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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第二章 神祇官の長として

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第四十二話

「とりあえず立ち話では状況が分からないので奥の部屋に」

「はい」


そうして神祇官じんぎかん達は奥の部屋へと入っていった。上座に私が座ると、草の実さんが進行役となり、最初に口を開いた。


宵闇よいやみ様、現在番紅花ばんこうか様はあおい様の命で乞ふ四季殿しきでんに行かれております」

四季殿しきでんに? 番紅花ばんこうか様は四季殿しきでんに入ることができないはずですが」


「はい。詳しい話は何も聞いていないのですが、番紅花ばんこうか様がここを離れる時に『白帝はくてい様の様子を見に行く』と言われたんです」


四季殿しきでんに何かあったのですか?」

「それが……私達にも全く分からないのです。突然国を守る結界が現れたと思えば情報が一切入ってこないのです。本殿ほんでんから神へおうかがいを立てようとしても何の返答もない。連絡が途絶えている状態です。現在、衛門府えもんふから国中の武官が警戒に当たるように指示が出ています」


「そうなのですね。分かりました。もしかしたら天上界てんじょうかいに悪しきものが来る可能性があるのかもしれないのですね……」


私の言葉で重い空気に包まれた。未だかつて悪しきものに天上界てんじょうかいが狙われたことは一度もない。


普段から悪しきものを討伐するのに付いていく私達でさえ自国が狙われるなんて考えてもみなかった。みんなが動揺するのも無理はない。


どうすべきか悩んでいると草の実さんは意を決したように口を開いた。


宵闇よいやみ様、私達は神祇官じんぎかんの者達です。悪しきものの封印ふういんができるんです。私、頑張ります!どうか、ご指示を」


草の実さんの言葉にみんなが『そうだな』と頷いている。


「草の実さんありがとう。……そうですね。現在、神様のおかげで秋の国は守られていますが、何が起こるかわかりません。


私達が倒した悪しきものは堕ちた神でしたが、問題はその悪しきものが呪具を付けていました。もし、強力な悪しきものが数多くいるのであれば、天上界てんじょうかいが不安定になる可能性も捨てきれない。半数は待機し、残りの半数は衛門府えもんふの武官と協力して見回りを行って下さい。


三時間程度で交代し、こまめに休むようにお願いします。草の実さんは神祇官じんぎかんに残り、情報を整理し、人員配置を行って下さい」


宵闇よいやみ様はどうされるんですか?」

番紅花ばんこうか様が風読かぜよみの手伝いで戻って来られないと思うので私が四季殿しきでんに入ります。風読かぜよみの状況を見てこちらに私も戻ります。番紅花ばんこうか様が戻られたら番紅花ばんこうか様に指示を仰ぐようにお願いします」

「分かりました」


「不測の事態で不安だとは思いますが、何も起こらない、起こさないためにも一丸となって協力していきましょう」

「「はい!!」」


こうして短い話し合いが行われた。私は立ち上がり、草の実さんと神祇官じんぎかんの入口まできた。


番紅花ばんこうか様はどれぐらい戻られていないのです?」

「えっと、宵闇よいやみ様が討伐に出かけられてすぐです」

「そうですか」


長い時間、外から風読かぜよみの手伝いをしているのだろう。私も急がないと。


「では、私は乞ふ四季殿しきでんへ向かいます。結界の影響で連絡が取れないと思いますが、早めに戻ってきますから心配しないで下さい」

「はい! 宵闇よいやみ様、お気をつけて向って下さい」


私は草の実さんに見送られながら四季殿しきでんに向かった。現在は転移門てんいもんが使えないため飛んでいくしかない。


ここから乞ふ四季殿しきでんは少し遠くて半時間ほどの距離にある。転移門てんいもんが使えないのがもどかしい。


それにしてもいつからアキコク様は結界で国を覆ったのだろうか。白帝はくてい様の風読かぜよみ中、どうやって脅威が迫っていると知ったのだろうか。


大きな力が天上界てんじょうかいに向かっていると察知したの?


それとも白帝はくてい様の風読かぜよみの内容を知った後なのか。きっと結界を覆うほどの出来事がどこかで起こっているのだろう。


風読かぜよみを聞いて急いで見つけないと。


こうして色々とこれからのことを思案しながら飛び、ようやく四季殿しきでんのある島が見えてきた。


どういうことだろう……。


私は不安に苛まれる。乞ふ四季殿しきでんがある浮島全体が瘴気しょうきで覆われている。


まさか、悪しきものが四季殿しきでんに? でも、木札きふだを持った限られた者しか四季殿しきでんに入れない。悪しきものはそれを越えたの?


私はどうしていいか分からず、一瞬立ち止まってしまった。


中には白帝はくてい様がいるはずだ。橋の袂には番紅花ばんこうか様も待機しているはずだ。


きっと、二人なら大丈夫。


逃げたくなる気持ちをそう言い聞かせ、ゆっくりと浮島に掛かる橋に向かった。


浮島の近くまで飛んでくると最も恐れていた事が目の前で起こっていた。


乞ふ四季殿しきでんというより浮島周辺から恐ろしいほどの瘴気しょうきが四方へと流れているのだ。

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