表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/63

第五十二話

社には数人の名無ななし様とあおい様、山吹やまぶき様がその場に居た。名無ななし様が結界の維持を補助し、山吹やまぶき様とあおい様が話をしているようだった。


あおい様。宵闇よいやみ、ただいま戻りました」

宵闇よいやみ、戻ってこれて良かった」

「……はい。私は白帝はくてい様の足手まといになるばかりで自分の弱さを痛感しました。白帝はくてい様を助けることができず申し訳ありませんでした」


宵闇よいやみ、後悔することはない。白帝はくてい様は宵闇よいやみが来たことで最後に力を振るうことが出来た。むしろそのおかげで現在は四季殿しきでんに出た悪しきものの動きを止めることができている」

「悪しきものの動きを止めている、のですか?」


山吹やまぶき様の言葉に疑問が浮かんだ。白帝はくてい様は悪しきものを封印ふういんしたのではないの?


封印ふういんではなく動きを止めたのですか?」

「ああ。封印ふういんが失敗すれば悪しきものはそのまま動き始めるが、白帝はくてい様が使ったのは消滅させるものだろう。あれは消滅させられなくても相応のダメージは悪しきものに与えることが出来る」


「きっと宵闇よいやみの作った念玉ねんだまのおかげで白帝はくていは全力を出し切れたんだ」

「私の念玉ねんだま、ですか」

「そうだね。これも宵闇よいやみの能力だ。我々は作ることができない。念玉ねんだまは我々の能力を向上させ、力を底上げしてくれている」


私だけが持つ能力?


体内で封印ふういんする能力だけだと思っていた。神様は私の能力を理解し、念玉ねんだまをくださったのだろうか。


「今は白帝はくてい様のおかげで悪しきものは動けずにいるのですか?」

瘴気しょうきが消えていないということはまだそこに悪しきものが存在しているのだろう。実際見てみなければなんとも言えないが、力の大部分が消滅し、動ける状態ではないだろうな」


「動けない間に行って消滅させ、封印ふういんすれば四季殿しきでんは悪しきものから解放されるのですよね!? すぐに動かないと」


私がそう言うと山吹やまぶき様が止めに入った。


宵闇よいやみ、まだだ。あおいはまだ白帝はくていではないから四季殿しきでんに入ることを許されていない。


それに宵闇よいやみも怪我をしているだろう? 宵闇よいやみの作る念玉ねんだまが我々には必要だ。群青ぐんじょうが相手を瀕死まで追い込んだんだ。


力を取り戻すにはそれ相応の時間や瘴気しょうきが必要になる。群青ぐんじょうが最後の力を使うほどの瘴気しょうきを集めるには数年程度では足りないだろう。落ち着いて今、我々が出来ることをしっかりとやるんだ」

「はい」


山吹やまぶき様の言葉に私は急ぎたい気持ちで周りが見えていなかったことを自覚する。白帝はくてい様は白帝はくていになる前は群青ぐんじょうという名だった。


山吹やまぶき様はその頃から白帝はくてい様と仲が良かったと聞いている。悔しいし、やるせない気持ちは私以上だろう。


それでも周りをよく見て優先順位をしっかりと付けている。私が感情に流されやすいのは欠点だ。もっとよく考えないといけない。


宵闇よいやみ、焦る気持ちは我々も同じだから。宵闇よいやみだけじゃない。僕だって白帝はくてい様の無念を晴らしたい。


八年前のあの出来事が再び起こることがないように僕も山吹やまぶきほこらに入った。けれど、事態は白帝はくてい様の死という最悪な状況を生んでしまっている。


白帝はくてい様のためにも僕たちは全力で悪しきものに挑まなければならない。それには宵闇よいやみ、君の力が必要だ。悪しきものを消滅させるために、今はやるべきことをやろう」

「はい!」


「我々はあおい白帝はくていになるために本殿ほんでんで準備をする。その間に宵闇よいやみいやいけに入り、回復を行うんだ。


その後、宵闇よいやみは神々への報告を行ってほしい。報告が終わったら本殿ほんでんの一室にみんなを集めて話をする」

「分かりました」


短い話だったけれど、漠然と急ぎたいという気持ちだったものが明確にしなければいけないことを理解し、私はいやいけに向かった。


池に向かう最中は厳戒の警備態勢で色々な人達とすれ違ったけれど、いやいけに入っている人はいないようだ。四季殿しきでんの周辺にいた悪しきもので怪我人が出ていないのだろう。


だけど、時間の問題かもしれない。


池に浸かるとすぐに光の玉がいくつも浮かび上がってきた。やはり自国のいやいけだと治りが早いのだと実感する。春


の国のいやいけで体内に残っている瘴気しょうきが取れたように思っていたけれど、まだまだ残っていた。


怖いのは体内に残った瘴気しょうきのせいで精神に影響が出てしまうことだと思う。


自分では全く気づかないけれど、こうして瘴気しょうきを取り除くとなぜあんなことを考えていたのだろうと感じてしまう。


もしかして闇に堕ちる時はこうして気づかない間に浸食しんしょくされて気付いたらすでに悪しきものになっていたということもあるのだろうか。悪しきものになっていることにも気づいていないのか。そうだとすればとても悲しいと思う。


ほわり、ほわりと浮かんでくる光の玉を感じながら裏切者を考える。


木札きふだを持つ誰か。

私ではない。

誰だろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ