か?」

「そうだな。銅鏡が欠けている。この分じゃすぐに悪しきものがいてしまうだろう」


「とりあえず瘴気しょうきをある程度散らしたら神祇官じんぎかんに相談しよう」

「ああ。始めるか」


うずら? 確か冬の国の衛門府えもんふに所属している武官だったはずだ。春隣はるとなり様とよく組んで悪しきものを封印ふういんしていたんじゃなかったかな。


うずらさんと別の武官は瘴気しょうきを払い始めた。しばらくすると、うずらさんは足元に光る物を見つけ立ち止まる。


「……これは」


一言そう呟き、光る欠片を拾い上げた。


うずら、どうしたんだ?」

「いや、なんでもない」


うずらさんは欠片をそのまま懐へ仕舞った。


そうして彼らは辺りの瘴気しょうきを散らした後、冬の国へと戻っていった。


そこからまた景色がガラリと変わる。ここは冬の国だ。どうやらうずらさんの動きを見ているのかもしれない。


果月かげつ様、先ほど東宿の西の村に瘴気しょうきが出ていると知らせを受け、瘴気しょうきの出ている場所は人間達が放置して風化が始まっているほこらからでした。


ほこらにはひび割れた銅鏡が飾られており、何者かを封印ふういんしているようで我々では対応が出来ず、周辺の瘴気しょうきのみ散らして戻ってきました。これから神祇官じんぎかんへ報告に行ってまいります」

素雪そせつ、割れた銅鏡から悪しきものは出ようとしていたの?」

「いえ、瘴気しょうきは出していましたが、中から出てくる様子はありませんでした」


「わかりました。神祇官じんぎかんの者が出るか、かくしの社から名無ななし様が出ると思うのでこちらも再度武官を出せるように準備しておきます。素雪は報告後、しばらく休みなさい。うずらもですよ」

「承知いたしました」


果月かげつ様は衛門府えもんふの長のようだ。果月かげつ様の見た目は髪が長く優しい雰囲気をしている。


うずらさんは仕事を終え、自宅へと戻っていく。長屋の一番端に住んでいるようだ。扉を開けると簡素な作りになっている。宵闇よいやみの家ともさほど変わらないようだ。


彼は土間の横に置いてある差し樽から酒を湯呑に注いで布団を敷き、横になった。


一人口を開くこともなく、手酌で飲んでいる。思い出したように懐から欠片を取り出し、眺めている。


「持ち帰ってしまったな。これは銅鏡の欠片だろうか? すっかり忘れていた。瘴気しょうきも出ていないようだし、問題なかろう」


そう言葉を溢しているうちに眠気が襲ってきたようで彼はそのまま深い眠りに入った。


うずらさんが寝ている間に銅鏡の欠片から僅かな瘴気しょうきが彼の中に入っていった。


その途端、彼はうめき声を上げている。悪夢をみているのかもしれない。目を覚ました彼は周りを見渡した。


「さっきのはなんだ? 血まみれの人間の女の恨みが神にまとわりついていた。……嫌な夢だったな」


彼はそう一言呟きまた眠りについた。


その日から彼は寝ると悪夢を見るようになっていった。少しずつ彼の心を浸食しんしょくしているのだと思う。


それは女の呪いなのか邪神に堕ちた神の力なのだろうか。


うずら、最近顔色が悪いぞ? どうしたんだ?」

「ああ、春隣はるとなり。最近、毎日夢に人間の女が出てくるんだ。恨みを抱えて俺を取り込もうとする夢なんだ。だけど、後ろにいる取り込まれた誰かが一生懸命俺からその女を引き離そうとしているんだが、それが誰かも分からない」


「大丈夫か? 瘴気しょうきに当てられたんじゃないか?」「いや、大丈夫だと思うが……」

「続くようならいやいけに入った方がいい」


「そうだな。最近悪しきものも多いし疲れているのは確かだ。無理はしないようにする」


そうしている間にうずらさんは少しずつ浸食しんしょくされてある日、悪しきものが出て討伐しようと人間界に降りた時に変化が起きた。


「おい、うずら! お前……」

「クッ。春隣はるとなり、俺から、離れろ」


うずらさんはそういうと、春隣はるとなり様と距離を離すように力一杯押した。


うずらっ!すぐに助けてやるからな」


春隣はるとなり様は焦ったように話をしながらどうにかしようと神祇官じんぎかんの長である椿様に言のことのはを飛ばしている。


春隣はるとなり、俺は、多分もう、駄目だ。名無ななし様に頼み、このまま浄化を」

「駄目だ。きっと何か方法が残されているはずだ」

春隣はるとなり、俺は悔いはない。夢の中の女が神を堕とし絡め取った。彼は俺を助けようとしているが、力が強すぎただけなんだ」


「何を言っているんだ?」

春隣はるとなり、俺は誰も恨んでいない。早く、浄化を。自我が残っている間に」

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