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アスタナ、侵攻(ダンジョンマスターモノです)  作者: サムライソード
第一章
13/14

第十三話

オホ森は太陽の光を浴びていて、生命が生き生きと活動していた。生き物たちの鳴き声が遠いところから聞こえて、木々は光を全身で受ける。それが、今日で最後になると知らずに。


「キューブ!フィールド夜(100000DP)を発動!」



フィールド夜(100000DP)を発動しました


1100370DP


「慎吾!さっそく村に行こうよ!」


「そうだな」


狂霊の死体袋の入り口に立つとすっかり夜だった。青い月が満月で、青白い光が木々にしみ込んでいた。フィールド夜の効果は実質支配地を夜にし、そこをダンジョンとして扱う効果。アンデッドにとっては最高の環境だ。ゾンビのうめき声が聞こえる。ゾンビーズもこの1か月で勢力を拡大したらしい。


そういえば1カ月前もこんな感じだったな。あの時は少ない戦力で無理して、村を制圧したっけな。


あの時と今日は違う。カイトは最後の抵抗として高位冒険者(5000DP)を雇い、村を守るだろうが、もはやそんなの関係ない。圧倒的戦力でねじ伏せるのみ。


「キューブ!百骸(5000DP)を60体召喚する!」



百骸(5000DP)を60体召喚します。


950370DP



黒いオーラを纏った骸骨たちが一斉にカタカタと揺れる。じゃあ、サル処刑タイムと行きますか!


百骸が踊り揺れながら夜の森を縫って歩く。それはさながら百鬼夜行のようだった。60体しかいないが。

百骸の背中に乗せてもらい、ハイスピードで夜の森を抜けると、そこには待ち構えている冒険者たちがいた。冒険者をかき分けてカイトが出てきた。


「魔王!【魔王】築地慎吾!何をしに来た!?」


「カイト!ブナ村の長のカイトよ!お前は負けたんだ!大人しく村を明け渡せ!」


冒険者たちは百骸(5000DP)の大群をみてざわつく。それでもカイトは諦めていなかった。


「お前にこの村は渡さない!」


その言葉を皮切りに冒険者100人、高位冒険者10人が雄叫びを上げながら突撃してきた。合計で150000DPほど、対してこちらは2倍の戦力の300000DP。向こうは聖属性の武器で固めているようだ。


冒険者たちの思いは虚しく、決着はすぐについた。15体の百骸を倒されてゲームセットだ。


冒険者はそっくりそのままゾンビエリート(1500DP)になり、231000DPの戦力と150000DPを得た。


カイトが地面にうずくまる。どうやら己の無力さを噛みしめているようだった。


「カイト、顔を上げろ。お前は十分よくやった」


カイトは俺の顔を見上げた。


「商人と交渉して、ポイントで得られる物を値下げして渡す代わりに、街と村を往復する際に冒険者を乗せてもらうこと。他にもダンジョンの情報を村で買い取り共有すること、さらに商人から得た聖属性の武器を格安で売り渡すこと。これらに加えて他にも様々な工夫で冒険者を呼び、殺害率を下げようとしたな」


「こちらも、それに抗い、殺害率を上げさせてもらった。1階層の構造を変えたりしてな、あることを知ってからやめたが」


「まさか超越者を呼ぶとは思わなかったが、そのおかげでブナ村だけで1日18人の来訪者数となった。そしてその代償として、殺害率が抗いようもなく落ちたため、今日サルたちを処刑しに来たのさ。分かるよなカイト。お前の敗因」


「敗因…?」           

                 

「分からないのか。それはつまらないこの村にこだわったことだ。お前ならダンジョンで得られたポイントを元手に1カ月もあれば何倍もの金を稼いで、傭兵なりをやとってダンジョンを潰すことも可能だったはずだ」


「しかし、お前にはその発想が浮かばなかった。村を大きくさせるということに注力しすぎて本来の目的を忘れていたんだ。せっせと道の舗装までして冒険者を呼び込む道を選んだ」


「それはーーー」


「聞け。お前は400人の冒険者を殺した。それでも正気でいられたのは村のためという大義名分があったからだ。そして今、村が潰れてお前に残っているものはなんだ?」


「絶望…。そしてお前に村を奪われた苦しみだけだ!」


「違う。それは知識だ。お前は経営学と言う術を覚えた。それを使ってお前は冒険者を呼び込むという行為に次第に快感を覚えたはずだ。そうやって集めた人がダンジョンに潜るときに興奮したはずだ。そしてお前は村に掲示された死者数を見てエクスタシーを感じたんだ」


「そんなわけない!俺は村を守るために必死だっただけだ!」


「違うぞ。カイト。村を守る自分に酔いしれていただけだ。お前の本性は暗く歪んでいる」


「お前に俺の何が分かる!」


俺はため息をついた。


「村の外れにある使われていない井戸。それだけ言えば分かるな?」


うっとカイトは言葉を詰まらせる。額から汗が滲み、しどろもどろになる。


「それは...」


「密偵はしっかりと仕事をしてくれた。真昼間になるとごそごそと動き出す村長代行の動きをしっかりと観察してたぞ。真昼間は監視の目が緩むと思ったか?出てこい!無駄飯ぐらいこと、元村長の側近!」


ゾンビの集団をかき分けて1人の女が出てきた。


「ハハー!魔王様!私、リンがカイトをしっかりと監視しておりました!」


こいつはカイトの監視役だ。自分でダンジョンに来てカイトの悪行を告発すると、自ら監視役に名乗り出た。ちなみにカイトとは幼馴染だそうだ。


「リン!てめぇ!魔王にチクりやがったな!」


「あんたなんかに村長が務まるわけないじゃない!本来は私が村長なのよ!」


2人は罵り合う。


「仲良いことは、良いことだが話の途中だ。静かに」


2人は視線を落として静かにした。


「カイト、お前は気づいていた。何人冒険者を呼んだところで、このダンジョンは潰せないと。しかし街の兵隊を呼ぶためにはもっと冒険者を呼んで、死体の数を増やさないといけない。でも、冒険者を増やすとダンジョンは成長してしまう」


「これに対する答えは殺害率を下げること。まともな人間なら冒険者の生存率を上げて、ダンジョンにダメージを与えることをまず考える。しかし実際のお前が考えたことは逆だった。殺害率を上げる方針に切り替えたんだ」


「普通にダンジョンでの殺害率を上げると、街の兵隊はすぐ来るかも知れないが、その分ダンジョンは成長してしまう。だから、お前はそれをダンジョン外で行おうと考えた」


「まずはダンジョンでのケガで長期滞在し、宿泊用のベッドを圧迫する冒険者を毒殺した。次にダンジョンのレベルに合わない冒険者を、村のはずれに呼び出し殺した。そして最後に村に残る女子供を殺して空き家を作り、冒険者を増やした」


「リンが把握している限り、この村での行方不明者リストには15人以上の人間が名を連ねている。お前の悪行は冒険者の死体に隠れ、リン以外の人間にはバレなかったようだが、そのリンも街に報告せず、俺に報告する道を選んだ」


リンが嬉々として声を上げる。


「はい!これで私の忠誠を示せたかと存じます!このクズは魔王様の利益にならない殺しを秘密裏に行い、魔王様の信頼を損ねました!私なら村長としてこの村を魔王様のためだけの村にすることができます!その対価としていくばくかのポイントを頂ければ、幸甚に存じます!」


カイトが絞り出すようにして言った。


「頼む…。もう一度チャンスをくれ…。【魔王】築地慎吾。次こそ村を守って見せるから…」


「そうじゃないだろ。カイト、お前は村を守るというシミュレーションゲームをしているだけだ。お前の本質はそこにない」


「違う…。違うんだ…。俺は本当に村を守りたいだけなんだ!」


「俺は人を殺しても何も感じないクズだが、お前の本性はそれよりも腐っている。言ってやろうか?」


「やめろ!やめてくれ!」


「お前は人殺しを楽しむただの殺人鬼だ!」


カイトは絶叫した。その声は暗い暗いオホの森に響き渡り、それを聞いた木々はその身を愉快そうに揺らした。俺は続ける。


「村の為という大義名分を捨てて、これからは自由にしたらいい。リン、次の村長はお前だ。次のニーズは街の兵隊と高位冒険者だ。量より質を意識して対応してくれ」


「承知いたしました」


俺とクロノスはカイトに背を向け、立ち去ろうとする。カイトが縋りつくように言った。


「待ってくれ!」


「なんだ?」


「俺はこれからどうしたらいい…?村がなかったら俺はただの人殺しだ」


俺は三日月のような笑みを浮かべる。カイトに問いかける。


「お前はなにがしたい?」


カイトは頭を掻きむしり、目を血走らせる。浅い息を吐いて、青白い月を見上げた。


「俺は人を殺したい!人を殺すときのあの快感をまた味わいたい!」


月光が祝福するようにカイトに降り注いだ。俺とクロノスは目を見合わせる。


「そんなお前にぴったりな仕事があるんだが…」


そしてカイトは狂霊の死体袋のダンジョンマスターになった。前職の経験を活かして、思う存分殺戮を楽しんでほしい。




掲示板を覗いてみる。掲示板は予想を覆して勝利した狂霊の死体袋への賛否両論が巻き起こっている。


407:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)

うそじゃろ。カザンめ。1000000DPあって負けよった。


408:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

あたしのDP、返せー!


409:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)

すばらしい成果だ。君の実力を疑った僕を許してくれ慎吾君。


410:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

ちょっと!姫ちゃん!これズルちゃうの!?


411:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)

どこがズルなの?


412:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

あんだけ大量のダンジョンからレンタルされたらそらかなわんわ。


413:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)

それなら、あなたも貸してあげればよかったじゃない。


414:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

それはそうやけど…。こんなん誰も予想できへんやろ…。10ダンジョンを1カ月で育て上げて、借りたモンスターでボコボコにするなんて。


415:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)

ユニ。ワシらの負けじゃ。大負けじゃ。あっぱれとしか言いようがないわ。



どうやら、悲喜こもごもであるらしい。俺も会話に混ざる。


416:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)

どもー。お疲れ様ですー!


417:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)

大馬鹿な天才が来たようじゃな。ふんっ!精々束の間の安寧を楽しむんじゃな。


418:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

せやで!次はあたしとうーたんが相手やで。けつの穴かっぽじって待っときや。


419:ダンジョンマスター(竜眠の箱舟)

ユニちゃん汚い…。


420:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)

そう殺気立つな。ちゃんと400000DPは返すさ。


421:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

ほんまに!?


422:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)

何を企んどるんじゃ?


423:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)

ただしそれぞれ200000DP分のモンスターをくれ。


424:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)

ほう…。200000DP分のモンスターでいいんじゃな。


425:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

いやや!あたしの可愛いモンスター達をあげるなんて考えられへん!


426:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)

きっかり200000DP分のモンスターを渡す。これでワシとは手打ちじゃ。



この反応、やっぱり森賢人は【裏チュートリアル16】を知っているようだ。50000DPの損になるが、またダンジョンバトルする手間を考えたら別に構わない。狙うなら大きい魚を狙わないとな。



427:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

えええええ!うーたん!なんでなん?一緒に戦うゆーたやん!


428:ダンジョンマスター(森賢人の猪口)

戦いたかったら一人で戦うといい。ワシはもう降りた。


429:ダンジョンマスター(幻獣の玄園)

ぐぬー!…分かった。半分はやる。その代わりきっかり100000DP返してもらうで。



よし!幻獣属10匹確保だ。



430:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)

よし!取引成立だ。ヴェルフィア兄さん。あとはやっちゃってください。


431:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)

任せなさい!覇高の水瓶、ダンジョンマスターのカルピスウォーター!出てこい!



すごく体に良さそうな名前だ。



432:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)

いるのは分かっている。君がもしこのまま無視を続けるなら、僕は君のダンジョンの隣に新しくダンジョンを造り、直接君のダンジョンを潰す。もし今出てきたら命だけは助けてあげよう。


433:ダンジョンマスター(覇高の水瓶)

…。本当に命は助けてくれるのか?


434:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)

約束しよう。僕は吸血鬼だけど鬼じゃない。僕は覇高の水瓶にダンジョンバトルを申し込む。


≪ダンジョンバトルの申し出が受け入れられました。【薔薇と血棺】対【覇高の水瓶】のバトルは両者の取り決めにより1分後に行われます。全ダンジョンは当該ダンジョンに1か月間、ダンジョンバトルを申し込むことはできません≫



≪覇高の水瓶のボスが倒されました。薔薇と血棺の勝利です。すべての権利が薔薇と血棺のダンジョンに移ります≫


462:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)

お待たせ。慎吾君。利息について話があるんだが。


463:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)

悪いが、ヴェルフィア兄さん。ちょっと待っててくれないか。1人話したい奴がいる。


464:ダンジョンマスター(薔薇と血棺)

了解だ。新しいウォシュレットを試してみとくよ。



ウォシュレット?何の話だ?…あー、あれか。



465:ダンジョンマスター(狂霊の死体袋)

雨蜘蛛の巣窟のダンジョンマスター、スパイダーマン。話をしよう。


466:ダンジョンマスター(雨蜘蛛の巣窟)

いいけど、話すことなんか何もないぞ。



雨蜘蛛の巣窟からダイレクトメッセージの申し出を受け取りました。申し出を受けますか?


YES/NO


「イエス」


ブンと巨大な蜘蛛が表示される。


「おいすー。ダンジョンバトルお疲れ様」


相変わらずフランクなスパイダーマンだ。


「ありがとう。まあ通過点に過ぎないけどな」


「いやはや、すごい戦いぶりだったぞ。俺だったらあんな作戦はしない」


「俺も思いついたときはやるかどうか結構迷ったよ。元々はあんたみたいに弱小ダンジョンからキューブを巻き上げて【裏チュートリアル3】でモンスターを量産する予定だったんだけど、それだと魔王になれないからな。手の込んだ方法を使ったんだ」


「そうか、俺とお前の差はその野心だったんだな」


「野心…。というよりは魔物を信じて任せようと思ったことじゃないか?あんたワンマンプレー好きそうだし」


「そりゃ好きだよ。俺より優秀な奴中々いないし。魔物を信じて任せるなんて考えられないな」


こいつ俺並みにプライドが高いな。


「俺も元々はそうだったが極限状態に追い込まれてクロノスと一緒にダンジョンを造らないといけないってなった時に俺は変われたんだと思う。なぁクロノス!」


「そうだね!慎吾のおかげで僕も変われたよ!」


仲睦まじい俺たちの様子をスパイダーマンは無機質な瞳で見ていた。


「まあいい。俺は俺のダンジョンを守るため、お前はお前の夢をかなえるため。ダンジョンバトルしようや」


「やっぱり、それしかないのか?あんたの獲物を横取りしたのは謝るよ。悪かった」


「こういうのは謝る、謝らないの話じゃない。メンツの話なんだ。分かるだろ?ここでなんのアクションもしなかったら、俺が融資した弱小ダンジョンたちは完全にお前に流されていく。そしたら俺のダンジョンは衰退していく一方だ」


「俺は案外この暮らしを気に入ってるんだ。モンスターを召喚して侵入者の相手して、またモンスターをためてってやるのが好きなんだ。それを続けるためには俺も一肌脱ぐさ。それに俺のDPがないとあんたの夢は遠のくだけだろ?」


「それもそうだな。フェアにいこう。借りたDPは返すよ。ちゃんと利息付けて110000だ」



雨蜘蛛の巣窟に110000DPを譲渡しました。


990370DP



「ありがとよ。じゃあまた1か月後な」


そういうと、スパイダーマンは消えた。なぜかあいつは敵に見えないんだよな。まあ次はヴェルフィア兄さんだ。



薔薇と血棺にダイレクトメッセージの申し出をします



ブン


「やあ!慎吾君!クロノス君!ダンジョンバトルお疲れ様!」


ヴェルフィア兄さんはどこかすっきりした顔をしている。


「そちらこそ、お疲れさん。瞬殺だったな」


「向こうは抵抗してなかったからね。当然さ。さて利息の話だけど今回は0で構わない。500000DPも返済期限を無期限に設定しよう」


「いいのか?」


「もちろんだよ、捨てたつもりだった500000DPがこんなにも最高な結果を招くとは思わなかった。それに、君のこれからに投資させてもらう意味も込めての無期限延長だよ。DPは足りてないんだろう?」


「助かるよ。DPはいくらあっても困らない。それで、今後の話なんだが街を堕とすのに戦力を貸してほしい。もちろん分け前は渡す。考えてみてくれないか?」


「もちろん。協力するよ」


「ありがとう。ちなみにウォシュレットの出来はどうだった?」


「あぁ!刺激的でとても良かったよ!」


そういうヴェルフィアの顔はとても爽やかだった。これからはヴェルフィア兄さん改めウォシュレット兄さんと呼ぶことにしよう。


今後ヴェルフィアが覇高の水瓶をどんなダンジョンにするかは知らないが、こちらに好意的なダンジョンができたのはありがたい。アンデッド同士共存の道を選ぼう。


ヴェルフィアが去った後、残ったDPは990370DPだった。思っていたよりも多くのDPが残ってくれて内心ほっとした。クロノスが尋ねる。


「このDPでもっとダンジョン増やせば、もっと稼げるね慎吾!」


俺はクロノスにチョップする。


「いたぁい!何するんだよ!」


「学習しないなクロノスは…。何でもかんでも増やしたら良いってもんじゃない。今回の件に関してはな。規模の経済という言葉があるように規模の不経済もあるんだよ」


「規模の不経済…?」


「工場を増やしすぎて、手が回らなくなってしまうことだよ。10個のダンジョンでもギリギリだったのに今は12個もダンジョンを抱えている。俺もクロノスもこれが限界ってことだ。おそらくそれは雨蜘蛛のダンジョンでも同じなはずだ。特にあいつは1人でやることにこだわっている」


「っていうことは僕たちの方が有利ってこと?」


「そのはずなんだが、どうも嫌な予感がする。あいつは昔の俺と考えが似ている気がするんだ。勝ち負けを超えた最悪な一手を平気で打つ男のように俺には見える」


「それってどんな手?」


「分からん。ただ今回は勝つだけじゃダメな気がするんだ」


「ふーん。よくわかんないけど、僕は悪魔の眼窩と灼熱の坩堝に行ってくるよ。ある程度基本は教えてあげるから、あとは慎吾がお願いね!」


「あ、あぁ。ありがとう」


いってきまーす、といってクロノスは元気に出かけた。俺にとっての最悪。その答えは既にフロストから聞いている。魔神クロノスを殺されることだ。スパイダーマンがクロノスを殺しに来る?どうやって?悶々としたままはっきりとした答えは出なかった。


「今できることは街を堕とす。それだけだ」


俺はダンジョンバトルの頃からずっと悩んでいたDPの計算に戻った。


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