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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

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第五十七話

宵闇よいやみ様! おかえりなさい」

秋の国に戻ると、警備を行っていた武官達が声を掛けてきた。

「私がいない間、何か変わったことはありませんでしたか?」


曼殊沙華まんじゅしゃげ様や番紅花ばんこうか様は忙しく動いているようでしたが、我々はこのまま警備を行うことを命ぜられております」

「そうですか」


やはり冬の国に何か動きがあったのかもしれない。

私は急いで神祇官じんぎかんに戻った。


宵闇よいやみ様、おかえりなさい」


草の実さんの声に番紅花ばんこうか様が立ち上がり、口を開いた。


宵闇よいやみ、待っていた。先ほど冬の国から連絡があった。すぐに白帝はくていの元へ」

「分かりました」


番紅花ばんこうか様と共に白帝はくてい様のいる社とは違う大きな部屋に入った。どうやら他の省などの長も集まり緊急会議を開いているようだ。


宵闇よいやみ殿が神の寝床ねどこから戻られました」


番紅花ばんこうか様はそう言うと、部屋に入らずに神祇官じんぎかんへと戻っていく。


宵闇よいやみ、神の寝床ねどこはどうだったかな?」


白帝はくてい様は私を見るなり微笑んで手招きする。どうやら私は白帝はくてい様の斜め隣のようだ。


頭を下げながら後ろを歩いて通り、席に座る。


宵闇よいやみ、先ほど神の寝床ねどこから急ぎ戻りました。今、どのような状況なのでしょうか?」

「すこぶる悪いわねぇ。冬の国は悪しきものが溢れ始めたって聞いたわ。この分じゃ折角四季殿しきでん周辺の悪しきものを退治したのにまたきだすんじゃないかしら」


宵闇よいやみ殿、神の寝床ねどこではどんな話があったのですかな?」


左弁官さべんかん早稲わせ様が聞いてきた。

「神の寝床ねどこと呼ばれる場所は神界しんかいの入口でした。そこで私は神界しんかいに呼ばれ、私のすべきことを聞いてきました。


現在冬の国の玄帝げんていは動くことができないと神様は仰いました。そして『四季殿しきでんに悪しきものを迎え入れたのは春隣はるとなりである』と」


私が名前を出すと、ざわりとその場に居た者達に動揺が走った。


「静まれ、まず宵闇よいやみ殿の話を最後まで聞くぞ」


曼殊沙華まんじゅしゃげ様がそう口を開くと、一同口を閉じ私に視線が向いた。


「原因は神界しんかいの方にあると仰っていましたが、春隣はるとなり様はどうやら悪しきものに堕ちようとしている。


玄帝げんていは、もう立ち上がることさえ叶わない、と。止められるのは白帝はくてい様と私だけのようです。


神界しんかいから神が降りたくても天上界てんじょうかいが崩壊してしまう。そのため私の能力を使い、神の力を借り受けて白帝はくてい様に渡し、悪しきものを消滅させるように仰せ使いました」


「だが、各国の事は基本的にその国が対処すべきではないのか?」

「先ほど宵闇よいやみも言っていたでしょう?玄帝げんていは今動くことができないって。なら他国が動くしかないのよ」


「だが、こちらも白帝はくてい様が決まったばかりだ。白帝はくてい様に何かあれば秋の国が困ることになる」

「他国と協力して宵闇よいやみ様が神の力を借り受けたものをみなに渡せないのですか?」


「それは難しいだろうね。僕が天津あまつほこらで修行してようやくその力を受け入れることが出来る状態になったんだ。他の帝はもちろん衛門府えもんふの者でも神の力を受ければ消滅しかねない」


白帝はくてい様の言葉にみんなの表情は暗くなった。


「僕と宵闇よいやみで悪しきものを消滅させるしかないだろう。僕らに何かあっても山吹やまぶきがいるから大丈夫だ。神祇官じんぎかん番紅花ばんこうかもいるし、私達が行っても問題ない。むしろ私達しか力を行使することができないのだから私達が行くしかない」


「先ほど冬の国から連絡が入ったといっていましたが、各国の状況はどのようになっているのですか?」


「冬の国の雪中花から連絡が来た。春隣はるとなり玄帝げんていの姿が見えない。そして結界は段々と弱まっている状態ということだ。


現在は雪中花の指示でいている悪しきものを討伐しているようだ。だが、悪しきものが増え、結界が消えてしまえば人間界に悪しきものが落ちていくだろう。


春の国と夏の国は四季殿しきでんから入ってきた悪しきものを退治するのに苦労はしていたようだが、討伐し終えて現在は悪しきものが入り込まないように厳戒態勢を取っている」


宵闇よいやみ殿の話を聞く限りではまだ春隣はるとなり殿は悪しきものに堕ちきってはいないのだな?そして春隣はるとなり殿を悪しきものに落とそうとしている神がいる」


「そうです。事態は一刻を争う。神祇官じんぎかんの長が悪しきものになればそれこそ四季殿しきでんを通して人間界に瘴気しょうきを下ろし悪しきもので人間達が生活できなくなってしまう」


宵闇よいやみ様の準備はもう出来ているのかしら?」

「私はいつでも行けます」

「僕もすぐに発てる」

「二人に願うしかないのが心苦しいな」

「そうねぇ。その代わり秋の国はしっかりと守るからねぇ」


宵闇よいやみ、では僕たちは急いで向かうとしよう」

「そうですね」


「もし、僕に何かあれば山吹やまぶきが次の白帝はくていになるが、今はアキコク様の元に行って動けないだろう。白帝はくていの社には臙脂えんじを呼んでいる。何かあれば臙脂えんじと協力してくれ」


「かしこまりました」

衛門府えもんふから武官を連れてこよう」

「私達は他国との情報を共有しなければいけないわねぇ。あとのことは任せてちょうだい」

竜田姫たつたひめ様、よろしくお願いします」


白帝はくてい様と私は立ち上がり、部屋を出る。曼殊沙華まんじゅしゃげ様も立ち上がると衛門府えもんふへと向かった。


私と白帝はくてい様は本殿ほんでんの前までやってきた。衛門府えもんふからの武官を待つためだ。

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