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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第一章 神祇官へ
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第六話

序章と3話目を修正しました!

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

私は呟きながら神のいやいけから少し離れた場所に降り立った。


神のいやいけは神聖な場所であるため、普段は滅多に立ち入れないし、皆、立ち入ろうともしない。


だが、今日は池に浸かっている人影が見える。

誰だろう?


近くまで行ってみると、池に入っていたのは帝の一族と呼ばれているあおい名無ななし様だった。


私たち天上人てんじょうじんはこの神のいやいけから生まれるのだが、各々の能力により各部署に振り分けられ、仕事を担う。


だが帝の一族と呼ばれる者達だけは少し違っている。この池で生まれるのは同じなのだけれど、大地や風、水、森、人間の声に耳を傾ける能力を持っている者だ。


彼らはかくしやしろと呼ばれる所に住み、その数は数人~十数人いるようだ。


その中でも一番能力が高い者だけが帝という名を名乗ることが出来る。帝は春の国では蒼帝そうていと呼ばれ、夏の国は炎帝えんてい、秋の国は白帝はくてい、冬の国は玄帝げんていと呼ばれている。


彼らはかくしやしろ衛門府えもんふから送られてきた悪しきものを消滅させたり、風読かぜよみを修行したりと日々切磋琢磨せっさたくましているという話だ。


私たち天上人てんじょうじんにとっての頂点であり、憧れの存在である帝様は私たちよりもずっと、ずっと過酷な生活をしている。


因みにあおい名無ななし様と呼ばれているのは髪の毛の色に由来する。


白帝はくていの名を名乗れない名無ななし様がこうしてかくしやしろから出てきた時に呼び名がないと不便なためだ。


私は緊張しながら池に入るために名無ななし様に声を掛けた。


あおい名無ななし様、失礼します。瘴気しょうき当たりを起こし、ここに来ました」

「ああ、宵闇よいやみだっけ。気にせず入って」


あおい名無ななし様は頬に切られたような傷や肩口に深い傷が付いていてどうやら体中怪我をしており、沢山の光の玉が傷口を癒すように浮かび上がっている。


宵闇よいやみ、君は能力が分かったの?」

「先日、分かりました。私の能力は瘴気しょうきや悪しきものを体内に取り込み、悪しきものを封印ふういんできるようなのです。先日、白帝はくてい様と番紅花ばんこうか様に連れて行ってもらった人間界の神事しんじで判明したのです」


「自身に瘴気しょうきを取り込むことが出来るなんて凄いな」

「まだまだ練習も始めたばかりで失敗ばかりなんです。上手く操ることが出来なくて封印ふういんの玉も思うように作れないのです」


「誰も持っていない能力だしそれはとても凄いことだよ。今は上手くいかなくても努力していれば必ず報われるさ。僕も努力はしているけれど、まだまだ今代の白帝はくてい様に追いつけそうにないな」


あおい名無ななし様は努力家で今の白帝はくてい様を超えるのではないかとお噂を耳にしております」

「そう言ってもらえると嬉しい。僕はまだまだ弱くていつも怪我をしてしまう。もっと努力しないとね」


あおい様は頬笑ほほえみながら話をしている。


これだけ怪我をしていて自分はまだまだ弱いというあおい様はとても努力家なのだろう。私もあおい様のようにもっと努力しないといけない。


「私もあおい名無ななし様のように頑張ります」


私はあおい名無ななし様と軽い雑談をしながら回復するまで神のいやいけに浸かった。


先ほどまで身体中が悲鳴を上げるような痛みを訴えていたのに小さな光の玉がふわりと浮き上がると共に痛みは軽くなり、治まっていく。


身体に残った瘴気しょうきも同時に浄化されているようで心も軽くなってくる。


「始めて神のいやいけを使わせていただいたのですが、凄いですね。もう痛くない。それに身体中から力が漲る感じがします」

「この池は本当に凄いね。神の力を感じるよ」


私はものの十数分程度で光の玉は見えなくなり、治ったようだ。あおい名無ななし様の身体からはまだいくつもの光の玉が浮かび上がっている。


あおい名無ななし様は笑っているけれど、どれだけ重傷だったのだろうかと心配になる。


「……回復しました。では私はこれでやしろへ戻ります。あおい名無ななし様、無理はなさらないでくださいね」

「ああ。宵闇よいやみも頑張り過ぎないようにね」


私は池から上がると水は衣からさらりと落ちていき、来た時と同じように乾いた状態になる。そのまま私は飛び、やしろに戻っていった。

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