第二十四話
「宵闇、今日はこれを渡すためにここに呼んだのです。受け取りなさい」
「これは……?」
「これは四季殿に入るための木札です。木札を持つ者のみが浮島の橋を渡ることが出来るのです。これを首に下げておくように」
「はい。大事にします」
「さあ、番紅花も待っているし、早く行きなさい」
「はい。白帝様、有難う御座います」
私は深く頭を下げ、番紅花様の元に戻った。
「番紅花様、お待たせしました」
「ああ、木札は貰ったか?」
「はい。私、頑張りますね」
「……ああ。頼んだぞ。では本殿に向かう」
「はい」
私は番紅花様の能力が数年後には元に戻ると聞いて安堵していたけれど、番紅花様の表情は厳しいままだった。私は番紅花様の後を付いて本殿に向かった。
本殿の前には既に神祇官の人達が正装し、神事を行う準備が整っているようだった。
「宵闇、これから貴方が私の代わりに毎朝神への報告を行うことになる。いいか?忘れるな。神はいつもお前を見ている」
「は、はいっ」
私達はさっと服を正装に切り替え、本殿の中に入る。本殿の中は空気が張り詰めたような厳かな雰囲気に包まれている。
私は番紅花様の後ろに座った。神祇官の長を交代の儀を行う。番紅花様の祝詞が始まると、神祇官が太鼓を打ち、言の葉を神様へと送る。
終盤に差し掛かろうとした時、社がミシリと音を立て、その場の空気が重みを感じると共に一陣の風が吹いた。
建物の中だというのに私の髪をさらりと撫でるように吹き抜けていく。『頑張りなさい』そう一言風の中から聞こえてきた。
……神様は私が神祇官の長になることを認めて下さったのだ。
「神様、私、これから神祇官の長としてみんなに認めてもらえるように頑張ります。まだまだ至らない点ばかりですが、宜しくお願いします」
私はそう呟いた。これから頑張っていこうと改めて心に誓う。こうして無事に儀式を終え、私は胸を撫でおろした。番紅花様も先ほどまでの厳しい顔も幾分和らいだように思う。
「宵闇、これから厳しい手習いとなるが覚悟は出来ているか?」「神祇官の長の名に恥じぬように頑張ります」




