十六
「タンサ様、まことにありがとうございました」
「わ、私も……ありがとう。あなたのおかげでこれからは普通に生きられる気がする。……それとごめんなさい。助けてくれたのに私、酷いこと言っちゃって……」
「そういう気分の時だってあるよ」
バーバラとスピルはタンサに対して、最大限の礼をする。
「この感謝をどのように伝えればよいでしょうか。どれほどの物を捧げれば報いることができるか分からないほどに大きな恩をいただきました」
「そんな、僕は特に……」
「ご謙遜を。タンサ様がここにいらっしゃってくださらなければ、このように全てが上手くいくことはなかったでしょう」
「そう言ってもらえるだけで僕は満足だよ」
「いいえ、それでは私たちの気が収まりません。お望みの物が無いようでしたら、宝物庫の中から最も高価な物を、あるいは代々受け継がれた国宝を……」
「ま、待って! ある! 欲しいものあるからっ!」
つり上がっていく礼の価値に恐縮して、慌てて目当ての物を頼んだ。
「……タンサ様がそちらを望むのであれば。かしこまりました。それでは用意させましょう」
その後、タンサは土産を持って宇宙船『麗しのシレイ様号』の所へ戻ってきた。
「……本当にこれだけでよろしいのですか?」
「もっと良いものがあるのに」
バーバラは片手で持てるほどの小さな袋を手渡す。隣に立っているスピルも不服そうな表情をしている。
「うん。お土産にはピッタリかなって」
「しかし、それでは受けた恩に対してあまりにも……」
「気にしなくていいのに」
「ですが……」
「それならまたここに来るから、その時はこの星を案内してほしいな」
「タンサ様のお望みとあらば喜んで。その時はスピルと共に」
「うん、じゃあまたね」
「ええ、またいつか。必ず」
惑星探索型人間を乗せた宇宙船はゆっくりと飛び上がる。窓から顔を覗かせたタンサが手を振り、バーバラとスピルもそれに応えた。その宇宙船の姿が見えなくなるまで。