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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode  作者: しののめ八雲
1年前 まだ日常と言えた頃
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新入生歓迎パーティー 

2024年4月1日 17:30 那覇市


立食パーティーは大学の近所にある公民館のような施設で開かれていた。

チラシを自分に渡したイケメンはこのサークルの主催者らしく、花から見ても場の中心にいることが分かった。

自分以外の女子達も注目していた。

(あんなカレが出来たら、自分を裏切った東京の連中の上に立てるのにな。)

埒も無いことを考えていると、その男が話かけてきた。


「やあ、来てくれたんだね!ありがとう!」

隣にこちらもびっくりするほどの美人を伴っている。

(あー、やっぱ彼女いるよねー。)


会場に入る時に記入した参加者リストを彼は持っていた。

「八木花さん?東京出身だったよね。なんでまた沖縄に進学したの?」

「え、いや。えーと、修学旅行で来た時に沖縄の自然に興味持って以来、大学は沖縄って決めてたんです。」

高校で友人関係をぶち壊しにして、東京から逃げて来たとは言えなかった。

「すごい行動力だね。自然に興味あるなら、ウチのサークルにぴったりかも。良かったら、ウチのサークルの見学に来ない?今度の土曜日、海岸でNPOと一緒に環境保護活動として海岸清掃するんだけど。これ、NPOからバイト代でるんだよね。1万5千円ほど。おいしくない?」

「えっ?そんなに?マジですか?」

「本当本当。マジっす。」

一緒に居た女性が割って入る。

「ちょっと先輩、そんなにぐいぐい行ったら彼女引いちゃうよ。だいたい先輩自己紹介もまだでしょう?」

「あ、いけね。俺は澤崎拓哉。いちおう、このサークルのリーダー。このパーティーも企画したよ。」

「私は青池涼子。よろしくね。澤崎先輩はこのサークルに入れ込みすぎて、留年を繰り返して今7年生なの。親御さんは怒って絶縁に近いって。八木さんには悪い見本ね。」

「いえいえ!そんなこと思いませんし!」

「よかったら、SNSのアカウント交換しない?土曜日の清掃イベントのグループに招待するし。」

「え、いいんですか?あ、でも私SNS使えなくなってて。。。」

「じゃあ、この中国製アプリにしなよ。最近ウチでは流行ってるんだ。」

「そうなんですか、えーと、これですか?こんなアプリあったんですね!ありがとうございます!」

「いや、こっちこそありがとうだよ。おっ、速攻で参加。いいねえ。八木さんさすがの行動力だね。」

「あ、いや・・。行動力?そうなのかなあ?」


ここ1年、怒られたり、非難されたりばかりで母以外の人間に肯定されたのは、ずいぶん久しぶりだった。少し照れた彼女は話題を切り替える

「そういえば、食事美味しいです。量も多いし、中華だし。これでタダなんて、なんだか悪いような・・。」

「でしょ?サークルメンバーで留学生の李君が、ツテで中華料理屋さんの料理を格安で手配してくれるの。しかも毎年。噂をすれば李君だ。李君!こちらは新入生の八木さん。ご飯美味しいって。」

「コンニチワ。李です。それはありがとネ。私日本のアニメと沖縄大好きネ!もう中国還りたくないネ!」

「かれは中国のお金持ちの息子なの。羨ましいよね。ねえ李君。澤崎先輩が大学退学になったら、お父さんの会社で雇ってね。」

「またそのハナシ?何回もOK言ってるでしょ。アナタそんなにワタシ信用できないの?もうカナシイ」

「八木さんごめんね。そろそろ代表挨拶の時間なんだ。土曜日のイベント、無理しなくてもいいからね。あ、これ要項書いたチラシ。」

チラシを渡された花は一人になる。澤崎は李と青池を伴って歩いて離れていった。


間をおかずに澤崎の挨拶が始まる。花はその様子を眺めていた。

「新入生のみなさん、入学おめでとうございまーす!

サークル「セーブ・沖縄・ネイチャー」略してSONの代表、澤崎拓哉でーす。サワタクって呼んでください!

今日は、歓迎会に参加してくれてありがとう!ぜひ、楽しんでいって、交流を深める場にしてください。

我々のサークルの活動を一応紹介しとくと、不定期に沖縄の自然を保全する活動を行っています。これは単独でやることもあれば、社会人NPOや一般社団法人と連携することもあります。

普段お世話になっているので、NPO主催の勉強会やフォーラムに参加することもありますが、これは強制ではありません。


ウチらのサークルの最大の特徴は、NPOの繋がりでアルバイトを紹介できたり、就活に繋がったり、リゾートを割引で使えちゃうところでーす!」

おお、と新入生でどよめきが広がる。


「サークル活動がどんなものか、良ければ今配ってるチラシのイベントに参加してみてください。

それでは、引き続きご歓談ください!」


その後も澤崎と青池を含め、数人のメンバーが何かと花に話かけてきてくれた。

花は流されるようにイベントへの参加を決めている。


数時間後


片付けの終わった会場には、澤崎と李が二人だけ残っていた。

「歓迎会の参加が52人。うち、バイト代付きのイベントに参加するのが21人。今日中にサークルへの加入を決めたのが2人。この2人は我々の候補者リストには無い。途中で抜けるかもしれんな。君と青池のルックスはさすがの集客力だ。だが、まだ不足だ。歓迎会もイベントも追加しろ。」

李は先ほどとは異なり、完璧な日本語を操っている。


「やるけどよ、約束が違うんじゃないのか?留年して大学辞めるまで時々アンタらの手先をやったら、手を切ってくれることになってた。

今年になってから活動が増えすぎだ。使える金もすごい。アンタら何企んでんだよ?」

「それは君が知る必要は無いし、私も知らない。状況は日々変化するものだ。

確かなのは、君は今我々への協力を辞めてもいいが、その場合、沖縄県警は4年前の交通事故の真実を知ることになる、ということだ。

君の母上は悲しむだろう。我々はその場合でも、中国に離脱するだけで済む話だ。・・・そんな顔をするなよ。物事は前向きに考えることだ。

10年後には、君は琉球共和国の初代国家主席か、大統領になっているかもしれない。

そうなったら落ち目の日本から母上を迎えてあげれば良い。なによりの親孝行じゃないか。学費だって我々が出すのだし。」

「琉球共和国だって?沖縄自治区の間違いじゃないのか?」

「良く分かっているじゃないか。」

澤崎の精いっぱいの皮肉も、李にはまったく響いていない。


李は大学生ではある。若く見えるが本当の名前は別にあり、30代の人民解放軍情報支援部隊に所属する少佐だった。

実際、かれにも侵攻計画のことは伝えられていない。ただ、1年以内に沖縄の分離独立運動を本格化させる命令だけを受けていた。

(さてさて、本国は何を考えているのだろう?俺が沖縄での任期を終えるまでは、大人しくしていて欲しいものだ。)


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