第九話
901:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)
いや~、竜姫ちゃん。ちょっとくらいDP分けてよ~。もう1億くらいDPたまってるでしょ?
902:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)
蜘蛛男ちゃんにDPあげようかな〜、あげないかな~。ンン~!どっちなんだい!姫ちゃんルーレットスタート!あ~げ~ないっ!
903:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)
あげないんかいっ!姫ちゃん相変わらず異世界のバラエティーすきだね~。
903:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)
あんたらどんだけ暇やねん!
なかやまきんにくんは異世界にも浸透していた。恐るべし、筋肉パワー。とりあえず書き込む。
904:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)
【融資募る!】狂霊の死体袋に融資をご希望の方はいらっしゃいますか?今なら1000DPにつき100DPの利息が付いてきます。融資を受けた日から30日後に必ず返済。しかも6000DP以上融資された方には、5000DP相当の強力なアンデッドモンスターを融資期間中2体までレンタル!皆さま、奮ってご応募ください。
905:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)
お!きたきた!wktk。
906:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)
残念ながらその融資募集は悪手やな。
907:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)
そうじゃな。誰もお主に融資する者はおらんぞ?
908:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)
ねね!なんでなんで?
909:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)
全くお主は…。何年ダンジョンマスターをやっとるんじゃ。よいか、まずあやつの属はアンデッド。アンデッド以外の属からは基本的に嫌われとる。よって10000DPでもアンデッドのモンスターを欲しいと思う者はおらん。
910:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)
そもそもの話、信用がないやん。それにダンジョンバトル中に融資してそいつが負けたら、DPは返ってけぇへん。あたしはもし灼熱の坩堝が同じことしてきたら、あたしは灼熱の坩堝に融資するで。
911:ダンジョンマスター(灼熱の坩堝)
やっぱりお前馬鹿なんだな!俺様も同じ条件で融資を募集するぜ!ただし受け付けるのは50000DPからだ!
912:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)
信用、についての話だが既にヴェルフィアから500000DPの融資を受けている。これを信用としてほしい。
913:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)
へえ…。ヴェルフィアお兄さんが500000DPも融資したのか。それだけ見込みのあるダンジョンマスターかそれとも本気で覇高の水瓶を潰す気か。
914:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)
どっちもだね。まあなぜだか詐欺にあった気分だが。
915:ダンジョンマスター(覇高の水瓶)
僕は灼熱の坩堝に600000DP融資する。
916:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)
!?
917:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)
ヴェルちゃんから追加融資はないの?
918:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)
ないよ。
919:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)
良いのか?このままだとワシらは灼熱の坩堝に融資するが…。
920:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)
元々、そういう契約だからね。500000DPで彼らなら勝てると僕は評価した。
921:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)
じゃあ、ファイナルジャッジメントターイム!虎たちの決断は如何に!?
922:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)
灼熱の坩堝に200000DP。モンスターは要らん。
923:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)
同じ条件で灼熱の坩堝に200000DP。どうやら狂霊の死体袋は自分で自分の首を絞めたようやな。
925:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)
狂霊の死体袋に100000DP。
926:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)
私からは当然ナッシング。ということで良いかな?
927:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)
雨蜘蛛の巣窟は相変わらず逆張りが好きじゃな。しかも不気味にそれで当たるんが不思議じゃ。
927:ダンジョンマスター(粘性の気球)
…。待って、6000DP出す。融資させて。
928:ダンジョンマスター(亜人の背嚢)
私も!6000DP。
929:ダンジョンマスター(犬革の靴底)
6000DP。
930:ダンジョンマスター(空洞の土人形)
6000DP。
931:ダンジョンマスター(翼姉妹の踊り場)
6000DP!
932:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)
あちゃー。こうなったらもう終いや。1人につき4000DPの損失。このミスはでかいで。これは善意で言わせてもらうけど、融資は断っとき。
933:ダンジョンマスター(妖精たちの樹洞)
6000DPで10000DP分のモンスターがもらえるナラ。
934:ダンジョンマスター(騎士の衣袋)
6000DP。
935:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)
上から1人ずつ順番に対応させていただきますのでもう少々お待ちください。現在のDPが6000未満の方もうちのモンスターで稼いだDPによる融資を受け付けています。どうぞお気軽にお声がけください。
936:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)
あんた、正気?ヴェルフィアはん。どないなってんのこれ?
937:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)
僕はもう知らない。
938:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)
えぇ!?
939:ダンジョンマスター(覇高の水瓶)
どうやら勝負を投げたみたいだね。狂霊の死体袋、サレンダーするなら命だけは残してやる。
940:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)
上等だ。水野郎。俺が勝ったら、お前をウォシュレットにして、ヴェルフィア兄さんの尻を舐めさせてやる。
941:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)
下品なたとえに僕を使うのはやめてくれないか?
942:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)
…。
俺は捨て台詞を吐いて、掲示板から抜けた。ここからは大忙しだ。1人1人と話をつけないといけない。
「よしっ!クロノス、超特急であれをやるぞ!」
「きたぁぁぁ!」
「キューブ!デッドスカル(500DP)を1000体召喚だ!」
デッドスカル(500DP)を1000体召喚します。
20720DP
≪【裏チュートリアル3】デッドスカル召喚数が累計1000体を超えました。百骸(5000DP)を2500DPで召喚できます≫
「きたな!よし!クロノス、喜んでいるところ悪いが、キューブを使って超特急で粘液属、スライムについての情報をまとめてくれ。後は俺がやる」
「ええー!しょうがないなぁ!」
「キューブ!デッドスカルをリターン!」
デッドスカル(500DP)を1000体リターンします
520720DP
「百骸(2500DP)を2体召喚!」
百骸(2500DP)を2体召喚します。
515720DP
百骸はその名の通りドクロが百体積み重なったモンスターだ。闇のオーラが足元から出ている。強そう。
「キューブ!権限をレベル2に!」
ちなみに権限はレベル1で10000DP、レベル2で100000DP、レベル3で1000000DPだ。
権限をレベル2に拡張しました。新しい裏チュートリアルが解放されます。
415720DP
何の通知もないが、これで権限は拡張された。【裏チュートリアル】は言ってしまえばチートだ。この情報を制したものが、この勝負を制す…のかもしれない。
俺は一人一人、掲示板でアポイントメントを取っていく。もちろん一番最初は、蜘蛛男さんだ。この人はヴェルフィア兄さんを詐欺った人で中々抜け目がなさそうだが、果たして…。
「キューブ!雨蜘蛛の巣窟にダイレクトメッセージを!」
雨蜘蛛の巣窟にダイレクトメッセージの申し出をします
ブン!
「はやっ!」
蜘蛛男さんは名前通り巨大な蜘蛛だった。蜘蛛男さんは俺の顔を見て驚く。
「あんたがダンジョンマスターかい?そこのちっちゃいリリスじゃなくて」
「ああ、そうだ。やっぱりサルがダンジョンマスターだと融資しないか?」
「とんでもない。逆に納得したよ。俺も前世は人間だしな。今はジャイアントキングスパイダー(7500DP)をやってる。よろしくな。人間」
どうやらこの世界には前世持ちもいるらしい。結構気さくな感じだったので俺としてはありがたい。
「ちなみに逆に納得したとは?」
「いや、俺と同じ考えの奴がいるなら人間くらいだろうなと思ってただけだ」
どうやらこちらの考えはお見通しらしい。伊達にヴェルフィア兄さんを詐欺ってるだけある。
「ちなみになんで融資してくれたんだ?普通なら静観すると思うんだが、利息分のDPが欲しかったのか?」
「そんなちゃちなものいらないさ。融資した理由だが、まあなんとなくあんたのやりたいことがわかったからっていうのもある。けどあんたの顔を見ておきたかったっていうのが一番だな」
「ん?どういうことだ?」
「あー、まあ気にすんな。あんた、これから融資の相談を周りに行くんだろ?人間であることは隠さない方がいい。そっちのほうが返ってイカレてるように見えるからな」
「貴重なご意見感謝するよ。えっとーーー」
「スパイダーと人間のハーフ、スパイダーマンだ」
果たしてそれは権利的に大丈夫なのだろうか。
「俺は【魔王】築地慎吾。主人のリリスは魔神クロノス」
「100000DPだったよな。利息は1割ダンジョンバトル終了後に回収でよろしく。その後は8400DPずつ月々返済でいいな。大した情報は出せないけど、ツキジシンゴの作戦はきっとうまく行くよ。そんじゃあな」
狂霊の死体袋に100000DPを譲渡しますか?
YES/NO
「イエ~ス」
雨蜘蛛の巣窟から100000DPの譲渡を受けますか?
YES/NO
「イエス」
515720DP
DPだけ渡すと親愛なる隣人はあっけなく帰った。さてさて、ここからは前職の経験が生かされるぞ。その前にクロノスのためにダンジョンを整備してと、おっと、そこにカイトが現れた。気づけば、村を制圧してから1日が過ぎていた。経営の相談だろうか。動き出しが早いのは良いことだ。
「キューブ!カイトを招き入れてくれ!」
カイトをダンジョンマスター部屋に転移させました
「うお!びっくりした!これもダンジョンの力か…」
「ようこそ、カイト。早速だが、何を聞きに来た?」
「いきなりだな。まああんたも忙しいんだろう。手短に話すぜ。今、うちには大体120人の人手がある。冒険者は1日12人現れて、半分は死ぬ。とりあえずのベッドは足りているが、もっと人を増やしたい。村人全員で街に行ってビラ配りするわけにもいかない。どうすればいい?」
俺は少し考える。
「村に訪れる冒険者が増える=ダンジョンの知名度があがる、だ。カイトはどうすればダンジョンの知名度が上がると思う?」
カイトは腕を組み考えるそぶりをする。
「人を殺しまくるとかか?」
「それは無しだ。これ以上悪評を広めてもしょうがないし、殺せば殺すほど口コミが減る」
「じゃあ、どうすれば知名度はあがるんだ?」
「簡単な方法は顧客に合ったダンジョンを造り、満足度をあげること。今やってることだな。それ以外の数ある中で1つの方法は知名度のある人に宣伝してもらうこと。例えば高位冒険者は人口の1%しかいない。それほどの強者ならある程度の影響力はあるだろう」
いわゆるインフルエンサーマーケティングだ。現代のSNSのような爆発力はないが、それでも街のベスト100の強さを持つ彼らは冒険者たちの羨望の的だろう。問題はコネがあるかだが、うちの優秀なズアイガニが金に汚い権力者のピックアップはしてある。80位くらいの高位冒険者ならアポは取ってくれるだろう。
「その手があったか…」
「あと使えそうな知識は紙に書いて渡す。ズアイとの連絡方法もな。後は馬車の増やし方とかはマストだからしっかり見てくれ」
文字は全く知らないのにすらすら書けた。よくわからんところでチートだ。
「他にはあるか?言わなくてもわかると思うが、お前の働き次第でーーー」
「分かってる。俺はもう既にこの手を血で染めている。このダンジョンを潰すためにな」
「…そうか。俺の予想だと勝負は1か月でつく。悔いのないようにな」
カイトはそれを聞いて笑う。
「はっ!せいぜいあぐら掻いてろ」
そういってカイトは村に帰っていった。カイトの働き次第でダンジョンバトルの結果も左右されるかもしれない。
カイトの村を守る力が、ダンジョンを憎悪する力が、大きければ大きいほど、冒険者は増え、地獄に落ちる冒険者も増える。カイトの魂はどんどん血で染まる。だがそれでいい。詰んだ屍こそが街の兵隊を動かす力になる。カイトよ。俺を憎め。それすらも平らげて俺は魔王になる。
カイトが去り、1日20人を呼ぶダンジョンを思い浮かべる。西にあるシラカバ村から1日2人、冒険者が来てくれたら、東のブナ村は1日18人冒険者を呼んでくれれば十分だ。
「ちょっと!ボーっとしてる時間ないんじゃないの?」
クロノスが俺を揺らす。そうだったやることは山積していた。とりあえず今からクロノスが管理しやすいようにダンジョンを整備する。
配置構成はこんな感じだ。
地上 スカルフライ、ゾンビ、スケルトン 平均400未満DP
1階層 ハイゾンビ、深紅のスパルタン、サムライゾンビ、グール、ゾンビエリート、ヴィイ、黒霊騎士、スカルアヴェンジャー 平均1184DP
2階層 デスナイト、百骸 平均5000DP
3階層 リッチ 平均10000DP
「クロノス、基本は2階層の補充をメインにしてくれ。ボス・ウィプスの召喚は怠ることがないように。上手いことやって、2階層の平均DPが1300になるようにしてくれ。後、5000DPで召喚できそうなモンスターもいたらそいつも追加で」
「ブラジャー!」
「それ、やめなさい」
クロノスは頷いた。
「とにかく、俺は粘性の気球さんと話す。粘液属、スライムの資料はできたか?」
「もちんちんろん」
「それもやめなさい」
クロノスは俺に紙の束を渡した。この短時間で知りたい事がきれいにまとまっている。やはり、クロノスはできる子なのだ。
「サンキュー、クロノス。キューブ!粘性の気球にダイレクトメッセージだ!」
粘性の気球にダイレクトメッセージの申し出をします
ここから先はいきなりダンジョンバトルに飛ばせてもらう。こっちも必死でやってきたから1ヶ月は体感で言うと一瞬だった。sideは灼熱の坩堝ダンジョンマスター、カザンにバトンタッチだ。
side 灼熱の坩堝ダンジョンマスター、カザン
ついにこの日がやってきた。今日は俺様のダンジョンの復興記念日となるだろう。俺は生意気なあのくそ新人、狂霊の死体袋を狩って、覇高の水瓶からダンジョンを取り戻す!
今思い返せば、ダンジョン経営は理不尽だらけだった。ついていないことに俺のダンジョンはカエサル帝国の帝都の近くに出現してしまい、帝国民に尻の毛までむしられるほど、散々に利用された。
だが、それもなんとか跳ね返し、10000DPで権限を拡張したら、待ってましたと言わんばかりの覇高の水瓶にダンジョンバトルを仕掛けられ、負けて、生殺与奪の権まで握られてしまった。
ドレイクキングのこの俺様がなぜこんな目に合わなくちゃならんのだ。俺は憤怒の色に染まり、モンスターに八つ当たりしたりもした。それでも状況は何も変わらなかった。
覇高の水瓶からは融資という名の強制的な借金を押し付けられ、首が回らなくなり、教えてもらった【裏チュートリアル】をなんとか達成して食いつないできた。侵入者も段々モンスターだけ倒して帰ることが多くなり、他に融資を求めても冷酷に断られた。そして赤字は嵩んでいった。
膨らみに膨らんだ覇高の水瓶からの借金は利息込みで100000DP。もはや、目も当てられない状況でも神様は俺のことを見捨てていなかった。
俺は1か月前を思い出す。俺は月間召喚DPランキングをつぶさに見ていた。新しく権限を拡張したダンジョンは上位に名を連ねることが多い。その中でも、火属性に弱い奴にダンジョンバトルを仕掛けて、そいつからすべてをむしり取る。俺が覇高の水瓶からそうされたように。
「こいつも違う…。こいつも違う…」
弱いダンジョンを倒しても、100000DPは返せない。かといって確実に勝てるダンジョンじゃないと、ここからさらに転落してしまう。いや、転落どころじゃない。負けたら次はもうそこで終わりだろう。
1つめぼしいダンジョンがあった。まだ、権限を拡張していないのか掲示板にも出てないダンジョンだが、急激なペースでランキングを駆け上がるダンジョンが1つあった。
「わくわく・デスダンジョン・パーク…?」
ふざけた名前だがそいつは本当に1か月近くで権限を拡張した。
410:ダンジョンマスター(わくわく・デスダンジョン・パーク)
よろしくお願いします。
411:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)
…なんか凄いのきたね。
こいつの属性はなんだ。俺が尋ねようとするとヴェルフィアがさも当然と言った様子で属性を尋ねた。人からばらされることはあっても自分から属性を打ち明けた奴なんていない。蝙蝠野郎め。今はナイスプレーだとほめてやろう。
「こい…。こい…」
竜は無理だが、アンデッドなら…。
427:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)
アンデッドです。ちなみに少し空気が悪い気がするのは気のせいでしょうか。
「きたぁ!」
俺は思わず立ち上がる。
森賢人の猪口が狂霊の死体袋の経営を考察するが詰めが甘い。どう考えてもこのペースでの成長はジェノサイドがかかわっていることは確実だ。
俺はダンジョンバトルを申し込む。頼む!もう後がないんだ!
「こい!」
≪ダンジョンバトルの申し出が受け入れられました。【狂霊の死体袋】対【灼熱の坩堝】のバトルは一か月後に行われます。全ダンジョンは当該ダンジョンに二か月間、ダンジョンバトルを申し込むことはできません≫
「馬鹿め!」
まんまと狂霊の死体袋は罠にはまった。そこからの動きも向こうはド素人当然だった。何もしていないのに追加で融資を400000DPも貰えた。俺はもう笑いを止められなかった。
手元には合計で1000000DPがある。相手の属性は有利相性。この状況でどうやって負けろというのだろうか。
俺は迷わずフェニックス(10000DP)を100体召喚した。本当はドレイクを増やしたいが背に腹は代えられない。そして今日、俺の総戦力は1200000を突破した。本当は増やしたフェニックス(10000DP)でもっと人を殺す予定だったが、なぜか街の兵隊や冒険者は俺のダンジョンを避けるようになった。
だが、今となってはそれも些細なことだ。俺は最終確認として月間召喚DPランキングを確認した。
1位 灼熱の坩堝 1219000DP
2位 竜眠の箱舟 1088900DP
3位 狂霊の死体袋 625800DP
4位 薔薇と血棺 405000DP
5位 幻獣の玄園 370732DP
6位 覇高の水瓶 330900DP
7位 森賢人の猪口 280080DP
8位 雨蜘蛛の巣窟 252010DP
9位 粘性の気球 249000DP
「ははは!俺様が1位だ!」
狂霊の死体袋も625800DPと健闘したようだが、その差は歴然だ。2倍近くの戦力を持ってアンデッドを焼き尽くす!それを想像しただけで俺は今にも燃え尽きてしまいそうだった。
そして、その想像は今、現実に変わる。
≪ダンジョンバトル3分前です。相手ダンジョンマスターに3分間の接続をします。ダンジョンバトル中の間、モンスターは追加召喚できません。ダンジョンバトル中はモンスター本来のDPが通知され、実際に獲得するDPとは異なります≫
ブンと音が鳴ってホログラムが投射された。相手はなにやら考え込んでいる
「うーん。これだと計算が合わないな」
「おい!」
相手のダンジョンマスターは椅子からひっくり返る。相手は人間…なのか?
「うお!びっくりした…。キューブ!って今日ダンジョンバトルの日だったのか。やばい、やばい。モンスターはこれとこれとこれでいいかな」
俺には相手の思惑が見え透いていた。
「つまらんサル芝居はやめろ。余裕ぶったって戦力の差は歴然だ」
「戦力の差は歴然か…。確かにそうだな」
「なんだ?今更降伏しても遅いぞ」
「ははっ!それはこっちのセリフだ」
「お前に勝ったらそうだな…。サルのお前はペットにして俺がお前のダンジョンを管理してやる。俺が正しいダンジョン経営を教えてやろう」
人間はなぜか不敵な笑みを浮かべている。
「その際はぜひともご教授頂きたい。じゃ、始めるぞ」
「宣言しておく!この勝負は10分で終わらしてやるからな!」
≪ダンジョンバトルスタート!≫
「いけ!フェニックス(10000DP)相手のダンジョンのすべてを燃やし尽くせ!」
俺は25体のフェニックスを送り込む。相手のダンジョンの属性は属がアンデッドなので死属性。そしてアンデッド属は火属性に弱い。弱点属性を攻撃するとき、モンスターの戦力上のDPは1.2倍になる。人間はこんなことも知らないだろうな。
それに対して俺のドレイク属は火属性に適していて、水属性に弱い。圧倒的なDPの差、属性の差、サルとの知能の差をとっても負ける要素はない。
だが、おかしい。そろそろ相手モンスターを殺したログが出てくるはずだが…。ダンジョンバトルは相手のモンスターを倒すことでその分のDPを貰うことができる。なのでそろそろ通知が来るはずだ。
ピコン!
「来た!殺戮の始まりだ!」
≪砂塵のハーピークイーン(10000DP)を倒しました≫
≪水盾の騎士王(10000DP)を倒しました≫
俺はその通知に強烈な違和感を感じる。
「ん?なんだこの通知?」
相手の属はアンデッドのはず…。なのにハーピークイーンと騎士王?…そうか!アンデッドをすべてリターンしてハーピーとナイトを育成したのか!サルはサルなりに考えているようだが、それでは【裏チュートリアル9】が使えない。俺は【裏チュートリアル10】も併せて10%の戦力アップだが、向こうは素の戦力のまま。さらにDPは半減している!
「さっさと終わらせろ!フェニックス!」
≪Sランクサンドゴーレム(10000DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪疾風のケルベロス(8250DP)を倒しました≫
「待てよ!待てよ!おかしいだろ!」
なんだこれは!キューブがバグっているとしか思えない!ドレイク属の最終進化であるドラゴンドレイク(10000DP)に達するまで150000DPは必要だ。これを他の種族に当てはめるとしたらハーピー、ナイト、ゴーレム、ハウンド、スライム、合計で750000DPが必要になる。いや、スライムは1DPだから【裏チュートリアル3】を使えるはずか。
くそっ!計算が煩わしい!だが、確実に異変が起きていることは確かだ。
「おい!キューブ!なにかおかしくないか!?」
キューブに問いかけてもキューブはうんともすんとも言わない。
≪光輝のフェアリー(10000DP)を倒しました≫
≪聖なるサイクロプス(10000DP)を倒しました≫
訳の分からない通知だけが増えていく。それでも俺には100体のフェニックスがいた。負ける気はさらさらなかった。その時俺の頭に閃きが走る。
「レンタルモンスターだ…!レンタルモンスターならこのバリエーションも納得できる!」
俺も幻獣の玄園にレンタルモンスターをねだったが、派遣まではしてくれなかった。覇高の水瓶も森賢人の猪口も属性の相性が悪くて貸してくれなかった。他のダンジョンからモンスターをレンタルするとしても、このレベルのモンスターをポンと貸せるダンジョンなんてランキング10位以内じゃないとおかしい。
「キューブ!ランキングを!」
1位 灼熱の坩堝 1219000DP
2位 竜眠の箱舟 1088900DP
3位 狂霊の死体袋 625800DP
4位 薔薇と血棺 405000DP
5位 幻獣の玄園 370732DP
6位 覇高の水瓶 330900DP
7位 森賢人の猪口 280080DP
8位 雨蜘蛛の巣窟 252010DP
9位 粘性の気球 249000DP
10位 巨人の胃袋 238000DP
11位 人狼の口腔 237000DP
12位 騎士の仮面 233000DP
13位 青蛇の毒沼 231000DP
14位 妖精たちの樹洞 229000DP
15位 翼姉妹の踊り場 222000DP
16位 空洞の土人 221000DP
17位 犬革の靴底 219000DP
18位 亜人の背嚢 218000DP
19位 蜜牢の花弁 189873DP
20位 草原とグラスホッパー 138000DP
「なんじゃこりゃあ!」
素っ頓狂な声が出た。いきなりランキングが滅茶苦茶になっている。10ダンジョンが謎の急成長でランキング上位に食い込んでいた。どのダンジョンも見覚えがある。確かどれも消滅しかけな弱小ダンジョンだったはず!
「それが…。どうしてこんな急成長をしているんだ…?これはまるで狂霊の死体袋のような…」
俺はその瞬間猛烈に嫌な予感に襲われた。掲示板の履歴をさかのぼる。やはりこれは…。
「すべてあの融資の話にのった奴らだ」
ダンジョンマスター部屋にキューブの通知が虚ろに響く。
「でも、大丈夫だ!落ち着け…。今は決着の前でナーバスになっているだけだ。これとダンジョンバトルはきっと関係ない。それに俺には1000000DPがある」
≪砂塵のハーピークイーン(10000DP)を倒しました≫
≪邪悪なゴブリンロード(10000DP)を倒しました≫
≪Sランクサンドゴーレム(10000DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
その通知を最期にダンジョンマスター部屋から音が消えた。そしてダンジョンに侵入してきたのは敵のモンスター達だった。
「フェニックス!殲滅しろ!」
俺は反射的にそう怒鳴った。フェニックスが上空から火の玉を浴びせる。集中砲火だ!のこのこと俺様のダンジョンに足を入れたことを後悔させてやる!【裏チュートリアル10】の効果が乗って火の玉は灼熱地獄を生み出した。
「フハッ!これが俺様の!750000DPの力だぁ!」
炎は相手モンスターを溶かしきる…かのように見えた。
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
≪水スライムキング(7500DP)を倒しました≫
流れてくる通知は水スライムキング(7500DP)のみ、水スライムキング(7500DP)が炎を、俺の炎を消していく。高熱でできた水蒸気が晴れる。
現れたのは光輝のフェアリーキング(10000DP)を肩に乗せた巨大な聖なるサイクロプス(10000DP)。光輝のフェアリーキングに操られ、味方を潰さず、敵だけ踏みつぶして、侵攻してくる。
両手に水スライムキング(7500DP)を抱えたSランクサンドゴーレム(10000DP)は空を飛ぶフェニックス(10000DP)に水スライムキング(7500DP)を投げ当て撃墜していった。
砂塵のハーピークイーン(10000DP)は血涙の大狼(10000DP)を空まで運び、フェニックス(10000DP)を切り刻む。
水スライムキング(7500DP)に乗り、水盾の騎士王(10000DP)が地に落ちたフェニックスを(10000DP)蹴散らす。
疾風のケルベロス(8250DP)に乗り、リバーサイドゴブリンロード(9000DP)が縦横無尽に俺のダンジョンを駆け巡る。
フェニックスは見る見るうちに数を減らしていった。俺にはもうこれが現実だとは思えなかった。違う属のモンスターが協力して俺のダンジョンを荒らしまわるなんて悪夢のほかに考えられない。そして俺の燃え盛る1000000DPは狂霊の死体袋に鎮火された。俺のボスであるカグツチ(10000DP)はあっさりと聖なるサイクロプス(10000DP)に踏みつぶされた。
≪灼熱の坩堝のボスが倒されました。狂霊の死体袋の勝利です。すべての権利が狂霊の死体袋のダンジョンに移ります≫
「おっ!ここはやっぱり暑いな」
「そうだね!慎吾!あれ、あの打ちひしがれてるのダンジョンマスターじゃない?」
そして狂霊の死体袋が俺に最後の審判を渡しに来た。
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