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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第二章 神祇官の長として

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第四十四話

必死で浮島うきしまの橋まで辿り着くと、瘴気しょうきは更に広がり、悪しきものの形を取ろうとしている。

私は薙刀なぎなたを振りながら叫び橋を渡っていく。


浮島うきしまを渡るとそこには見たこともない大きさの悪しきものが四季殿しきでんを囲っている。


薙刀なぎなたを振り、瘴気しょうきが一瞬晴れた隙に歩みを進めようやく宵闇よいやみはなりふり構わず白帝はくていの元に駆けつけた。


白帝はくてい様っ!!」

宵闇よいやみ、来るな!」


宵闇よいやみはなりふり構わず白帝はくていの元に駆けつけた。


「馬鹿者、なぜ来たのです」

「私は、白帝はくてい様を、お守りするとあの時から決めているんです」


春の日に柔らかく吹く風があの時のことを思い出し、私は薙刀なぎなたを握りなおす。


宵闇よいやみ……」


虚空と呼ばれる間で立つことが許されていない白帝はくてい様は敵からの攻撃で血まみれになりながらも必死に戦っていた。


私も愛用の薙刀なぎなたを振るい、薙刀なぎなた瘴気しょうきを吸いながら白帝はくてい様の前に立ち、敵と対峙する。


「オ、マエ、ラ、コロ、ス、……くは……たい、だ…」


ぬらりと人型を取っている悪しきものは声を発するまでに成長している。


そして今にも全てを飲み込んでしまいそうなほどの濃い瘴気しょうきまとっていた。黒く濃いきりのような瘴気しょうきは私達を取り囲むようにじわりと迫る。


時折り、その瘴気しょうき凝縮ぎょうしゅくし形を変え、細く鋭い形となり、矢のように飛んできては私達を貫こうとしている。


私も応戦するため瘴気しょうきに右手をかざし、より多くの瘴気しょうきを取り込みはじめた。


宵闇よいやみ、止めなさい。それ以上取り込むと動けなくなります」

「例え私が倒れても、白帝はくてい様を守れるのであれば構いません」


私は必死になって白帝はくてい様の盾になりながら瘴気しょうきを取り込むが、瘴気しょうきはあまりに濃く、気を抜くと浸食しんしょくしてくる闇に心を持っていかれそうだ。


悪しきものは瘴気しょうきを取り込む私に苛立ったようで、まとっている瘴気しょうきとげに変え、私を攻撃し始め、瘴気しょうきとげは私の羽根を傷つけ、顔や身体を切り裂いていく。


必死に瘴気しょうきを吸い封印ふういんの玉を作っていくが、悪しきものから漏れ出る量を吸いきれない。


が、やるしかない。


ころり、またころりと封印ふういんの玉が床へと転がっていく。


宵闇よいやみ、よく聞きなさい。私は今から道を作ります。お前は外へ向かい、他の国に知らせなさい。悪しきものを迎え入れた者がいる、と」


私は白帝はくてい様の言葉を必死に拒否する。


「嫌です! 白帝はくてい様を置いてはいけません。私も最後まで白帝はくてい様の側で戦います」

「……今から道を開けます。宵闇よいやみしかいないのです。頼みました」


白帝はくてい様はそう言うと、聖なる力を乗せた言のことのはを口ずさみ、悪しきものに向かって一閃いっせんを放った。


すると、悪しきものは右へ避け直撃を免れたが私達を取り囲んでいた黒い瘴気しょうききり散し、一筋の道が作られた。


「行きなさい。宵闇よいやみ、頼みましたよ」


白帝はくてい様は嫌がる私の身体を包み込むような風が吹いた。「嫌です! 白帝はくていさまぁぁぁ」抵抗むなしく私は風の勢いに乗せられたまま社殿しゃでんを追い出される。


私がやしろから出た後すぐに四季殿しきでんは光と共に轟音ごうおんが鳴り響いた。


……ああ、私は無力だ。白帝はくてい様をお守りすることができなかった。涙が世界をかすませる。風が止み、支えてくれた意思が消えていく。


もう、何にも守られていない。

身体が、空に置き去りにされるように落ちていく。

羽根を開こうにも先ほど負った怪我で上手く動かせず、私はそのまま人間界に落ちていった。

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