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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第一章 神祇官へ

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第二十五話 

「早速だが、長として日々の動きを学んで貰わねばならん。まず、各国の神祇官じんぎかんの長は誰だか知っているな?」

「もちろんです。春の国は春陽しゅんよう様、夏の国は炎陽えんよう様、冬の国は春隣はるとなり様です」


「そうだ。もうすぐ春陽しゅんようは春光と交代することは知っているな?まず春の国に挨拶に向かう。蒼帝そうてい四季殿しきでんにいるため挨拶は出来ないが、春陽しゅんようから話がいくだろう」

春陽しゅんよう様はずっと蒼帝そうてい様の側にいるわけではないのですか?」


四季殿しきでんから得た話を神々に報告することや各国に伝えるために大社おおやしろに戻る時間がある。今なら大社おおやしろに戻っているだろう。あまり時間はない。向かうぞ」

「はい」


番紅花ばんこうか様は大股で歩き始める。後をついていく私も小走りで転移門てんいもんまできた。


番紅花ばんこうか様は転移門てんいもんの装置の前で手をかざすといつものように水面のような膜が浮かび上がり、私達は転移門てんいもんを潜った。


門を通ると、そこは春の国のやしろの前だった。番紅花ばんこうか様はそのまま歩きだす。

神祇官じんぎかんはこっちだ」


春の国の建物自体はさほど秋の国とは変わらないようだが、植えている木々や草花はやはり花が咲き誇り秋の国とはまた一味違って見える。


そういっている間に神祇官じんぎかんへとやってきた私達は受付の人に声を掛けた。


「秋の国の番紅花ばんこうかだ。次の神祇官じんぎかんの長を紹介しに来た。春陽しゅんようはいるか?」

春陽しゅんようですね、少しお待ちください」

すぐに受付の人は春陽しゅんよう様に確認を取り、私達は呼びにきた。彼はちょうど神祇官じんぎかんの奥の間で他の人達に指示を出していたようだ。奥の間へと案内されると、入れ替わるように沢山の人が部屋から出てくる。


春陽しゅんよう様、秋の国の番紅花ばんこうか様と宵闇よいやみ様が参りました」

「通しておくれ」


受付の人の言葉に低い声が返ってきた。間の上座に座っていた春陽しゅんよう様は薄い桜色に黄色味がかかった髪の色をしている妙齢の姿をしていた。名前は知っているが、実際に会ったことがなかったのでとても緊張する。


「久しぶりだな」

春陽しゅんよう、大事ないか?」

「ああ、多少の力は落ちたが問題ない。お前の方が大事だろう。私達のせいですまない」


春陽しゅんよう様は落ち着いた声で話をしている。番紅花ばんこうか様も春陽しゅんよう様も互いの心情を理解しているのか小さく頷きそれ以上言うことはないようだ。


「問題ない。俺には既に跡を継ぐ者がいるからな」

「君が宵闇よいやみか。今回のことで迷惑をかけてすまないな。後処理は大変だと思うが、優秀だと聞いている。これから宜しく頼む」

「ありがとうございます。まだまだ未熟者ではありますが、精一杯頑張ります」

「……番紅花ばんこうか、達者でな」

「……ああ、お前もな」


二人は長い話わけでもなかったが、長年神祇官じんぎかんの長として働いていたから感じるものがあるのだと思う。


そして私達はまた受付のところまで戻り、蒼帝そうてい様の指示を受け取って秋の国に戻った。


「このまま各国へ挨拶に向かおうと思ったが、春の国からの書類がある。一旦神祇官じんぎかんへ戻り、書類を出した後に次の国に向かう」

「わかりました」


番紅花ばんこうか様、宵闇よいやみ様おかえりなさい」

「ああ、今戻った」


番紅花ばんこうか様は短く言うと、書類に目を通し、私に差し出した。


「これからお前がする仕事だ」


私は書類に目を通す。悪しきものがいている場所や果実の花が咲いている場所などが細かく書かれている。


それに従い太政官だじょうかん衛門府えもんふへ指示書を書く必要がある。私は貰った書類を基に指示書を書いていき朱印を押して他の人へ渡していく。そして指示書を受け取り、神祇官じんぎかんの者は各所へ指示書を渡しに出ていく。


番紅花ばんこうか様、指示書はあれで良かったのですか?」

「ああ、全く問題ない。この後、白帝はくてい様と神々への報告に向かう」

「わかりました」


こうして私は番紅花ばんこうか様に日々の仕事を一つひとつ丁寧に教えてもらい、付き添われながら各国への挨拶も済ませることができた。


宵闇よいやみ、日々の仕事は覚えてきたな。次は神祇官じんぎかんの長としての訓練を行っていく」

「はい」


名無ななし様が修行に入られた。我々もゆっくりはしていられない」あおい様が修行に入られたと聞いて私は手に力が入った。私も頑張らないと。


そうして番紅花ばんこうか様がついてこいと歩き始めた。大社おおやしろを出て少し歩いた場所は秋の森になっている。獣道のような細い道がありその道をずんずんとまっすぐ歩いていくと、小さなほこらがあった。


秋の森に小さなほこらがあるなんて知らなかった。

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