表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第二章 神祇官の長として

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/63

第三十五話

「……まさか、まさか、天上人てんじょうじんが……?」

「十分にあり得るんだ。我々の中に人間たちへその方法を教えた者がいるかもしれない」

「でも、私達は詳しい方法を知らないのではないでしょうか」


「ああ、そこなんだ」

「各国の帝様や神祇官じんぎかんの長、衛門府えもんふの長は詳細を知っている。だが、当時の蒼帝そうてい様と春陽しゅんよう様はいやいけに戻られたから現在の蒼帝そうてい様や神祇官じんぎかんの長になった春光はるひかり様は知っているかどうか、というところだろうね」


「では、私達を含めた十二名のうちの誰かが人間達に教えたということになりますよね」

「分からない。他の者がそっと聞いていた可能性も捨てきれないけれど、天上人てんじょうじんが関わっていると考える方がいいんじゃないかな」


「信じられない、というか信じたくない……」

「そうだね。でも万が一ということもある。この後、神への報告があるんだよね? 一緒にこの小袋も添えて報告をしてほしい」

「分かりました」


私はあおい様から手拭てぬぐいいごと小袋を貰い、懐にしまう。


「この小袋を持っているだけで手が震えますね。怖い。悪しきものがいて出たらどうしようって」


私の言葉に先ほどまで真剣な表情だったあおい様に笑みが零れた。


「心配は要らない。しっかりと僕が消滅させたからね。これはもうただの袋になっている」

「そうですよね。あおい様、これ以外に変わったことはありませんでしたか?」


「いや、特にはなかったかな。これを置いた人間も近くにはいなかった」

「強さはどれほどだったんですか?」

「悪しきものは武官一人では厳しかったよ。ただ、人型は取っていなかったからそう強くはなかったかな」


「わかりました」

「報告書は先ほど出しておいたから他の報告書と一緒に出しておいてほしい」

「はい」

話を終えてあおい様はやしろへと戻られた。


私は他の人達に心配を掛けないように務めて笑顔でいるけれど、内心は震えていた。

また悪しきものが人間界に溢れるかもしれない。


また蒼帝そうてい様のように能力を剥奪はくだつされる人が出てくるのかもしれない。

不安は尽きない。


あの時のようなことがあれば白帝はくてい様や私は能力を剥奪はくだつされてしまうだろう。私は構わない。でも、白帝はくてい様はずっと私達のために頑張ってきているのに。これ以上何も起きないでほしいと願ってしまう。


本殿ほんでんへ行き、報告をしてきますね」

宵闇よいやみ様、いってらっしゃい」


草の実さんは笑顔で見送ってくれた。

私は今日の報告書を抱え、重い足取りのまま本殿ほんでんへと歩いていく。

神様は怒ってしまうだろうか。


本殿ほんでんに入り、書類と懐に入れた小袋を祭壇に乗せて準備し、祝詞のりとを始めた。


そうして今日の風読かぜよみの報告や衛門府えもんふ太政官だじょうかんから上がってきた報告書を読み上げる。そして最後にあおい様からの報告書を読み上げようと書類を手にした時、一瞬にして空気が張り詰め、冷たい風が髪を揺らした。


『誰が消えたのか』


あおい様の報告書と鈴の付いた小袋がふわりと浮かび、再び声が聞こえた。


宵闇よいやみよ、アキコクへ知らせろ』

「承知致しました」

『人間界に変わりがないかこちらでも注視しておくが、白帝はくてい宵闇よいやみも監視を怠るな』

「はい」


するとふわりと一つの手のひらに収まるほどの鈍色にびいろの玉が祭壇に現れた。


宵闇よいやみ、アキコクから念玉を貰っているだろう? これは同じものだ。これからその玉に念を込めるんだ。そして白帝はくていに持たせろ』

「承知致しました」


短かったけれど、とても緊張してまだ身体が強張っている。先ほどの声の主はいつも報告をする神様とは違った。誰かは分からないけれど、声だけでも力のある神様だということは分かった。


「……報告も終わったし、アキコク様の元へいかないと」


私は身体の強張りをほぐすように大きく息を一つ吐いた後、鈍色の玉を懐に仕舞い、本殿ほんでんを後にした。


先に神祇官じんぎかんへ寄ってからアキコク様の元へ向かうことにする。このままアキコク様のところへ行って『宵闇よいやみ様がいません』なんて神祇官じんぎかんの人達に探されたら恥ずかしいもの。


宵闇よいやみ様、おかえりなさい」

「草の実さん、今日の報告は終わったんだけど、私宛に何か連絡が来ていない?」

「今のところはありません」

「わかった。これから私はアキコク様のところへ行くけれど、何かあれば呼びに来て下さい」

「わかりました」


いつもの変わらない小道を抜けてアキコク様の元へと向かう。


ほこらにはアキコク様の姿は見えなかったが、名前を呼ぶとアキコク様はふわりと姿を現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ