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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

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第五十話

宵闇よいやみ、怪我はもう大丈夫ですか?」

蒼帝そうてい様、いやいけを使わせていただき感謝します。おかげで羽根を動かせるまでになりました」


「現在、ハルクニ様は春の国を結界で包んでいますが、全ての情報が遮断されて国の者が不安を抱えている。宵闇よいやみが大怪我をした理由はやはり悪しきものなのですか?」


「……そうです。白帝はくてい様はきっと風読かぜよみで悪しきものが四季殿しきでんに向かっているのが分かったのだと思います。人間界に私や衛門府えもんふの長を向かわせました。きっと、自身の命と引き換えに悪しきものを封じようとしていたのだと思います……」


あの時、白帝はくてい様は『何故戻ってきたのか』と言っていた。


自身の命を捨て、悪しきものを封印しようとしていたのだろう。そのために私を遠ざけようとしていたに違いない。


思い返したくなくない。

でもきっと、私が白帝はくてい様なら同じことをすると思う。


理解はしている、しているけれど、私だって悪しきものを倒すのに命は惜しまない。

今だって命を差し出す覚悟をしている。


荒れ狂う感情を胸の内に収めて蒼帝そうてい様に悪しきものが浮島うきしまに現れた時のことを言葉にする。


「私が白帝はくてい様の指示で人間界に現れた悪しきものを討伐した後、国に戻ったんです。そこで前任の番紅花ばんこうかが私の代わりを務めるべく四季殿しきでんに向かったと聞いて交代しようと乞ふ四季殿しきでんに向かいました。


けれど、転移門てんいもんが使えず、浮島うきしま周辺は既に濃い瘴気しょうきが漏れ出ていて橋の袂で番紅花ばんこうかが瀕死の状態で倒れていたんです。


番紅花ばんこうかを抱えて一旦自国へ戻り、すぐに四季殿しきでんに戻ったのですが、四季殿しきでんに入る前でも既に何体もの悪しきものがき始めていました。


必死で悪しきものを避けて橋を渡ったのですが、そこには四季殿しきでんを囲むようなほどの瘴気しょうきに包まれた大きな人型を取った悪しきものがいました。


なんとか四季殿しきでんに入ったのは良かったのですが、白帝はくてい様は血まみれで……。


私は必死に悪しきものの瘴気しょうきを吸ったり、薙刀なぎなたで攻撃したりしたのですが、過去に経験したことのないほどの大きな悪しきものに歯が立たなかった。


白帝はくてい様は私に逃げるようにと一閃いっせんを放ち、乞ふ四季殿しきでんから逃がしてくれたのです。そして……白帝はくてい様は悪しきものの封印ふういんに最後の力を使ったのだと思います」

「そうでしたか」


蒼帝そうてい様は一度だけ、ゆっくりと視線を落とした。


「……白帝はくてい様のご判断に、頭が下がります」

「最後に『裏切者がいる』と白帝はくてい様ははっきりと告げました。私はその言葉を届けるために人間界に落ちた後、出雲いずも大社おおやしろから天上界てんじょうかいへ戻ってきたのです」


「裏切者がいる……」


私の言葉に春光はるひかり様が息を呑んだ。蒼帝そうてい様はそのことを考えていたのだろう。難しい表情をしていた。


宵闇よいやみ、そのことを各国に伝えるのでしょう?」

「はい。そのためクナドノカミ様に出雲いずも大社おおやしろから一番近い国に送ってもらったのです」


「クナドノカミ様に送ってもらったのですね。分かりました。各国へは春の国から使者を出しておきます。その方が早い。


橋を渡り乞ふ四季殿しきでんに入ることが出来るのは各国の帝と神祇官じんぎかんの長だけです。犯人を見つけることも大事ですが、先に四季殿しきでんに入り込んだ悪しきものを討伐しなければなりません。


宵闇よいやみは秋の国に戻り次第、神への報告と新たな白帝はくていに就く者とどのように討伐するのか話し合って下さい」

「わかりました」


全ての国の帝と神祇官じんぎかんが乞ふ四季殿しきでんに入ることが出来ない。


橋を渡れるのはその年を担当している国の者のみ。


木札きふだを持っていれば渡れなくはないが、その年の帝や神祇官じんぎかんが入っているところに別の国の者が入ると、力が片寄りバランスが崩れる。


例外があるとすれば五年に一度の任期を終える時だろう。


この時ばかりは次の国の帝と神祇官じんぎかんの長が四季殿しきでんに入ることを許される。だが、浮島うきしまに入る時には極力力を抑えなければならないとされている。


秋の国で悪しきものを倒さねばならない。


もし、全ての国の帝が四季殿しきでんに集まったらあの悪しきものを倒すことができるのだろうか。けれど、裏切者がいる中で集まれば全ての帝や神祇官じんぎかんの長が殺されてしまう可能性だってある。


その可能性を考えるのであればまだ裏切者をその国で留めておいて衛門府えもんふの武官に目を光らせてもらう方がいい。


それに強い力を持つ帝達が入ることで浮島うきしまは不安定になり、人間界に落ちてしまうことも考えらえる。


問題は乞ふ四季殿しきでんに入り込んだ悪しきものだ。


未だかつねないほどの大きな人型を取っており、言葉を発していた。あれほどの強力な悪しきものを見たことがない。名のある神が闇に落ちたのだろうか。


次の白帝はくていになるのはあおい様だろう。あおい様は歴代の白帝はくてい様よりも力を持っている。


反対に私はまだまだ弱い存在だ。必ずあおい様の足を引っ張る存在になってしまう。どうすればいいのだろう。


私の表情が優れないのを感じたのか蒼帝そうてい様が優しく微笑み口を開いた。


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