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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第一章 神祇官へ
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第四話

宵闇よいやみ、我々、神祇官じんぎかんの仕事は何か分かるか?」

神祇官じんぎかんの仕事、ですか?」


私はそう聞かれ、神祇官じんぎかんの仕事を漠然としか理解出来ていないことに気づいた。


「人間界の季節が自分たちの季節になると、風を吹かせたり、雪を降らせたりと人間界へ直接力を行使こうしすることができるのは知っているな?」

「はい。私達の能力ですよね」


私は番紅花ばんこうか様の言葉に頷く。


「そうだ。そして神祇官じんぎかんの主な仕事は神への祈りや報告、風読かぜよみを担当部署や他国に知らせることや、指示をする役割を担っている」


「他にも衛門府えもんふの武官達に付いていき悪しきものの封印ふういんを行うこともある。乞ふ四季殿しきでんに今入っているのは春の国だ。次に我々が四季殿しきでんに入るのは八年後だ。今の時期は私も手が空いているから宵闇よいやみを直接指導できる」

番紅花ばんこうか様、ありがとうございます」


神祇官じんぎかんの長から直接教えてもらえるのは滅多にない。私は感謝し、深々と礼をする。


「いいか宵闇よいやみ、お前の能力は悪しきものを封印ふういんすることができるとはいえ、どれくらいのことが出来るのか分からない。それでは白帝はくてい様をお守りすることは叶わぬ。悪しきものたちは常に白帝はくてい様や世界を混沌こんとんの闇へ陥れようと狙っている。宵闇よいやみは自分の限界を知り、どう立ちまわれば良いか最善を考えなければならぬ」

「はい」


そうして私は番紅花ばんこうか様に連れてこられた場所は人間たちの住む場所にある山奥のポツンと森の中に建てられた一つのやしろだった。


人々の記憶から消えていったのだろう。古ぼけて見えるのだが、問題はそこではない。長年忘れ去られたやしろ瘴気しょうきを帯びて見るからに危ない。瘴気しょうきが濃くなれば悪しきものが生まれ、住処になる。そうなればこの山は神の祝福と呼ばれる私たちの力が及ばなくなる。


木々は枯れ果て、動物もいない、最後には山も死んでしまう。そうならないためにこうして瘴気しょうきが溜まっている場所を探し、定期的に瘴気しょうきを散らしているのだ。


この仕事は本来、曼殊沙華まんじゅしゃげ様が率いる衛門府えもんふの者たちだ。彼らの手に負えないほどの強いものは番紅花ばんこうか様や白帝はくてい様が神の力を借りて封印ふういんを行う。


白帝はくてい様でも力が及ばないほどの悪しきものが極稀にいるのだが、その場合は神自らが赴き悪しきものを消滅させるのだ。余程のことがない限り、神は天上界にも人間界にも姿を現すことはない。


私の能力であれば衛門府えもんふでも働けると思うのだけれど、能力に限りのあるもの、少しだけ取り込む程度であればいても邪魔になるだけなのかもしれない。


その点、神祇官じんぎかんは神の力を借り、あしきものを封印ふういんする能力がある者が採用される。


私は神の力を借りることができるかどうかも分からないが、封印ふういんの能力があるため神祇官じんぎかん見習いとしての採用となった。


宵闇よいやみ、この瘴気しょうきを吸うことが出来るかやってみてくれ」

「はい」


私はどうすればいいのか分からないけれど、なんとなく瘴気しょうきに向かって右手をかざしてみた。

すると手のひらの中心が熱くなり、徐々に瘴気しょうきを取り込みはじめた。


取り込んだ瘴気しょうきは身体を浸食しんしょくしはじめていく。べたりとまとわり付くような感覚があり、気を抜けば自分が瘴気しょうきに飲まれてしまうのではないかと思うほどだった。


どうやったら封印ふういんの玉が出来るのだろう?


この間は左手が熱くなり、出てきたと思った。瘴気しょうきを取り込むことはできたのに思ったような感覚にならない。


不思議に思いながら何度も瘴気しょうきを吸っている間にも瘴気しょうきは身体をじわじわと蝕んでいく。苦しくなり、跪いた時、番紅花ばんこうか様が鈴を鳴らし、私の身体から瘴気しょうきを取り出していった。

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