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神々の遠い記憶を継ぐ者  作者: まるねこ
第一章 神祇官へ

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第十八話

「目的は呪術じゅじゅつ者が我々や神を捕えるためだということ。つまり使役し、人間達のまつりごとの道具としたいがために今回のことが起こった」


「納得いきませんな。我々を捕えるためだとしても規模が大きすぎる。我々四つの国全ての天上人てんじょうじんの協力がなければ人間が滅んでいた。数人の呪術じゅじゅつ者でそこまで出来るとは思えない」


他の人も同じように頷いている。すると番紅花ばんこうか様が口を開いた。


「原因となったのは人間の呪術じゅじゅつを行う者のせいだったのだろう。今回、都にきき出た悪しきものを制御しきれず、我々が駆けつけた時には既にそのものは殺されていた。


自業自得だ。が、背後にそれを利用した“もの”がいる。春の国の衛門府えもんふが調査を初めているが、判明するには時間が掛かるだろう。今、我々が出来ることを話し合うことだ」

「はっ」


番紅花ばんこうか様の言葉に納得し、皆、頭を下げた。そして千日紅せんにちこう様が再び進行する。


「今回の神祇官じんぎかん封印ふういんの玉ができ、三十ほど持ち帰った。玉は白帝はくてい様と名無ななし様で開封し、消滅させる手はずだ。我々はその様子を詳細に記録し、神や各国に報告を上げる。そこから神々からの神託しんたくを受けることになる。何か聞きたいことはあるか?」


私は挙手し、疑問を口にした。


「あのっ、少し、今回の内容と違うのですがいいでしょうか」

「なんだ?」


「今回の出来事で多くの人達が怪我をしました。山吹やまぶき様とあおい様が封印ふういんの玉の処理を終えたら修行に入るそうです。その間に今回のような悪しきもの達が一斉にき始めることはないのでしょうか?」


名無ななし様が修行に入られるのか……」


部屋にいた全ての人たちがざわりとどよめいた。


宵闇よいやみ、今回は一斉に各地で起こったが、各国で協力し、神祇官じんぎかんと帝達が浄化も行っている。当分悪しきもの達がくことは治まっていくだろう」


そうだった。


私はすっかり失念していたけれど、神祇官じんぎかんで働いている人達は場所の浄化や封印ふういん能力がある人達が多いのだ。


衛門府えもんふに所属している武官は火や風などの能力を活かし、瘴気しょうきを焼き、風で吹き消す。


神祇官じんぎかん封印ふういんの玉を作るのに術式を使うが、水などの能力で汚染された場所の浄化をするということもある。私は術式が使えず体内に取り込むという能力のため浄化する能力は持っていない。


「だが、なにもしないわけにはいかない。不測の事態を考え、名無ななし様が修行に入られるのであれば我々も次に襲撃がある事も想定して動かねばならん。まず情報を精査し、武器、人員の強化、神々からの言葉受け次第、動くことにする」


番紅花ばんこうか殿、今回の出来事で多くの者が怪我をしている。白帝はくてい様も神降かみおろしをされたと聞いた。番紅花ばんこうか殿もその場にいて無事では済まなかったのではないか?白帝はくてい様と共にすぐにいやいけに向かったほうがいい」


この中でも一番の年長者の人が苦言を呈するように言うと、番紅花ばんこうか様は「そうだな」と一言だけ呟いた。私は番紅花ばんこうか様が心配になった。やはり怪我をかくししているようだ。


それにしても神降かみおろしをすると周囲にいる者も巻き込まれてしまうのだろうか? 神降かみおろしをすること自体殆どないし、私自身見たことがないのでよくわかっていない。


「詳細は後日知らせる。今日は皆も疲れただろう。ゆっくり休むように」


そう言って話は終わった。


私は今日の報告書を書いていると、番紅花ばんこうか様は衛門府えもんふの武官と話をしてからそのまま神のいやいけに向かわれた。良かった。早く怪我を治して欲しい。


「報告書を書き終わりました」

宵闇よいやみ、お疲れ様! 今日はもう家に帰って休んだほうがいいわ」

「そうですね。いやいけに入ったとはいえ、なんだか疲れました。今日は休みますね。お疲れさまでした」


私はふらふらと自宅へ戻った。家に戻り、腰を下ろした時にふと考えが浮かんできた。


私はこうして休む事ができるけれど、あおい様達は封印ふういんの玉を消滅させるまでずっと働き続けている。そして休む間もなく天津あまつほこらに修行に入られる。


私にできる事はないのかもしれない。


でも、それでも、あおい様が無事に修行を終えることができるように祈り、何かできないかと考える。


そうだ、今なら間に合う。


私は引き出しから取り掛かっていた磨いていたいくつかの玉と糸を取り出し、羽織紐はおりひもを組み始めた。『どうか無事に戻ってこられますように』と強く念じながら丁寧に作業をしていく。


できた!

時間が掛かったけれど、一つの羽織紐はおりひもを作ることができた。安堵し、私はそのまま眠りについた。


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