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築地慎吾による邪悪なダンジョン経営  作者: サムライソード
第一章
19/20

第十九話

side 築地慎吾


共存共栄を貪る。それをテーマに我がダンジョンは大きくなっていった。生態系という巨大なシナジーを前にして俺に出来たのは微々たる変化を与えることだけだったが、ミリス神聖国に足を踏み入れてから決戦まで残り一週間という区切りを迎えることができた。少しずつ振り返っていこう。


三日目~七日目


侵入者も基本的にそこまで深く入り込んでこなかったから、ダンジョン内部の取りまとめに奔走した。モンスターを亜人科、魔獣科、自然科、合成科に分ける。属で考えると百を超えていたからだ。亜人科のうち一階層を牛耳っているのはやはり、ファンタジーのど定番ゴブリンだ。


ゴブリンビースト、阿修羅ゴブリンを筆頭に今ゴブリンが熱い。俺調べによると最も合成されたモンスターであることは間違いない。その高い繁殖力と人間の代わりに使える素体としてのポテンシャル。とりあえず新種の術式が見つかったら、ゴブリンに合成している。


ゴブリンの食料は森で十分補われている。他の種は基本ゴブリンを餌にしている。ハウンド種などはオルトロス、ケルベロスなどに進化して、様々なモンスターに汎用術式として”双頭””三つ首”が合成されている。双頭のオーガ、双頭のゴブリン、ダブルデスワームなど頭が一つ増えるだけで戦力が跳ね上がるモンスターもいる。


一階層は合成実験場だ。その中で厳選されたエリートを三階層に集めた。ちなみに「冒険者になろう!」作戦は合計で二回行われた。ケイを捕獲するためと各国からのVIPをもてなすためだ。七日目まではVIPをのぞいてかなりローカルな冒険者が多かった。


七日目~十四日目


ここらへんからチラホラ二階層に降りてくる冒険者が増えた。二階層はセイレーンのナハが主に担当している。その大きさは一階層のおよそ5倍。深さも段違いだ。三階層は少数精鋭なので、このダンジョンの断面図を見たら、二階層が地下の大半を占めることに気がつくだろう。湖にも当然生態系があって、淡水魚も海水魚も関係なく異世界パワーで共生している。


冒険者は器用に泳ぎながら戦闘し水棲魔物を狩っている。基本冒険者は高位になるほど人間を辞めていくので、平気で一時間くらいは息継ぎなしで探索する奴もいる。


ついでだから水棲魔物について紹介しよう。そもそも水棲魔物は地上に放ったメガアシッドクラウドが近くの海を強引に吸い上げて、その際に一緒にお引越しさせた魔物だ。水の中にも瘴気は存在しているのでメガアシッドクラウドに魔晶石を持たせたら一石二鳥だった。こんな強引なことをしたから近くでは水不足に悩むだろうと想定していたが、ミリス神聖国は水が豊かなようで大したダメージにはならなかった。


さて、水棲魔物と言ったらこいつ。クラーケンを一番最初に紹介する。こいつはでかすぎてメガアシッドクラウドが5体くらい協力することによって拉致できた魔物だ。海の底に陣取り、気まぐれで人間を襲っている。


次にジャイアントタートル。こいつは近くの海藻や鉱石を食って、甲羅を固くするモンスターだが、魔晶石を好んで食べるようになり、今では泳ぐ魔晶石となっている。戦闘になると持久戦を強いられるため、冒険者が歯がみするモンスターの筆頭だ。


あとはイール種、シャーク種、シーキャット種等々、様々な種がいて珍しい術式のモンスターは個体数を管理して合成に使っている。例えばイール種のエレキイールは”帯電”の術式を持っている。簡単に言えば電気ナマズだが、これをゴブリンに合成するとエレキゴブリンが生まれ雷を操るゴブリンが生まれる。強そうに見えるかもしれないが実際めっちゃ強い。


ちなみに雷の精霊とゴブリンを合成してもできそうだが、この場合は術式が”放電”だから雷に対する耐性がなく、自分の雷に焼かれて死ぬゴブリンが生まれるだけだった。


ここで、この水棲魔物たちを見て、どうやってジル・レイス領を侵攻するのか疑問に思った方もいるだろう。それに関してはきっちりプランがあるのでお楽しみにしててくれ。


十四日目~二十一日目


ここらへんからダンジョンが本格始動し始めた。一日に15人ほどの冒険者が訪れて、半数は死に、半数は生き残った。各国から派遣された精鋭たちが競ってダンジョンに潜る。ケニーのコネのおかげにしてはすごいと思ったが、そこはさすがにジル・レイスが手を回してくれていたらしい。カエサル帝国、スコッティ連合国、マイカ魔法大国、プルル王国から続々と援軍にかこつけて新しい資源を求めに来た。すべての援軍を合わせるとどうやら毎月240人近く来るらしく、そのうち100人くらいが高位冒険者だ。


魔神教も鍛錬のためにダンジョンに通わせているので、キャンプ地で小派閥程度の存在感はある。プルル王国は月光の勇者ルナが長に、スコッティ連合国はライナー中将が長、マイカ魔法大国は沈黙の紺碧が長になり、攻略を進めている。今のところ最有力なのは二階層をパスできるマイカ魔法大国だろうか。


しかし最近では海底に潜り込んだモンスターが沈黙の紺碧を阻んでいる。ショートカットは許しまへんで。


そして比較的こじんまりとしていて日の目の当たらなかった三階層だが、ついに稼働し始めた。三階層は「ぼくのかんがえたさいきょうのもんすたー」シリーズだ。オーガキング(9000DP)に先ほどのエレキイールの”帯電”を合成すると、雷を司る神、トールの完成だ。ケルベロス(5500DP)に地獄の鎖使いの”操鎖”を合成すると神話の巨狼、フェンリルだ。


今回の街堕としで重要になるのは如何にこういった既存のモンスターで強いモンスターを作れるかだ。冒険者を招いて瘴気(DP)を稼いだところでよくて500000DP、街堕としには2000000DPはいる。最初に集めた1000000DPと合わせても1500000DPしかない。


この差(500000DP)を埋めるためには集めてきたモンスターで強力なモンスターを作り、アドバンテージを得るしかない。そのことを配下とジル・レイスに伝え、二十一日目、一度会議をした。


会議の参加者は我らがダンジョンのボス、ヘパイストス。セイレーンの術式を得た元姫、ナハ。そして今はまだお客様扱いの領主、ジル・レイス。本当はここにクロノスも入れるつもりだったが、電話しても出なかった。完全に無視されている。これはかなりまずい。だがこの問題は断腸の思いで一旦置いておき、会議を進めなければならない。


「今日はダンジョン全体の強化のために、モンスター合成のアイデアを募る」


『ちょっとまって。一応僕はまだそっちに加入してないんだけど』


「でも、この会議に呼ばなかったら、すねるだろ?」


『すねはしないけど、なんでなんだろうとは思うかもね』


「…まあそういうわけだ。今回はこの4人で街を落とすのに主力となるモンスターを合成していく」


「…ナハ。意見ある。合成したモンスターでトーナメントを開く。優勝者には金一封渡す」


ヘパイストスがナハの頭を叩いた。


「バーカ。俺の一人勝ちだっちゅうの」


ナハがいじけた顔で言う。


「…ヘバ兄は殿堂入りしてるもん」 


『慎吾殿。街を堕とす用の戦力が欲しいんだろ?なら話は簡単だ。モンスターを大きくしよう』


ジル・レイスの発言に同意する。


「今現在、ミリス神聖国にておとぎ話になっている魔獣について調査をしている。伝承によっては湖を一つを呑み込めるほどの大きさらしい。それほどのモンスターを仲間にできれば戦力になるだろう」


『簡単に言ってるけど、君ね。相手は神話級のモンスターだよ。そう簡単に仲間になるとは思えないね』


「ああ、だからプランBとしてお前が言った通り、巨大モンスタ―を作るっていうのはありだ」


「マスター。でもモンスターを巨大化させる術式なんてトロールの”肥満”くらいだぞ」


「うーむ。そうだな。どうしたものか…」


議論が行き詰まりかけたその時、ナハが物音に耳をそばだてた。


「…聞こえる。声が。…聞こえる」


ナハが覚醒前の主人公みたいなことを言いだした。


俺はナハの拾った声の発生源を探すと、そこにはPPAPキメラがあった。相変わらずただの肉塊でグロイだけだが、よく見るとわずかに左右に揺れている。頭らしきものが二つあり、そこには口のようなものがついていた。


ヘパイストスが驚愕する。


「嘘だろ。ナハ、このキメラ生きてるのか?」


「どうやら、そうらしいな。しかも術式が二つ、”吸血”と”双頭”がついている」


『ふーん。こいつに3個目の術式を付与したらどうなるんだろうね』


「試して見るか。ヘパイストス、トロールを」


「りょーかい」


トロールとPPAPを合成魔方陣に乗せて合成する。トロールは消え、キメラに”肥満”の術式が付与される。試しにゴブリンをやるとみるみる大きくなった。


「これは…。キメラと言えば触手だろう。テンタクルズを呼んでくれ」


『待ちたまえ、ある程度方向性を決めてからじゃないと、本当にただのキメラになってしまうぞ』


ヘパイストスが手を挙げた。


「俺にあてがある。ヒュドラを作るのはどうだ?神話級のモンスターだけど、上手くキメラを調整すれば実現可能なはずだ」


「良い案だ。ヘパイストス、その方向性で行ってみよう。ヒュドラと言えば炎のイメージだが炎を操るモンスターなんていたか?」


『伝承によればヒュドラは9つの首を持ち、頭から炎のブレスを吐いているようだ。身体と離れたところで炎を吐くなら、火の精霊の”発火”でも十分だろう』


「…あと一週間しかないから巨大ネズミの”暴食”も加えて早く大きくしないと」


「自重でつぶれないように骨の調整をしないといけないな。軽くて丈夫な骨と言えばスケルトンの”骨”が利用できるかもしれない。大きさの目安は街の外壁から首が出る大きさだ」


『自重のことを考えるなら体内に精霊魔法陣を組み込んで、風の精霊シルフィードが出すガスで体重をコントロールするのはどうだろう』


「風船みたいにするってことか?確かにそれならブレスの威力も上がるし、体温の調節もできそうだ」


「スカスカで簡単に倒されては意味がない。何か防御手段が必要だ」


「…魔魚鱗の鱗は水生生物の中で最も硬い。しかも薄くて軽い」


『移動は?のしのし歩かせてたら日が暮れるよ』


「空を飛ぶ一択だ。ハーピーの”風翼”を使おう。同時にシルフィードで空中制御のサポートを行う」


『いいじゃんいいじゃん!規格外なモンスターが生まれそうだよ!』


会議は白熱し、使う術式がとんとん拍子に決まった。


”肥満”

”発火”

”暴食”

”骨”

”魔鱗”

”風翼” 

”三つ首”

”三つ首” 

”三つ首”

”操縦”

”猛毒”

”反射”

”石化”

”再生”

”分裂”

”耐火”


実際に合成してみると術式を重ねるごとに要求される瘴気の量が増えた。1体のキメラに何体も合成すると膨大な量の瘴気を求められたが、6体のキメラを使って合成すると合成回数が抑えられて瘴気削減につながった。最短で4回合成だが、最長で15回合成になる。合成回数がかさむほどコストはかかる。マイクラのエンチャントと同じだ。


使用した瘴気はDPに換算すると80000DP。無料だが、素材もDP換算すると100000DPはかかっただろうか。”三つ首”がDP換算すると5500DPかかるので、9頭じゃなくて3頭にしようという案もあったが、ここはジル・レイスが譲らなかった。


『神話級の魔物だと一目でわかった方が、より絶望を与えられるだろう?』


とのことだ。もう完全にこっち側の人になっているがそれはさておき、ヒュドラは三階層でむしゃむしゃと良質な餌を食べている。もう見上げるほどの大きさになったが、造形は完全にミニヒュドラだ。後一週間ほどで十分な大きさになるだろう。どっかのタイミングで外に出てもらうんだが、引っ越しが大変そうだ。一時的に入り口を可能な限り広げるための計画は立ててある。


そして、狙い通り主力となるモンスターができた。ただ、街1つ堕とすのに超越者10人分の100000DPはやりすぎだ。今後大きくなることを想定すると維持費もかかるし、この規模のダンジョンでようやく一匹管理できるくらいのレベルだろう。冒険者たちから得られたDPを有効活用できているが、依然として500000DPの差を埋めることはできていない。


足りなくなったら足すだけやから、という風に屋台の裏からくじが無限に出てくるような仕組みではない。つまりDPが足されるとかはない。ない以上どこかから引っ張ってこないといけない。


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