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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

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第四十八話

宮司ぐうじは立ち上がり、廊下に出て奥の人が居ない部屋へと私達を案内する。


小さく仕切られた部屋に入り、私達は宮司ぐうじさんと対面で座ると、待ちきれなかったようで宮司ぐうじさんは口を開いた。


「神様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「私の名前は宵闇よいやみと言います。私は神様ではなく、天上人てんじょうじんになります」

天上人てんじょうじんなのですか!?」

「ええ、そうですね」


やはり神主かんぬしさんと同じように驚いて同じような質問を受けたことにクスリと笑ってしまう。


人間にとっては珍しい存在には違いない。


普段、八百万やおよろずの神様を信仰しているため、こういう大きな神社には神事しんじの時などに神様が降りてくることがある。姿は現さなくても事象を通して存在を感じるのだと思う。


その分、人間達にとって神様は身近な存在であるのかもしれない。私達天上人てんじょうじんは風を吹かせたり、植物の育成を助けたりしていたり、瘴気しょうきを消滅させたりするのが主な役目のため、神様のように身近な存在とはまた少し違うのだろう。


宵闇よいやみ様、そのお怪我はどうされたのですか?」

「私の怪我は、人間達でいうもののけの類と戦い、できた怪我です。今の私は羽根が折れてしまい、飛ぶことができないのです」


「もののけの類……。大丈夫なのでしょうか」

「現状はなんとも言えません。これから私は国に帰り、再び対峙しなければならないのです」


「……そうなのですね。もし、もしももののけに負けてしまったらどうなるのでしょうか」


宮司ぐうじさんは心配そうな表情をしながら聞いてきた。


「負けた場合、ですか。全ての国に瘴気しょうきが降り注ぎ、木々や畑の植物は枯れ、人々は飢えることになります。そしてもののけがき出てしまい、この世の地獄がくるでしょう」

「地獄……。神は、神様は助けてくれるのではないのですか?」


「地獄にならないためにもこうして私達は動いているのです。もちろん地獄が生まれないよう神も動きますが、神が動くときは最後の時でしょう。全てを再編する。そうならないためにも今、こうして動いているのです」


神界しんかいから多くの神が出てこられるとすればきっと世界はがらりと変わってしまうだろう。


もちろん天上人てんじょうじんのいる国も浮島うきしまに神様が降り力を振るわれた場合も同様で神の力で悪しきものは消滅するが、天上人てんじょうじんの世界は崩れ全て作り直される。それほどの力があるのだ。



本殿ほんでん祝詞のりとをあげれば宵闇よいやみ様は国に戻れるという認識で合っていますか?」


神主かんぬしさんが改めて確認するように聞いてきた。


「ええ、その認識で間違いありません。神の力を借りて国に戻るつもりですが、ここへ来る前にわずかですが瘴気しょうきが空から降りてくる気配を感じました。もう少しゆっりすることが出来ると思っていたのですが、あまりゆっくりはできないようです」


瘴気しょうきの影響で国に戻れなかったらどうしよう。一抹の不安が過る。


「そうでしたか。では急いで本殿ほんでんに向かいましょう。今の時間は本殿ほんでんが空いております」

「突然に本殿ほんでんを借りたいと言って申し訳ない」


「いえ、日々、私達は神様にも天上人てんじょうじんの方々にも助けてもらっているのです。こちらこそ感謝しております。では本殿ほんでんに参りましょうか」


神主かんぬしさんが宮司ぐうじさんに頭を下げると、宮司ぐうじさんは問題ないと笑顔で話す。


宮司ぐうじさんは立ち上がり、神主かんぬしさんと一緒に本殿ほんでんに向かった。私は先ほどと同じように姿を消して付いていく。


本殿ほんでんの中は澄んだ空気で包まれており、神への報告は届くと思うが、何分瘴気しょうき大社おおやしろの周辺にまで影響が及んでいる。どうなるのかは未知数だ。


宮司ぐうじさん方、ここまでしていただいて感謝します」

「いえ、こちらの方こそ宵闇よいやみ様のお姿が見られたことを生涯忘れません。どうかご無事で」


宮司ぐうじさんと神主かんぬしさんは後ろへ下がり、端に座って私が国に帰るところを見届けるようだ。


私は祝詞のりとを上げはじめると、一陣いちじんの風が本殿ほんでんの中を駆け巡った。


宵闇よいやみ、報告は後だ。天上界てんじょうかいへ連れていくが、乞ふ四季殿しきでんの影響で秋の国に送り届けることは出来ないだろう。あとはいやいけに入り、自力で戻るんだ』


宮司ぐうじさん方、助けていただいてありがとうございました」


私がそう言うと、身体がふわりと持ち上がり、次の瞬間すでに大社おおやしろの上空を飛んでいた。


眼下に見える大社おおやしろを眺めていると、一人の高貴な衣をまとった人の姿が見える。


「クナドノカミ様、ありがとうございます」


私は感謝を口にし、そのまま天上界てんじょうかいに風と共に飛ばされる。

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