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アスタナ、侵攻(ダンジョンマスターモノです)  作者: サムライソード
第一章
11/14

第十一話

俺はガラガラとホワイトボードを持ってきた。全員に椅子に座るよう指示する。


「前半は【裏チュートリアル】を活用した戦力の増加について伝える。特に【裏チュートリアル】は1~10まですべて使うダンジョンもある。後半はダンジョン経営で重要な3つの要素についてとやってもらいたいこと2つ、みんなに考えてもらいたいこと1つについて語る。マニュアルに書いてることを細かく解説した講義だからどんどん紙にメモしてくれ」


「裏チュートリアルを1~10まですべて使う!?」


誰かと思ったらそれを言ったのはクロノスだった。ちなみにこの講義は一部を除いてクロノスも初耳だ。


「まずは【裏チュートリアル】ことチートだが、今現在うちのダンジョンが利用しているチートから解説しよう。【裏チュートリアル3】と【裏チュートリアル9】、【裏チュートリアル10】だ」


「まず【裏チュートリアル3】。前述したとおりキューブを工場とすると、工場は働き続けると効率が上がる。それは【裏チュートリアル1】で体感できた奴もいるだろう。次に工場は似たような製品を生産するときもその効率をあてはめることができる。これが【裏チュートリアル2】で1と2が合体し魔改造されたのが【裏チュートリアル3】っていうわけだ」


「これで1DPのモンスターが5000DPに。しかもコストは半分で召喚できるようになった。しかしこの集団の中でそれを利用できるのは、粘性の気球のみだ。なぜなら俺が選んだダンジョンは一部例外を除いて、1DPでない自分と同じ種族のモンスターを召喚することを選んだダンジョンだからだ」


「よって、粘性の気球以外は俺と同じチートを使うことができない。これは諦めてくれ」


一同がざわつく。1~10まで使うダンジョンはスラ子のみだ。


「だが、他のダンジョンにもこれから解明していく【裏チュートリアル】によって似たような恩恵が受けられるようになるはずだ。安心してくれ」


「現在分かっている【裏チュートリアル】の中でお前たちに使ってもらいたいチートはこっちだ。【裏チュートリアル9】。これは種族ではなく属でくくることによるコストの削減を戦力増加で置き換えたもの…なはずだ!」


これは断言するためには天啓が必要だ。そうだよな?キューブ。


(僭越ながら申し上げますと、そんなことよりも読者の方は属、種族の概念が分からず混乱しているのではないかと考えます)


それもそうか。ここで一旦話は脱線する。アスタナでは当然の話だが、俺の方から補足させていただこう。この世界で魔物は科~属~種~というふうに定義づけられてる。例えばドクロ(1DP)ならば自然科~アンデッド属~ドクロ種~ドクロという。ちなみに種と種族は同じだ。


【裏チュートリアル3】で対象となるのはアンデッド属ではなく、ドクロ種が対象となる。どういうことかと言うと、アンデッド属にはゾンビやグール、リッチがいるが、そいつらは当然コスト半分になることはない。また、ドクロだけが対象になるわけでもない。ドクロ種の進化先である死臭のドクロ、デススカル、百骸はドクロ種に含まれているため、コスト半分になる。


【裏チュートリアル9】で対象となるのは属の部分だ。なのでゾンビもグールもリッチもドクロも全部5%戦力増加させられる。


【裏チュートリアル3】は1DPの種を対象とするもの(スライム、ドクロ、鬼火)

【裏チュートリアル9】は属全体を対象とするもの (アンデッド属、粘液属、亜人属)


また適宜注釈を入れる。そして聴衆に語り掛ける。


「これの達成条件は自分の属、お前たちにとっての種族に使用したDPが100000DPを超えることだ。既にクリアしているものが多いと思う」


一部例外を除いて、種のみで統一されたダンジョンということは属も統一されたダンジョンになっている。属⊃種。包含関係といえば分かってくれるだろうか。


「もう1つ、【裏チュートリアル10】だ。お前たちは既にダンジョンを自分の属で統一していて、俺とクロノスが適した属性を持つ環境に割り当ててある。よって、これもすぐに利用できるだろう。共有のためにホワイトボードにそれぞれの環境と属性を書く」


粘性の気球   水 川

亜人の背嚢   悪 盗賊のアジト

犬革の靴底   木 森

空洞の土人形  土 鉱山

翼姉妹の踊り場 風 渓谷

妖精たちの樹洞 聖 神殿

騎士の仮面   光 山頂

巨人の胃袋   無 荒野

青蛇の毒沼   毒 毒沼

人狼の口腔   血 戦場


狂霊の死体袋  闇 洞窟



「さて、ここで注目したいのは【裏チュートリアル9】だ。この仮定をもとに俺はあることを考えた。もし、コスト削減がボーナスになっているのならば、そのモンスターは生まれたときから5%アップであり、そしてどこでも5%アップなんじゃないかってな」


全員が見事に頭にはてなを浮かべている。クロノスも小首を傾げている。


「まあ、やってみよう。スラ子、【裏チュートリアル9】は解放されてたよな。ゴブリーナにキロスライム(1000DP)を派遣させてくれ」


「…。承知しました。魔王様」


ゴブリーナは明るい性格のゴブリンロード(6000DP)である。


「たしかに受け取ったよ!…あり?戦力上のDPがキロスライム(1050DP)になってる!」


「「「ピコン!」」」


11個のキューブが同時に通知される。



≪【裏チュートリアル14】レンタルモンスターはレンタル元のダンジョンが【裏チュートリアル9】を利用している場合そのモンスターの戦力に5%アップ≫


周囲がどよめく。【裏チュートリアル10】の5%アップは環境が変わるから加算されないのか。


「粘液工場で作ったキロスライム(1000DP)は戦力上で1050DPの価値があるということだ」


10体が興奮を露わにしようとしている。だが、この程度は序の口だ。俺は聴衆の興奮を抑え、続きを話す


「俺たちはこれを利用してダンジョンを造る。だが、当然たった5%ぽっちの増加で例の件を進めるわけじゃない。そして次の話!これは【裏チュートリアル3】に匹敵するチートの話だ。その話とは…」


聴衆は前のめりになる。


「その話とは【裏チュートリアル5】、【裏チュートリアル6】、【裏チュートリアル7】、【裏チュートリアル8】にある突然変異だ」


クロノスが尋ねる。


「突然変異ってうちのダンジョンで全く使えなかった突然変異?」


「ああ、それが俺の考えが正しければこれが俺たちの最大の武器になる」


「これはヴェルフィアから仕入れた話だが、【裏チュートリアル5】はモンスターを突然変異させることだ。これは既にお前たちは新しい環境で自分の属が勝手に突然変異していることで知っていると思う」


例えば水属性の川に移転したスライム(1DP)は既に水スライム(1.5DP)に変異済みだ。


「そして【裏チュートリアル6】は2属の突然変異を成功させると、突然変異の可能回数が5回増えるというものだ。しかし、ここの【裏チュートリアル】には俺のダンジョンで問題があった。【裏チュートリアル3】と干渉するんだ。せっかくアンデッドの属の工場を造っているのに、これを達成するには別の属を召喚しないといけない」


アンデッド属から途中で粘液属にコンバートしたとしてもアドバンテージが消えてしまう。


ここで青蛇の毒沼のダンジョンマスター、メデューサ(7500DP)のキュートなお目目ペンネームが質問する。


「魔王様、あたし、属のメインモンスターが800DPだから【裏チュートリアル3】使ってないんだけど、別の属召喚したらダメ?例えば粘液属のスライムちゃんとか1DPで呼んで、あたしも【裏チュートリアル3】つかいたいんだけども」


その話は後半にする予定だ。メインモンスターとはダンジョンマスターと同じ種族のモンスターのことだ。メデューサ(7500DP)にとってはスネーク(800DP)だ。ちなみに俺が名付けた。


「そのことは後半に話すが、先ほども言ったが、これから明らかになる【裏チュートリアル】を考えると他のモンスターを召喚するのは無しだ。お目目、焦らなくていい」


お目目はけだるげなお姉さん風で言う。


「でもせめて、あたしも1DPの属がいたらなぁ。でもスネーク(800DP)以外使う気ないし、やっぱりあたしのやり方って間違ってるのかな」


俺調べだが、ダンジョンマスターになる動機の80%は自身と同じ種族を増やしたいというものだ。だから、カザンのような軟派もの以外はダンジョンが潰れかかっても他のモンスターを意地でも召喚しない。そもそも人界の魔物には瘴気以外での繁殖能力がない。それを埋めるように本能としてダンジョンマスターをやりたがるのだろう。そして俺はそんなやつらを集めた。だがそんな頑固者も揺らいでいる。


「間違ってなんかいない。それはこれから証明するから少し待っててくれ。話を戻そう。1つの属工場で2つの属のモンスターの突然変異はできない。1人だったらな」


クロノスが声を漏らす。


「まさか…」


「そう!モンスターを他から借りるんだ。ただし今度はゴブリーナからスラ子へだ。ゴブリーナ、森で捕まえたゴブリン(100DP)もあわせて何体ゴブリンがいる?」


「70体だよ!」


「そうか、3000DP渡すから100体にしてスラ子に渡してくれ」



亜人の背嚢に3000DP譲渡しました


187000DPプール


15720DP(狂霊の死体袋)



ちなみにお財布を分けた。5720DPを狂霊の死体袋に入れて490000DPをプールした。そのうち、220000は移転に使って、40000DPを彼らが持っていた借金の返済にあてた。


4体が10000ずつ他ダンジョンから融資を受けており、ダンジョン移転に伴い俺が清算した。まあ、それはまた別の問題になるんだが、それは置いといて。その後さらに10000DPの融資をその4組にしたので大体1つのダンジョンにつき10000DPを持っていることになる。


「…。確かにうけとりました。ゴブリン(100DP)×100体。水辺でぷかぷか浮いてますが」


「それでいい。少し待ってる間にダンジョンでのモンスター派遣についての話だ」


「それぞれの属の間には相性がある。有名な話が、アンデッドはすべての属と相性が悪いって話。そのせいで俺はアンデッドのモンスターを派遣できないし、受け入れることもできない。そしてこういった関係はそれぞれの属に存在する。その全てを知っているのが、我が主、魔神クロノスだ」


百骸(5000DP)はだから派遣できない。あの投資は完全に詐欺だったというわけだ。皆ホイホイ騙されやがって。


クロノスは機嫌よさげに手を挙げる。


「はいはーい!1つずつ解説するよ!こちらをご覧ください!モンスターを派遣する際に派遣してはいけない属をそれぞれピックアップしたよ」



粘液  巨人

亜人  巨人 

犬   巨人 

土人形 巨人

翼人  巨人 蛇

妖精  犬

騎士  巨人 人狼

巨人  なし

毒蛇  巨人 騎士

人狼  巨人 騎士


「基本的に巨人は妖精以外のすべてから嫌われてるね。そりゃそうだ!踏まれたらペッシャンコなんだから!」


「巨人は苦手な属なし。粘液、土人形は巨人のみ、翼人は巨人と蛇が苦手。毒蛇と人狼は巨人と騎士が苦手。騎士は騎士道ってやつがあるから争いになるんだね。騎士は逆に巨人と人狼が苦手。人狼はすぐ手が出るんだ」


皆が紙に表を書き込んでいく。先生とかってこんな景色だったんだな。


「さて、突然変異だがーーー」


ピコンピコンピコンと音が鳴る。だれだ~、携帯の電源切ってない奴は?って違う。粘性の気球のキューブからの通知だ。


≪【裏チュートリアル5】ゴブリン(100DP)2体がリバーサイドゴブリン(150DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル6】2属の突然変異に成功しました。突然変異の可能回数が5回に増えます≫

≪【裏チュートリアル15】環境ボーナス!新しい属性の環境を選ぶと突然変異率が30%に上昇します≫

≪【裏チュートリアル15】ゴブリン(100DP)28体がリバーサイドゴブリン(150DP)に突然変異しました≫


皆が顔を見合わせる。俺はにんまりと笑った。【裏チュートリアル】は魔王軍全員に共有される。


「俺はクロノスからあらかじめ【裏チュートリアル15】を聞いていた。俺のチートは経営学でも外道なことでもなく、こいつがいたことだったんだな」


クロノスがそれを聞いて一瞬フリーズし、再起動するといきなり泣き出した。


「しーんーごー!お前ってやつは!」


泣きながらぽかぽかと肩を殴ってくる。まさかこいつマジ泣きか?まったく可愛いやつめ。


俺はクロノスの頭を撫でてやり、とりあえず後回しにさせてもらう。今は本当に時間が惜しいのだ。


「クロノス、みんなの前だからあとでな」


「うん!」


騎士の仮面のダンジョンマスター、騎士王(8000DP)のアルが呟いたのを俺は聞き逃さなかった。


「モエ~」


人狼の口腔のダンジョンマスター、大狼(8000DP)のガルルが追随する。


「はぁー!尊いでゴザル!」


二人の目と目が合う。まずい、人狼と騎士は相性が!


二人は大きく振りかぶった。


「「同志!」」


そして盛大な握手をしようとして、盛大に空ぶった。


「草」


「おててスカスカで草なんよぉ~」


よくわからんが険悪な雰囲気は流れていないようだ。…流れてないよな?


俺は手を叩きながら言う。


「はいはい、ホワイトボードに各ダンジョンの属性書いてあるから、みんな派遣し合ってくれ。変異は4回までだから慎重に選ぶように」



粘性の気球   水

亜人の背嚢   悪

犬革の靴底   木

空洞の土人形  土

翼姉妹の踊り場 風

妖精たちの樹洞 聖

騎士の仮面   光

巨人の胃袋   無

青蛇の毒沼   毒

人狼の口腔   血


狂霊の死体袋  闇


みんなはライン交換よろしくといったノリでモンスターを派遣し合う。ここでまた込み入った話をしないといけないのだが、属には2つの意味があり、1つは~目~科~属~種などのモンスターの種族の一つ上のくくりとしての~属。もう1つは魔術的な火属性、風属性などのダンジョンが持つ属性。


1つ目の例としてリバーサイドゴブリンをあげるのならば、こいつは亜人科~亜人属~ゴブリン種~ゴブリン(リバーサイドゴブリン)という風に分類される。


ダンジョンが持つ属性の相性は俺なんかより魔界在住経験の長いみんなの方が詳しい。ぶっちゃけ俺もちゃんと把握してない。


そうこうしていると粘性の気球が1000体ずつスライムを派遣し、突然変異を乱発させた。


≪【裏チュートリアル5】スライム(1DP)300体がイビルスライム(1.5DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル5】スライム(1DP)300体がエンゼルスライム(1.5DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル7】突然変異に3回成功しました。突然変異率が10%増加します≫

≪【裏チュートリアル5】スライム(1DP)400体がポイズンスライム(1.5DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル5】スライム(1DP)400体がブライトスライム(1.5DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル8】突然変異に5回成功しました。突然変異率が10%増加します≫


これでスライムの突然変異は打ち止めか。突然変異率は50%。次は犬革の靴底のハウンド(50DP)が20体ずつ配られる。


≪【裏チュートリアル5】ハウンド(50DP)10体がスプラッシュハウンド(75DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル5】ハウンド(50DP)10体が穴掘りハウンド(75DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル5】ハウンド(50DP)10体が疾風のハウンド(75DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル5】ハウンド(50DP)10体がブラッドハウンド(75DP)に突然変異しました≫


ハウンドは打ち止め。次に亜人の背嚢のゴブリン(100DP)が10体ずつ配られる。


≪【裏チュートリアル5】ゴブリン(100DP)5体がゴブリンレンジャー(150DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル5】ゴブリン(100DP)5体がゴブリンソーサラー(150DP)に突然変異しました≫

≪【裏チュートリアル5】ゴブリン(100DP)5体が血塗れゴブリン(150DP)に突然変異しました≫


リバーサイドゴブリン合わせて5種で打ち止め。残り7ダンジョンすべての突然変異を記すのは大変なので1ダンジョンにつき1種だけ紹介する。


空洞の土人形 ゴーレム(400DP)→サンドゴーレム(600DP)


翼姉妹の踊り場 ハーピー(400DP)→突風のハーピー(600DP)


妖精たちの樹洞 フェアリー(800DP)→セイントフェアリー(1200DP)


青蛇の毒沼 蟲毒のスネーク(800DP)→悪食のスネーク(1200DP)


騎士の仮面 ナイト(1300DP)→光盾のナイト(1950DP)


人狼の口腔 人狼(1300DP)→血涙の人狼(1950DP)


巨人の胃袋 巨人(3000DP)→聖なる巨人(4500DP)


みんな大幅な戦力アップに満足している。俺はみんなに呼びかける。


「みんな、これがーーー」


その時何かがすすり泣く音が聞こえた。何事かと思い、音の発生源を見ると、そこには一つ目から大粒の涙を流している一つ目の巨人がいた。


「うぅ、おいら、おいら…」


「い、いったいどうしたんだ?」


俺は予想だにしなかった展開に戸惑いを隠せなかった。サイクロプス(10000DP)のサイクロンはホログラム越しにゴブリーナからよしよしされている。


「だってぇ、…ぁ…ぅ…ぅ…」


ゴブリーナがサイクロンの言い分を聞き取る。


「魔王様!サイクロンはこう言ってるよ!だって、おいらは妖精属以外から嫌われてるから巨人の派遣もできないし、突然変異も聖属性以外できないから、魔王軍のいらないこなんだって。そもそもおいらはみんなみたいに最初から巨人の召喚に専念できたわけじゃなくて、色んなモンスターを召喚して戦ってきたから巨人族の面汚しなんだって言ってるよ!」


おぉ、短い間でけっこういろいろ喋ってるな。


確かに巨人はモンスター属の相性的に聖属性しか突然変異できなかった。が、しかし俺の中で巨人種族は将来の魔王軍の主力に位置づけられている。それはヴェルフィア兄さんが言ってくれたヒントとその結果、彼曰く【裏チュートリアル3】並みのチートが理由だ。


そろそろこの【裏チュートリアル】を明らかにする時が来たか。だが、ここは俺のプランの中で唯一にして最大の賭けとなっている。…本当に大丈夫だろうか。いや、ここは失敗を覚悟で攻めるのみ。


「サイクロン、お前は要らない子なんかじゃない。むしろこれからの魔王軍の主力を担う男だ。そして他のみんなもメインモンスターだけにこだわってきたのは間違いじゃなかった。それをいまから証明する」


「今、ダンジョン内の総戦力は?」


「7500DPだべな」


「キューブ、44000DPをサイクロンへ譲渡する」


「え!?なんでおいらなんかにそんなDPを?」


「それでありったけの巨人を呼ぶんだ。今持ってる残りのDPはすべてダンジョンの拡張に使っていい」


「なんでそんなことーーー」


「いいから。俺を信じてみろ」



巨人の胃袋に44000DPを譲渡します


143000DP


サイクロンはその言葉を聞くと、黙って巨人を召喚した。ピコンと福音がなる。


≪【裏チュートリアル16】巨人属巨人種のみで保持戦力が50000DPを超えました。巨人種の召喚に必要なDPが75%になりました。これは【裏チュートリアル1】、【裏チュートリアル3】とは重複しません≫


≪【裏チュートリアル9】巨人属ボーナス!総戦力に5%加算されます。他属を召喚した場合、加算は消えます≫


≪【裏チュートリアル10】環境ボーナス!保持戦力50000DPを超え、属に適している属性を選ぶと総戦力に5%加算されます。環境を変えると、加算は消えます≫


くそっ!75%か!狙いは50%だったんだが、あの野郎。ちょっとだけ誇張しやがったな。ヴェルフィア兄さんのいうことはこれから話半分で聞くことにしよう。


しかも保持戦力だから50000DPを常に保持してないといけないんだろうな。巨人種には突然変異した聖なる巨人も当然含まれる。内心の俺の焦りを他所にサイクロンは喜んでいる。


「おいらの巨人が魔王様の魔法で安くなったぞ!やった!やった!」


それは規模の経済が、といいかけてやめた。今はこいつの笑顔が戻っただけで良しとしよう。皆によびかける。


「今のを見ただろう!お前たちのやってきた自分の種を増やすやり方はーーー」


ピロン


通知が鳴った。これは想定外だ。サイクロンが言う。


「魔王様から頂いた50000DP、決して無駄にはしないぞ!おいでくの坊ども!気合い入れろよ!」


地響きのような大きな低い声がキューブ越しに聞こえる。


≪【裏チュートリアル17】【裏チュートリアル16】を達成したうえでダンジョンマスターが最上位種だった場合、総戦力が10%アップします≫


これは…。確かに俺がヴァンパイアを召喚しても言うことを聞かないように、ダンジョンマスターには強さもまた求められる。しかもそれが自分と同じ種族の王だとしたら、普通よりも多く働いてもおかしくない。これは嬉しい誤算だ。いや、サイクロンのおかげだな。


「サイクロン、ありがとう。お前のおかげでまた一歩夢の実現に近づいた」


「魔王様!何を言ってるんだか。全部魔王様のおかげだべ」


まあそういうことにしておくか。


「改めて、お前たちのやり方は間違っていなかった。自身の言うことを聞きやすい配下というのはそれだけでも価値がある。王のために身を粉にして働くとなったらなおさらだ。【裏チュートリアル9】、【裏チュートリアル10】と【裏チュートリアル17】で戦力20%アップ。【裏チュートリアル16】で75%までコストカット。お前たちはこれを達成することがこの1か月の1つ目の目標だ」


俺はホワイトボードに1つ目の目標:保持戦力50000DPと大きく書く。


全員が背筋を伸ばす。KPI、中間目標はこれとして、それとは別に突然変異の恐ろしさを伝えないといけない。


「突然変異に話を戻そう。お前たちの総戦力の半分は突然変異で1.5倍に上昇した。つまり25%の戦力上昇だ。これは召喚コストの減少ともとらえることができる」


「だってそうだろ?600DPを400DPで召喚できるんだから。これは今までキューブがやってきた魔界から600DPのモンスターを呼び出すっていう仕事の200DP分をこちら側で担うようになったってことだ」


「このことを垂直統合という。ちなみに俺がお前たちを集めたのは水平統合だが、それは置いといて。この200DPは工場で作ったわけじゃないから突然変異したモンスターはおそらくリターンできない。ずるいこと考えた人は試してみてくれ」


(許しませんよ)


…気のせいか?先ほどから脳内に声が…。


「ここで重要なことは、【裏チュートリアル4】、モンスター達は進化していくということだ。例えばゴブリン(100DP)→ホブゴブリン(500DP)→ゴブリンリーダー(1500DP)→ゴブリンコマンダー(3000DP)→ゴブリンロード(6000DP)といったように、冒険者と戦って生き残った奴から進化していく。元々お前たちもそうやってのしあがってきたんだろ?」


「メインとなる種が進化すれば、それに合わせて突然変異したモンスターも進化する。ホブゴブリン(500DP)からリバーサイドホブゴブリン(750DP)へ突然変異させることも当然可能だ」


「だからこそ俺たちのやるべきこと2つ目はメインモンスターを進化させ母数を増やし、突然変異モンスターを増やすことである。当然のことだが、突然変異をすればするほどDPの得になる」


2つ目の目標:メインモンスターを増やし、突然変異モンスターを増やす。


「進化率は各々大体把握していると思う。自身が最上位種になるまでにどういう過程を踏んだのかを思い出せばおのずと見えてくるはずだ」


「…。魔王様!亜人の背嚢に送っていたイビルスライム(5DP)がイビルデカスライム(20DP)に進化、イビルデカスライム(20DP)がイビルヘクトスライム(400DP)に進化しました」


「よくやった!これは実験なんだが、スラ子は【裏チュートリアル3】を使っているから、スライムを(0.5DP)で召喚できるはずだ。突然変異したモンスターも半分のDPで生産できるか?」


「…。できないみたいです」


さすがにそこまで甘くないか。範囲の経済って言っても突然変異したモンスターは工場で作ったわけじゃないしな。


「そうか。ありがとう」


俺の場合、ドクロ(1DP)が進化して死臭のドクロ(5DP)が生まれた。もし死属性が他と共存できたなら、俺のダンジョンの戦力も上がっただろうが、まあ俺にはその分ゾンビ錬金術がある。キューブはやはりある程度平等にシステムをつくっているらしい。


しかしだ。ということは、灼熱の坩堝にも何かしらのチートがある可能性がある。最悪のパターンはわけも分からず蹂躙されるパターンだ。幸いなことに【裏チュートリアル】は頭を回せば、分かるようになっている。これからも頭はクリアにしておこう。


「前半の講義から、俺の伝えたいことは2つ。1つ、保持戦力を50000DPを迅速に達成すること。2つ、メインモンスターを増やし、突然変異モンスターを増やすことだ。いいな?」


一同は俺に頷き返す。どうやら顔を見る限り、俺に対する不信感はもうなさそうだ。しかし、読者はついてきてるのだろうか。


「よしっ!全員、後半は経営についての話だ!その中でやってもらいたいことは2つだ。お前たちのダンジョンのうわさはこの3日間で十分に広まった。人口25000人の帝都の人間がお前たちのダンジョンに殺到するだろう。ダンジョン経営で重要な3つの要素は侵入者の数と種類と殺害率だ!」


「街の男をターゲットにすると10000人の人口がある。村が3つで120人だった前のダンジョンの8倍だ。冒険者数は2000人、街の兵隊は750人、高位冒険者は250人、勇者は13人、超越者が3人」


「侵入者数は街の兵隊までをターゲットとすると12750人。これを12で割ると、1ダンジョン当たり1063人。3か月で1063人来るとしたら1日12人だ。実際には出来立てのダンジョンには人が集中し、3か月もたてば人は減るから、この1か月は少なくとも1日15人来ると思ってほしい。帝都の馬車数も考慮してのこの数字だ」


「これで侵入者数はばっちりだとして次は種類だ。ターゲット層は先ほど述べたように街の男と冒険者と街の兵隊の3つをできれば対象にしたい。ダンジョン拡張のコストやメインモンスターのDPによって難しいところもあるだろうが最低でも階層を2つに分けて対応してほしい」


「フィールド型ならエリアを中心部とその近さで分け、洞窟型は深さで階層を明確に分けてくれ。これは収益を増やすために重要なことだ。その理由を説明する」


「侵入者たちは自身と同じDPのダンジョンに侵入し、そこでモンスターと戦い、勝率50%の勝負をすると仮定する。自身よりDPが高いダンジョンは死亡率が高くなり行かなくなるし、DPが低いダンジョンも簡単すぎていかないものとする」


「階層を区切らない場合で平均戦力が1300DPだとすると、街の兵隊と街の男は来なくなる。これは侵入者数の減少を招き、収益が悪化する減少につながる」


「お前たちの中には村人以上の平均戦力で村人を殺しすぎて街の兵隊を呼ばれたり、DPが高すぎて村人がダンジョンを嫌って収益が伸び悩んだダンジョンもあっただろう」


「借金をしてモンスターを増やしたところで焼け石に水で状況は悪化するばかり。もう一度同じことを繰り返すか?断じて否、今の俺たちには仲間がいる。モンスターを派遣し合って、平均DPを調節するんだ。メインモンスターだけだと、虐殺か嫌われるかしか選べなかったが、仲間がいることで侵入者と共存できる」


ホワイトボードに書く。やること:①平均戦力は侵入者に合わせる。②階層分けをする。


「重要な3つの要素のうち2つはこれでクリアしたとする。最後の重要な要素であり、最大の問題でもあるそれは殺害率だ」


「殺害率は0.5を超えると危険ダンジョンに認定されて潰される可能性が高くなる。しかし殺害数を落とせば、落とすほど稼ぎは減る。だから0.5を常にキープするんだ。村や街にダメージを与えつつ、ギリギリ村や町がコントロールできる割合が0.5だ。村や街、都市によってその割合は細かく違うかもしれないがそれは徐々に合わせればいい。だが人の欲は恐ろしいとだけ言っておこうか」


隣人が死んでも、自分の欲を満たすのが人間だ。俺はそう信じている。魔物と違って人界で人間が大きく発展したのはそれが理由だ。


「殺害率を落とすのは簡単だ。弱いモンスターを量産すればいい。スライム(1DP)を800体とかな」


クロノスをちらりと見ると顔を真っ赤にしている。


「さっきも言ったが、人は自分と同じDPのダンジョンに行きたがるものとする。そして侵入者と同じDPのモンスターが戦って侵入者の勝率は5割だとする。しかし、侵入者も馬鹿じゃない。徐々にダンジョンの対策がされて殺害率は落ちていく。これは1日の侵入者数が多いほど顕著に現れるだろう。撃退数も多くなるから情報が筒抜けになるんだ」


「落ちていく殺害率をあげるにはどうしたら良い?だれか?」


ハウンドの王、ケルベロス(5500DP)、3代目ポチが前足を上げた。可愛い。


「魔王様、吾輩ならより強いモンスターを増やす」


「良い着眼点だ。ポチ。しかし冒険者は自身よりDPの多い敵は魅力的に感じず、ダンジョンに来なくなってしまう。DPを上げないまま、殺害率を上げるという難題をどう解決していくのかがダンジョンマスターの真髄だと俺は考える」


「うちのダンジョンでは、暗い洞窟にサラマンダーを放つことでダンジョンの実力以上の侵入者を倒した。その次はコストカットを狙ってアンデッド属を大量生産したが、結果として5%戦力アップ。次にサラマンダーを除いて環境ボーナスで5%戦力アップ。これで1300DPのグールが1430DP分の働きをすることにより殺害率を5割でキープしている」


召喚上のDPと戦力上のDPの違いってやつだな。


「もちろん村人や女子供が不要になったから1度ジェノサイドしたが、そのおかげで無駄な支出が減り、今は冒険者のみが来て、名声を獲得するために奮闘してくれている。これは適切なジェノサイドのタイミングにかかわる話だからまた今度するとして、現在50000DPも持っていないお前たちは【裏チュートリアル9】のみでどうにかして殺害率を5割でキープしないといけない」


「もう一度聞く。どうすればいい?」


空洞の土人形ダンジョンマスターのSランクゴーレム(7000DP)ゴレイヌが答えた。


「ピー。突然変異でできた同じ属性のモンスターを集め、総戦力を環境ボーナス発動条件まで上昇させると良いと考えます」


「素晴らしい答えだ!環境ボーナスの発動条件は保持戦力50000DP。協力して戦力を上げればすぐに達成できるかもな。他には?」


ハーピークイーンの(7000DP)ピーハーが答える。


「モンスターのバリエーションを増やす!人間、ダンジョンの対策大変!殺害率上がる!ピーハー!」


相変わらずのピーハーだ。勢いが好き。


「まさにそれだ。俺も一番に思い浮かんだのはそれだった。それは同じモンスターで平均を400DPにするよりも、いろいろなモンスターで平均400DPにした方が良いという意見だな。まさに的を得ている」


「弱いモンスターと強いモンスターを混ぜても、殺害率は上がる。これの細かい理論的な話はスキップする。理由が気になる人はバリエーションが増えたからで納得してくれ。それでも納得できなかったら、イェンセンの不等式でggrks」


そういうと何故か騎士王(8000DP)のアルと、大狼(8000DP)のガルルがきゃきゃと騒いでいる。属を超えた絆が芽生え始めたようだ。


ちなみにイェンセンの不等式では400DPの人間が800DPのモンスターと出会うと必ず死に、侵入者は自身と同じDPを稼ぐまで探索すると仮定する。


「そこ2体!なにかアイデアはあるか?」


2体はあてられると急に黙り込む。まったく陰キャなんだから。全員を見渡すも全員、目を合わせないようにしている。先生、悲しい。


「みんなで考えたいこととはこのことだ。サラマンダーと暗闇のような相乗効果をもたらす関係性をみんなで探していこう。その為には自分について詳しいことも大事だが、相手についても知らないといけない。お互いコミュニケーションを取って、この難題をクリアしていこう。俺の授業はここまで。最後まで聞いてくれてありがとう」


自然と拍手が起こる。一人が立ち上がると、ぞろぞろと立ち上がり、スタンディングオベーションで拍手を送った。俺もつい熱を込めすぎたような気がするが、こんだけ称賛されるとさすがの俺も気持ちが良い。


「授業を終えて、俺のことを認めてくれたやつも多いと思う。ここからは俺の目標について手短に話させてもらう」


全員の目がキラキラと光っている。尊敬のまなざしってやつだ。魔物は変なところで子供っぽいというか素直だ。


「一人一人の前でも言ったが、俺はダンジョンバトルだけのためにお前らを傘下にしたわけではない。俺の目的は…」


俺の目的は隣に立つクロノスと目を合わせる。クロノスはしっかりと俺の目を見つめ返した。


「俺の目的は世界一のダンジョン魔の国を造ることだ。このダンジョンバトルはそれの礎となるバトルだ。勝つのは当たり前、お前らにはその先を見据えて自分たちのダンジョンを造ってほしい」


面々の顔つきが変わった。そうだ。俺たちはこんなところでつまずくようなやつらじゃない。


「初めてのダンジョン造りはどうだった?おそらくこれまでエリート街道を走ってきたお前らにとって初めての挫折だったんじゃないか?」


「なにがなにやら分からないまま始めて、愚直に自分と同じ種族を生産し続けて失敗し、気づけばダンジョンが潰れる一歩手前にいた。そうだろ?」


「そして、今、お前らはもう一度チャンスを得た。しかも好立地、好条件でだ。俺がなんで自分で10000DPを使い新しいダンジョンを造らず、20000DPもわざわざ使ってお前たちにチャンスを与えたか分かるか?」


「それは欲しかったからだ。お前らの失敗が!熱が!ここでは終われないという意地が!お前らはこれまでやり方を知らなかっただけだ。これからは今みたいに俺がその熱で最大限稼げるようにマネジメントしてやる。しっかりついてこい。以上」


一瞬の静寂。のち、全員の雄叫びが突沸した。0から100へと一気に上がったボルテージはまさに俺が言った熱の表出だった。俺は頭に血が上りすぎて顔が真っ赤になっていることを自覚しながら、こぶしを突き上げる。雄叫びが歓声に変わる。


「…。魔王様!」


「魔王様!」


「魔王様!魔王様!魔王様!」


「「「魔王様!魔王様!魔王様!」」」


割れんばかりの歓声を俺は落ち着かせる。最後はクロノスの番だ。


「…諸君。僕の名は魔神クロノス。ボノーーー」


クロノスはそう言いかけて下を向き首を振る。


「いいや人間の慎吾の主である。こいつは自分以外の命を虫以下と考えていて、平気で同種を殺すイカレた奴だ。言ってしまえば人でありながら、最も人から外れた存在だ。だが、僕はそんな男こそ魔王にふさわしいと判断し、この世界に残させた」


「彼は稀代のダンジョンマスターだ。その才能をみすみす逃すなんて考えられなかった。そしてその才能は魔の国を造るという偉業をなすことで証明される。彼には十分な知識と才覚がある、あとは諸君らの忠誠心を形成していくだけだ」


「魔神クロノスの腹心【魔王】築地慎吾に忠誠を!」


「「「忠誠を!」」」


全員の声がビシッとそろう。どうやら忠誠心はもうすでに完成に近いようだ。絶望していた人間に光を与えると人はその光ではなく与えてくれた人を信じるようになる。その光を失ったとしても、またその人が光をくれるかもしれないからだ。それはどうやらモンスターも同じようで、すっかり俺に心酔している奴もいる。


それでいい。部下の管理もモチベーションの管理も経営者の仕事のうちだ。がやがやと互いに交流しだした傘下達に向かって声を張り上げる。


「シナジーで分からないことがあったら、クロノスに聞け!すべてのモンスターの情報をクロノスは持っている!」


そう言うと早速クロノスが呼ばれる。クロノスはダンジョンマスターたちの間に入り、シナジーをあーでもないこーでもないと議論している。


最初はただのクソガキだったのが、今ではすっかり可愛い娘のような存在になっている。


「娘のような存在か…」


俺にも娘がいた。名前は花。築地花。死産だった。元妻との関係性が悪化していったのはそれ以降のことだ。この世界に来る俺は死産さえなければ幸せな家庭を築けたかもしれないと思うことがあったが、この世界に来てからそうではないということが分かった。


俺は既に200人以上の人間を殺した。もちろん直接的にではないが、すべて俺が指示して殺した。そして傘下が10体もできた今、これから殺す人間は指数関数的に増えるだろう。


一人一人の人間に人生があって、幸せがあって、大切な人がいて、そのすべてが尊いことだと知っていても俺の心は動かない。これは200人殺そうが25000人殺そうが変わらないのだと悟っている。


俺にはどこか欠落している部分があるのだ。それが花の死以降、顕著に表れただけで、死産は直接的な原因じゃなかった。俺は人としておかしい。元妻の言うことは正しかった。しかしそんな俺がクロノスのことを娘の様に感じるようになったということは、俺も少し変わった部分があるかもしれない。


それは亡くなった花の面影をクロノスにかぶせているだけかもしれないが、冷血な俺にとっては初めての人間らしい温かな感情だった。この感情をそのまま受け止めていいのか、判断しかねていると狂霊の死体袋のキューブからピコンと通知が鳴った。


なんだ、また新しい【裏チュートリアル】かと思い映像を見ると、そこにはこう書かれていた。



≪【警告】超越者(10000DP)がダンジョンに侵入しました≫


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