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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

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第五十九話

火影ほかげ様達と合流し、そのまま冬の国に向かって飛び始める。四季殿しきでんから冬の国はすぐだ。


白帝はくてい様、冬の国の結界が弱まっているとはいえ、結界が覆っています。我々が通るほどの隙間を作りますか?」

火影ほかげ、大丈夫だよ。私が結界に干渉して少しの間隙間を作るから問題ない」


白帝はくてい様はたしかにアキコク様の結界に力を流して支えていた。


私は物理的に割ってはいったが 、名無ななし様や白帝はくてい様達は結界に干渉する術を持っているのだろう。


そう話をしているうちに冬の国の前に到着した。


確かに秋の国や春の国の結界に比べて薄く、今にも消えてしまいそうだ。そして結界の中から見えるおびただしい瘴気しょうきがここからでも感じる。


目に見える範囲には悪しきものはまだいていないようだが一体中はどうなっているのだろうか。


白帝はくてい様が薄い結界に触れ、静かに詠い始めた。言葉というよりは祈りのような音はじわりと結界に溶け、人が通れるほどの穴が開いた。


「私から入ろう」


火影ほかげ様が先に入り、次にもう一人の武官が入り、その後を私も入る。そうして白帝はくてい様が入った後、最後にまた武官が入り結界はまた元に戻るように修復されていく。


その様子を確認した後、私達は前を向き、本殿ほんでんに向かって飛び始めた。


冬の国の人達はみんな外へ出て瘴気しょうきを散らそうと必死に対処しているようだ。総出で対処しているから悪しきものがきだしていない、もしくはき始めた時に対処ができているのだろう。最悪の事態を想定していたが、思っていたより状況は良いようだ。


建物に近づくにつれて瘴気しょうきが濃くなっている。きっと本殿ほんでん春隣はるとなり様がいるのだろう。


私達は飛ぶのを止めて建物の敷地へ歩いて入っていく。


「貴方は秋の国の白帝はくてい様ではありませんかっ」


名無ななし様の一人が浄化しながら私達に気づいて声を上げた。


玄帝げんていを助けに来ました。玄帝げんていはどこですか?」

玄帝げんてい様は春隣はるとなり様と一緒に本殿ほんでんにいると思われます。我々も本殿ほんでんに向かおうとしているのですが、何分この濃い瘴気しょうきのためなかなか近づくことが出来ずにいるのです」


名無ななし様達が神祇官じんぎかん、武官達と協力し、浄化と瘴気しょうき封印ふういんを行っているが瘴気しょうきは衰えを知らず攻防が続いている様子だった。


私も無理に歩みを進めても瘴気しょうきに囲まれるだけで不利な状況になってしまうだろう。だが、瘴気しょうきの大元である春隣はるとなり様をなんとかしなければ名無ななし様達も疲弊し瘴気しょうきに負けてしまう。


そう思っていると、シャランと澄んだ音が鳴り振り返ると白帝はくてい様が錫杖しゃくじょうを取り出していた。


「道を作ります。皆さんは少し離れて下さい」

白帝はくてい様は長い錫杖しゃくじょうを鳴らし地面を突いた後、手をかざして一閃いっせんを放つ。


すると瘴気しょうき一閃いっせんを放った場所は浄化され、一筋の道が出来ていた。


冬の国の名無ななし様達が何人も掛かって少しずつ本殿ほんでんに向かっていたのだ。


どれだけ白帝はくてい様の力が凄いのかということが分かる。


「では私達は先に急ぎましょう」

「はい」


火影ほかげ様を先頭に私達は本殿ほんでんに向かった。誰も口を開くことはない。玉砂利を踏む音だけがし、否応なく緊張が張り詰めていく。


瘴気しょうきが濃いですね」

「ええ、やはり春隣はるとなりはここにいるのでしょう」


なぜ本殿ほんでんに?


もしかして神への報告時に神界しんかいと繋がり、そこから神界しんかいに入ろうということなのだろうか。


春隣はるとなり様がそう望まれているというより、春隣はるとなり様を利用して悪しきものが神界しんかいに行こうとしているようにも思えてくる。


神界しんかいに行ったとしても消されるだけなのに。何か目的があるのだろうか。


本殿ほんでんに進むと瘴気しょうきが多くき出ている。白帝はくてい様が浄化した場所も浸食しんしょくをはじめている。


本殿ほんでんの中は瘴気しょうきで見づらいが銅鏡の前に血を流し瘴気しょうきに縫い留められている状態の玄帝げんてい様の姿と身体から瘴気しょうきを出している春隣はるとなり様の姿を確認した。



「気を付けろ」


火影ほかげ様が声をあげた。


宵闇よいやみ瘴気しょうきを」

「はい」


武官達は武器を構え、いつでも斬りかかれるような態勢になっている。


私は火影ほかげ様の横に立ち、玄帝げんてい様に向かって手をかざし、瘴気しょうきを吸い始める。


白帝はくてい様は長い錫杖しゃくじょう手錫杖しゃくじょう《しゃくじょう》に形を変え、詠い始めている。


春隣はるとなり様は私達の動きを確認した後、ゆっくりと錫杖しゃくじょうを鳴らし瘴気しょうきが勢いよく吹き出し始めた。


……あと少し。


コロリ、またコロリと瘴気しょうき封印ふういんの玉に変化し、玄帝げんてい様は床に倒れ込んだ。

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