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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第二章 神祇官の長として

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第三十九話

草の実さんの後ろにいた番紅花ばんこうか様にも声を掛ける。


番紅花ばんこうか様、私がいない間、神祇官じんぎかんをお願いしますね」

「ああ、わかった」

「では、私はあおい様のところへ行った後、衛門府えもんふへ行き隠樹いんじゅの山のほこらへと向かいます。何かあれば番紅花ばんこうか様に」

「「わかりました」」


手短に話を終え、私は本殿ほんでんの方へと向かった。いつもなら神様への報告は祝詞のりとを上げてから行うのだが、今は時間がない。


手早く隠樹いんじゅの山のほこらに強い悪しきものが出たことや私や曼殊沙華まんじゅしゃげ様が現地に向かうこと、あおい様に文を渡すことを報告する。その足であおい様のところへ向かう。


宵闇よいやみ、こんな時間にどうしたんだい?」


あおい様は私の方に向き直り、優しく話しかけてきた。


あおい様、お忙しい中お手を止めてしまい申し訳ありません。実は隠樹いんじゅの山のほこらに悪しきものが出て私と山吹やまぶき様、曼殊沙華まんじゅしゃげ様達と向かうことになりました。白帝はくてい様からあおい様へこの文を渡すことと、山吹やまぶき様をお呼びいただきたいです」


「……そうか。白帝はくてい様が、そう言ったんだね? すぐに山吹やまぶき転移門てんいもん前に向かうように伝えるよ」

「ありがとうございます」

「……宵闇よいやみ、気を付けていくんだよ」

「はい」


私は言葉を短めに転移門てんいもんへと向かった。どうしようと不安になる。どれだけ強敵なのだろうか。


上手くできるかどうかは分からないけれど、今の私にできることを今はやるしかない。


アメノワカヒコ様の念玉ねんだまのおかげで私自身封印ふういんの力も強まり、より多くの瘴気しょうきを取り込むことができるようになった自覚はある。


転移門てんいもんの前には既に衛門府えもんふの武官が立っていた。


「お待たせしました」

宵闇よいやみ様、お待ちしておりました」

武官の二人が礼を取る。

宵闇よいやみが我を指名するとは珍しいな」

「今日は白帝はくてい様から直接指示を受けたのです」


白帝はくてい様が、か」


曼殊沙華まんじゅしゃげ様は何か思案し、それ以上口を開くことはないようだ。そうこうしているうちに山吹やまぶき様も到着し、全員が揃った。

一同、顔を合わせ厳しい表情となった。


「覚悟を決めねばならん」

「ああ。宵闇よいやみ、決して無理はするな」

山吹やまぶき様、わかりました」

「では行こうか」


山吹やまぶき様の声で私達は転移門てんいもんを開き、隠樹いんじゅの山のほこらへと転移した。


……転移門てんいもんをくぐると既にそこは瘴気しょうきで溢れている。


私達はすぐに武器を持ち直し、一瞬にして緊張感が漂った。渋い表情でお互いが頷き合う。これは相当な強さの悪しきものだろう。


分かってはいたけれど、実際に足を運んでその瘴気しょうきの濃さに実感させられる。


一歩、また一歩と進んでいく中、山の木々は枯れ果て、瘴気しょうきから新たな悪しきものが所々に生まれ始めている。二人の武官は生まれたばかりの悪しきものを散らしながら歩いていく。


「……瘴気しょうきが濃いですね」

「ああ、ほこらまではもう少し距離があるが今からこの濃さでは、な。もしかして神が堕ちたのかもしれないな」

「そうだ、山吹やまぶき様。念のためにこの玉をお持ちください」


私は山吹やまぶき様にアキコク様の念玉ねんだまを一つ渡した。


「これはなんだ?」

「これは念玉ねんだまと言ってアキコク様が私のために出してくれた玉なのです。白帝はくてい様の力を補助するための玉なのできっと山吹やまぶき様にも扱えると思って……。あ、お貸しするだけですから」


山吹やまぶき様は受け取った念玉ねんだまを持つと観察し、少し驚いたような顔をした後、懐に仕舞った。


「確かに借り受けた。俺にも使えるようだな。助かる」

「急ぐぞ」


曼殊沙華まんじゅしゃげ様の言葉で私達は頷き、再び歩き始めた。ほこらまでの距離はそうないはずなのに悪しきものが一体、また一体と私達に襲い掛かってくる。


最初は二人の武官だけで十分に対処が出来ていたのだが、次第に敵は強くなっていく。


「少し、封印ふういんしますか?」

「我が出よう」


曼殊沙華まんじゅしゃげ様はそう言うと、き出てくる悪しきもの達に向かって手をかざすと冷たい氷の風が悪しきものを囲み凍らせた。


それを武官達が粉々に砕いて散らしていく。武官の能力は攻撃に特化しているものが殆どだが、曼殊沙華まんじゅしゃげ様の能力は他の誰よりも秀でている。


百年以上衛門府えもんふの長を続けるだけあって素晴らしい。

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