表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第三章 覚悟の先にあるものは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/63

第四十七話

全身に緊張が走った。


空からほんのわずかかだが瘴気しょうきが降りてきている。


なんということだろう。


白帝はくてい様の封印ふういんは失敗に終わったのだろうか。四季殿しきでんから瘴気しょうきが流れているのだとすればこれは人間界全体に流れ始めているのだろう。


今はまだ微量だから影響が表れることはないが、人間世界に瘴気しょうきを行き渡らせるほどの瘴気しょうきが降りてくれば確実に野山や畑、全ての植物は枯れ果て死の世界になってしまう。

途端に不安で押しつぶされそうになる。


宵闇よいやみ様、どうかされましたか?」


まだ降りてきた瘴気しょうきはごく微量で人間達には見えないのだろう。濃い瘴気しょうきであっても殆どの人間は見ることはできない。


「……空気がわずかによどみ始めている。急いで帰らないと」

「空気がよどみ始めている、のですか?」


私は心配をかけないように笑顔を作り、話をするが、心の中は叫びそうになる思いを必死で抑えている。


「ええ。心配は要らないと思いますが、気になるのでやはり急いで帰らねばなりません」

「そうでしたか。引き止めてしまい申し訳ありません」


「いえ、私も本当ならもっとゆっくりとお話をしたかったのですが……。村の皆様や神主かんぬしさんに助けていただいて感謝しています。神主かんぬしさん、人も多くなってきましたので私は姿を消します」


「はいっ。宵闇よいやみ様、大社おおやしろへ入ってすぐに戻ることができるのですか?」

「いえ、大社おおやしろ神主かんぬしさんに話をして本殿ほんでんに向かい、祝詞のりとをあげようと思っています」


「ここの神主かんぬしはよく知っているので是非、私に案内させてほしいです。できればでいいのですが、宵闇よいやみ様が祝詞のりとを上げる時にその場に立ち会ってもよろしいでしょうか?」

「私は構いませんよ」

「有難う御座いますっ!」


神主かんぬしさんはとても感激しているようだ。そうこうしているうちに牛車ぎっしゃ大社おおやしろの前の大きな通りで止まる。どうやらここからは歩いていかなければいけないようだ。


流石に羽根の付いた私は人々の目に留まってしまうため姿を消した。


「では宵闇よいやみ様、行きましょうか」

「案内をお願いします」


大勢の人が行き交う通りには行商の人や参拝者の姿がある。私は祭事さいじの時や悪しきものの討伐の時にしか人間界に降りることはないので普段、彼らがどんな生活をしているのか気になっていた。活気があって信仰心も厚い。


神様との繋がりの深い大社おおやしろのためか人々の信仰心のおかげかとても空気が心地よく感じる。大社おおやしろ前の大通りでこれだけ心地よく感じるのだから大社おおやしろの敷地に入ればもっと心地よい空間なのだろう。


神主かんぬしさんの後を歩き、鳥居とりいを潜り、下り参道へと入った。


お参りにくる人々は沢山いて人の波は途切れることはなさそうだ。私達は第二の鳥居とりいを潜り、松の参道をゆっくりと歩いていく。


神域しんいきにいるせいか悪しきものが落ちてくる気配は全くしていない。むしろ体内で浸食しんしょくしていく瘴気しょうきが抑えられているような感じさえする。


宵闇よいやみ様、先に大社おおやしろ教の神職がいる建物へ寄ります。宮司ぐうじに声を掛けて本殿ほんでんに向かいましょう」

「わかりました」


私は神主かんぬしさんに続き拝殿はいでん横にある建物へと入ると、そこは大きな部屋になっていて十数人が書類を書いていて、みんなはとても忙しそうにしている。


私達は一番奥に座っている人の場所まで歩いていく。


そして神主かんぬしさんはいつもこの大社おおやしろ神事しんじを行っているという神主かんぬしさんに声を掛けた。


宮司ぐうじ殿、突然の訪問で申し訳ないが、本殿ほんでんしばらくの間、お借りしたい」

白枝しろえだ宮司ぐうじ殿が本殿ほんでんを借りたいとはどうしたの、か!?」


どうやら宮司ぐうじと呼ばれる人間には私の姿を感じるのか探るような視線を向けている。


「やはり宮司ぐうじ殿には分かりますか」

「ああ、薄っすらと感じるくらいだが……。もしかして神様がそこにいらっしゃるのでしょうか?」

宮司ぐうじ殿、ここでは大事になるので……」


神主かんぬしさんがそう言おうとした時、私は姿を現した。


「お世話になるのだし、私は構いません」


すると宮司ぐうじさんが驚き目を見開いた。そして忙しくしていた人達も手を止めたようでその場は一瞬にして静まり返った。


「お、お怪我をなされていらっしゃるのですか!?」


その声に周囲がざわつきはじめた。


宮司ぐうじ殿、部屋を移しましょうか」

「あ、ああ。そうだな。こっちの部屋へ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ