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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

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第五十八話

「そうだ。白帝はくてい様、これを首に掛けて下さい」


神の寝床ねどこでもらった勾玉を白帝はくてい様に差し出した。


宵闇よいやみ、これは?」

「これはタギリヒメノミコト様から白帝はくてい様に渡すように言われていました。私は赤い勾玉です」


首に掛けた赤い勾玉を白帝はくてい様に見せる。


「赤い勾玉は神々から直接力を受け取る物で白帝はくてい様の持つ翠の勾玉は念を力に変える物のようです。私の能力は想い(念)を力にし、他の人に与えることが出来るもののようです。


アキコク様の訓練やアメノワカヒコ様から頂いた念玉ねんだまは私自身が能力を理解し念を力に変換するための補助的な物らしいのです。


本来、補助具は必要ないようですが、私がまだ未熟なため念玉ねんだまを通さないと力の受け渡しが出来ないのです。この勾玉は念玉ねんだまの変わりです」


「そうか。凄い能力だね。他の誰も持っていない素晴らしい能力だ。神が宵闇よいやみ神界しんかいに呼ばれるわけだ」

「私、もっと、もっと、頑張ります」

「無理しないんだよ」


二人でそう話をしていると曼殊沙華まんじゅしゃげ様が三人の武官を連れてきた。

そのうちの一人は火影ほかげ様だ。


白帝はくてい様、お待たせしました。彼ら三人は腕が立ちます。どうぞ冬の国へお連れ下さい」

曼殊沙華まんじゅしゃげ、ありがとう。では乞ふ四季殿しきでんへ向かった後、冬の国に向かう」


「畏まりました。どうかご無事で」


私達は曼殊沙華まんじゅしゃげ様の見送りの下、四季殿しきでんに向かって羽根を広げた。


今、四季殿しきでんはどうなっているのだろうか。不安に思いながら近くまで飛んでいく。各国の衛門府えもんふの人達が目に飛び込んできた。


どうやらしっかりと周りの悪しきものたちは討伐されたようだ。だが、冬の国の人達の姿が見えない。


白帝はくてい様、冬の国の人達が見えませんね」

「そうだね。事態は悪そうだ。すぐに四季殿しきでんの状態を確認したら冬の国に向かおう」

白帝はくてい様! 宵闇よいやみ様!」


各国の人達が頭を下げ、礼を執っている。

その先には壊れた四季殿しきでんが目に飛び込んでくる。白帝はくてい様が命を懸けて悪しきものを浄化した場所だ。


「君たちが無事でよかった。火影ほかげ、橋のたもとで待機していて」

「ハッ」

宵闇よいやみ、いこうか」


私達はゆっくりと橋を渡り始める。すると、あの時のように花弁が空から舞い始めた。


かつての優しい香りは薄れ、どこか鉄のような匂いが混じっている。


涙が出てきた。

何気ない日常だったのに。

いつもこの景色が好きで通る度に白帝はくてい様の姿を思い出す。


浮島うきしまに入り、緊張しながら四季殿しきでんの入口に入った。四季殿しきでんの壁や天井は破壊され、空が見えており、至る所に焦げた跡が残っている。


そして心御柱のあったところに小さな悪しきものの姿があった。その姿を見た瞬間にあおい様は錫杖しゃくじょうを鳴らし、床を突く。


「消滅せよ」


悪しきものを囲うように陣が現れ光と共に浮き上がり、徐々に消えていく。


あっけない終わりだった。


四季殿しきでんよりも大きな人型をとっていた悪しきものはとても小さなものになっていた。


群青ぐんじょうの力で悪しきものはここまで小さくなっていたからすぐに消滅させることができた」

「……そう、ですね」


私は悪しきものが居なくなった場所を見つめた。壊れた念玉ねんだまが落ちている。


「うっ、うっ。白帝はくてい様っ! 私が、私が弱いばかりに……。ごめんなさい」


私は嗚咽を上げて泣いた。


もう、二度とこんな思いはしたくない。

私は、私の能力がもっと早くに分かっていれば。

私の力がもっと白帝はくてい様に届いていれば。


何度も繰り返し後悔が押し寄せてくる。

心のどこかではやはり逃げたかった実感したくなかった。


「……宵闇よいやみ

あおい様っ」

白帝はくてい様は最後に宵闇よいやみが来てくれて嬉しかったはずだ」

「でも、でもっ……」


「我々の力だけではここまでの威力は出ない。宵闇よいやみがいたから、宵闇よいやみの力のおかげで群青ぐんじょうは力を最大限に引き出すことができ、悪しきものの動きを止められた。


君がいたから。さあ、僕達はまだしなければならないことが残っている。悲しいけれど、これ以上悲しむ者を出さないために冬の国に向かわなければならない」

「……そう、ですね。春隣はるとなり様が堕ちようとしている。食い止めないと」

「そうだね」


私は涙を拭いて立ち上がった。


白帝はくてい様、またここに必ず戻ってきますね。


また平和な天上界てんじょうかいに戻るように頑張ってくるので見ていて下さい。私は心に誓う。


あおい様、私、もう泣きません。白帝はくてい様の死を無駄にしないためにも頑張ります」

「私も宵闇よいやみに負けないように頑張るよ」


私は出そうになる涙を堪え、白帝はくてい様と共に橋のたもとまで向かう。


白帝はくてい様、四季殿しきでんの方はどうでしたか?」

「ああ、もう大丈夫だよ。悪しきものは消滅した。ここはもう大丈夫だ。このまま冬の国に向かうけれど、準備は大丈夫かな?」

「準備は出来ております」

「では行こうか」

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