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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第二章 神祇官の長として

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第四十話

私達は衛門府えもんふの人達の尽力もあってようやくほこらに辿り着くことができた。

出来たのはいいのだが、ほこらにいた悪しきものの姿に一同絶句していた。


……完全な人型を取っている。


他の悪しきものは煙に近い瘴気しょうきの状態から密集し、塊となり、悪しきものになっていくのだが、この悪しきものは色は灰色に所々腐敗したような色をしていてボロボロの衣をまとっており、二本足で立っていた。腕には赤い腕輪が怪しく光っている。


これが神が堕ちた姿なのか?

それとも瘴気しょうきだけでここまでの姿になった?


後者は考えにくい。白帝はくてい様が目を皿にして風読かぜよみを行っていたのにも拘わらず、短時間でここまで成長するとは思えない。


それに瘴気しょうきから生まれるというより、瘴気しょうきを生み出しているといってもおかしくないほどだ。


「危険だ。全員距離を取れ!」


曼殊沙華まんじゅしゃげ様が言葉を発した瞬間に武官二人が悪しきものの手から出された瘴気しょうきに絡めとられた。


「グッ」


苦しそうにしながら武官は抵抗しているが、瘴気しょうきから逃れられない様子だ。


なんとかしないと。


私はとっさに武官を捕えている瘴気しょうきを吸うとコロリと封印ふういん玉が出来た。


なんて濃さなのだろう。瘴気しょうきを吸った途端に神経を突きさすような痛みが襲ってくる。それに私の封印ふういんする力が強くなったとはいえ、ここまですぐに封印ふういんの玉が出来るほどの濃い瘴気しょうきだ。


『これは危険だ』と頭の中で鐘が鳴っている。


ゲホゲホと咳をしながら武官達は後ずさり、次の攻撃にそなえる姿勢となった。


曼殊沙華まんじゅしゃげ様は武官が解放されたと同時に大太刀たちで悪しきものに切りかかる。


山吹やまぶき様も錫杖しゃくじょうを鳴らし、詠い唱える。山吹やまぶき様の言葉は周囲を浄化していき、悪しきものの動きを鈍くしている。


そこに曼殊沙華まんじゅしゃげ様が何度も霞切りを行い、二人の武官も斬りつけていく。

だが、思っていたよりも傷は浅く、切られた箇所から瘴気しょうきが溢れ、傷を修復しようとしている。


私は手をかざし、瘴気しょうきを吸収して修復を邪魔する。


「……ダ。オ、ノ、レ、……げ、て」


その言葉は誰かの記憶の残響のような感じがした。


そう思った瞬間、瘴気しょうきが一本の槍のようになり、私に向かってきた。


宵闇よいやみ、下がれ!!」


しまった。間に合わない。身体への直撃は避けたが、手をかざしていたため、手のひらから槍を吸い込む形となってしまった。


私は限界まで濃縮された瘴気しょうきを吸ってしまう。いくら瘴気しょうきが吸えるとはいえ、瘴気しょうきの塊を吸い込めばかなりのダメージを受ける。


痛みと瘴気しょうき浸食しんしょくされていく感覚で膝をついてしまう。


宵闇よいやみ!大丈夫か?」

「……は、い。なんとか……」


そう答えるので精一杯だ。早く封印ふういんの玉に変化させなければ身が保たない。

私は封印ふういんに集中する。


山吹やまぶき様のおかげで次の攻撃は防がれていて助かった。


コロリと封印ふういんの玉が三つほど出来た。一瞬、本当に危なかったが、無事に封印ふういんが出来てホッとする。


山吹やまぶき様、ありがとうございます」


山吹やまぶき様は詠いながら小さく頷いている。


宵闇よいやみ、我々が悪しきものを全力で切っていくそばから吸い上げてくれ」

「わかりました」


番紅花ばんこうか様達が斬りつけていく傍から私は悪しきものを吸い込んでいく。悪しきものは斬られる度に痛みを感じているようで、唸り声や悲鳴にも似たような声を上げている。


やはり、元は名のある神だったのだろうか。


少しずつだが、悪しきものは弱っていく。手を失い、片腕を無くし、胴を削られ、それでも激しく抵抗している。


数時間は経っただろうか。ようやく悪しきものの抵抗が減ってきた。山吹やまぶき様はその様子を見て祝詞のりとに変え、詠唱を行う。


前にかくしやしろで見た時よりも数段大きな光が悪しきものを捕えている。

「消滅せよ!」


山吹やまぶき様がそう声を上げると、光が強くなり悪しきものは泡が消えるようにゆっくりと消滅していった。


悪しきものがいた場所には赤い腕輪が残されており、山吹やまぶき様は『呪具か』と呟きながらそれを拾い懐へ仕舞った。


宵闇よいやみ、疲れているところ悪いが、周囲の瘴気しょうきを吸ってくれるか?」

山吹やまぶき様、わかりました」


山吹やまぶき様は祝詞のりとを唱え悪しきもののいた辺りを浄化していく。


私も周辺の瘴気しょうきを吸い封印ふういんの玉を作り始めた。衛門府えもんふの人達も能力を使い、湧いてくる悪しきものを倒しては瘴気しょうきを散らしていく。ようやく一段落がついた頃には日が明けようとしていた。


「ようやく隠樹いんじゅの山も瘴気しょうきが無くなったな。戻るぞ」

「はい」


流石に長時間の戦闘で傷つき、私も瘴気しょうきを多く取り込んだため、癒しの池に全員で向かうことになった。

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