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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode  作者: しののめ八雲
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梯子外し

2025年4月1日 22:00 宮古島

 

花は入江湾近くの茂みに、目立たないようにテントを張って待機していた。

SONのメンバーは、全員がゲストハウスを今朝チェックアウトしている。

石垣島の事件を受け、自分達にも弾圧の手が及ぶのではないかと思ったからだった。

彼等は二人一組のペアになって、島のあちこちに散っている。花は自分で見当をつけた、入江湾近くのゴルフ場で、自衛隊の部隊がやってくるのを待ち構えていた。

テントで長時間過ごすのは、去年の夏の「合宿」で経験済だ。


同学年の中村という、ゆるふわ系の少女と一緒だった。

花はスマホのバッテリーの残りを気にしつつも、石垣島の事件の動画と、独立宣言の動画をSNSで方々に投下していた。

自分でも繰り返し見ている。


小田と青池が亡くなったということは信じられないが、同時に激しい怒りを感じていた。仇をとってやる、とすら思う。

サークルのビジュアル面での広告塔で、何かと周囲にチヤホヤされていた青池に対しては、嫉妬もあったので、内心の一部には「ざまあみろ」という気持ちもあった。

小田に対しては純粋に悼む気持ちしかない。去年の夏に船舶免許を取る話を彼がしていたのを思い出す。それがこんなことになるなんて。


そう思った直後、花は自己嫌悪に陥る。

今までに無かったことだ。

(今、私、青池さんに「ざまあみろ」って思った?私、何てことを思ったんだろ。どうかしてる。。。)

実際、過激な行動の連続と、荒れるネットにどっぷりハマっているせいで、彼女の精神衛生は不健全だった。自分でも東京に居た頃より性格が荒んでいると思う。

気が付けば、常にネットで誰かを罵倒している毎日だ。

それが、見知らぬ人間でなく、身近な仲間にまで及んで花は今更ながらに思い知る。


それでも懸命にSNSへの発信を続ける横で、マイペースに過ごしていた中村が声をあげる。

「あ、グループに澤崎さんの投稿だー。良かったー、無事みたい。今から澤崎さんも記者会見するってー。すごいね。リンクが送られてきたよー。」

「本当!良かった。澤崎さん急に連絡が取れなくなってたから、心配したよ!」

「ねえねえ、花ちゃん。聞いちゃうけど、花ちゃんも他の人みたいに、お母さんと縁切っちゃうのー?皆それが真の親離れみたいに言ってるけど、どうなのかなあ?」

「うーん。中村ちゃん、ふわふわしてるのに、痛いとこ突いてくるなー。

正直、お母さんには言い過ぎたと思ってるんだよね。

まがりなりにも母子家庭で私を育ててくれて、大学行かせてくれたわけだし。

本当は感謝したいんだけど、・・・照れくさくて言えたことがないんだ。

あと、自分でもすぐカッとなるのは、良くないって最近じゃ思ってるし・・。」


それを聞いた中村は、嬉しそうに花の頭を撫でる。

「えらいえらい花ちゃん。大人になりましたねー。

そう思ってるなら、お母さんに早くごめんなさいしよー?お母さんもきっと、水に流してくれるよー?

大事な事は直接、早く言わないとダメだよー?言いそびれたまま、言えずじまいってこともあるんだからー。」

「もう!ふわふわした口調で、重いことを・・。

でもそのためにも、まずは戦争を止めないとね。このまま沖縄が滅茶苦茶になったら、私達、家族と会えなくなるかもしれないし。」

「そっか。そうだね・・。」


2人の会話はそこで中断した。澤崎の記者会見が始まったからだ。


リンクを開いた彼女達に対して、画面の中の澤崎は期待とは正反対の内容を喋り出した。



2025年4月1日 22:00 那覇駐屯地


南西方面統合任務部隊司令部は、陸上自衛隊那覇駐屯地内にある。

元々地下耐爆指揮所が新設されていたが、半年前に2カ所が応急で追加されていた。通信インフラと耐爆性能は劣るが、場所をマメに変更しなくては位置を特定されてしまう。


指令の有坂陸将は、今どちらの指揮所にも入らず、南西方面集団本部の建物に戻って来客対応中だった。


来客は沖縄県知事だ。


本部建物の事務スペースでは、指揮所に収まりきらないスタッフが方々と連絡調整を行っていた。

部隊の展開だけでなく、中国の侵攻が現実味を帯びるに従い「国民保護」任務に伴う連絡調整が急増しているのだ。

指令室に向かおうとした有坂は、そうした臨時事務スペースで知事と出くわした。


知事の用件は、一言で言うなら「自衛隊の行動を即刻中止しろ」だった。

彼は従来からの自分の主張をまったく変えず、県民に避難勧告を出すこともしていない。

各市町村からの悲鳴のような要望、要請も「考えすぎ」「杞憂」「かえって危険」だと無視していた。

そして毎日のように、政府に中国を徒に刺激する行動を中止するように要請しては、却下されると、今度は那覇駐屯地にやって来て、南西方面統合任務部隊司令部に直接乗り込んで、司令にあれこれとクレームを入れる行為を繰り返していた。


司令部のスタッフは、この期に及んで見当外れのクレームを繰り返す知事に、怒りを通り越して呆れ果てていた。

有坂は部内でも紳士的な人物で知られている。本当はそれどころでは無いのだが、知事をぞんざいに扱わず、対応のためにわざわざ立ち入り禁止の指揮所から司令部まで出向いてきたのだ。


臨時事務スペース近辺で有坂に会った知事は、応接室への案内を無視し、その場でいつもの抗議を始めた。

今日は「石垣港で二人の若者が亡くなる事態となったのは、君達自衛隊の行動に責任がある」とまで言って来たのだ。

言われた有坂は平然と聞き流して知事を宥めていたが、傍で有坂と知事の会話聞いていた、第1ヘリ団からの連絡要員である木村二尉は、血の気が引くほどの怒りを覚えた。


その時、事務スペースのテレビが臨時ニュースを流す。

事態急変かと全員がモニターに注目したが、そうではなかった。澤崎拓哉と名乗る若い男の緊急記者会見だった。


その会見を眺めていた沖縄県知事は、ワナワナと震え出した。


会見の内容は以下の通りだった。

・自分は沖縄の大学でサークル活動を主催していたが、このサークル「SON」は中国の情報機関にコントロールされており、サークルメンバーは無自覚に中国の工作活動に従事している。

・その一環で今朝、サークルに所属する2名が謀殺された。あれは中国による自作自演で、止めることが出来なかった自分も、二人の死に責任がある。二人とその家族には謝罪の言葉も見つからない。もっと早く自首して、このように真実を公表するべきだった。

・そのほかの「いんでぺんでんと・おきなわ」他、当初は環境保護等の活動をしていたNPOが、沖縄独立を主張し始めたのは、全て中国の陰謀で、今の彼等は中国の攻撃を手伝わされている。

・自分が知る限りでは、中国は本当に攻撃してくる。中国の情報機関は宮古島、石垣島、与那国島にサークルのメンバーを派遣するように指示してきた。ということは、この島には攻撃が予想される。

・サークル、NPOのメンバーに告げる。あなたがたは中国に騙されている。自分の身を守るためにも、家族のためにも、無自覚に沖縄の人々を危険にさらさないためにも、いますぐ警察に出頭して欲しい。特にサークルメンバーには今まで騙して来たことを謝罪する。

・李と名乗る者を含め、大学と県内に留学生を名乗るスパイが多数存在する。

・沖縄県知事へ、あなたの認識は事情を知っている自分からすれば、完全に誤っている。今からでも遅くないから政府と自衛隊に協力して、県民に避難を呼びかけて欲しい。謝れなんて言わないから。

・今更自分が記者会見を開いたのは、数年前に中国に罠にはめられ、ひき逃げ事件を起こしてしまい、弱みを握られていたからだ。

こんなことになるまで、自首せずにいて国民の皆様と、自分が轢いてしまった方と、そのご家族には本当に申し訳ない。

・自分が言えることでは無いが、沖縄の自衛隊員、警察官、海上保安官の方達へ、どうか沖縄の人々を中国の攻撃から守って下さい。


会見が終わると、沖縄県知事は震える声で

「嘘だ。こんな会見は出鱈目だ。彼はいったい何を言ってるんだ・・。」と繰り返し、司令部から出て行った。

取り巻いていた県の職員は、ここぞとばかりに歩きながら、知事に考えを変えるように説得している。


木村二尉は、上官の江間二佐に話かけた。

「何というか。ここまでになっても知事は認識を変えないんですね。」

「君は若いからピンとこないかもしれんが、あのくらいの歳になると、誰が見ても間違っていて、自分でも間違っていると分かっていることでも、認めるのが難しくなるものだよ。

それまでの人生経験が邪魔をする。

それまで成功してきた人間は特にそうだ。破滅するまで過ちを認めないことだって珍しくない。良く覚えておけよ。」

「そんなものですか?」

「これが歳喰うと頭が固くなる、という話の具体例さ。

大半は中年以上の男が素直に間違ってました、済みません、と、一言いうだけで事態は改善する。夫婦喧嘩、家族喧嘩の原因は大抵そうだ。

だが、これがなかなか難しい。私だってカミさんにはさっさと謝れば良いものを、ケンカを引っ張ってしまうからね。」

それを聞いた木村二尉は、(そういえば、江間二佐も、有坂陸将も恐妻家だったな。二人とも「嫁さんという本物の暴君に比べれば、知事のクレームなんてかわいいモン」とか言ってたっけ)と妙なことを思い出した。


江間二佐はさらに続けた。

「後は、そうだな。例えばだ。木村二尉。君は防大の校友会はサッカー部だったな?」

「はい。そうです。」

「あまり無いとは思うが、ゲーム中に対戦相手がルールを曲解し、反則を繰り返したとする。君はどうする?」

「審判にクレームを入れます。」

「審判も同様にルールを誤解していたら?」

「そうですね。ベンチに居る仲間に、ルールブックか、無ければネットで根拠となるルールを探してもらいます。見つかり次第、タイムをかけて審判に示します。」

「なるほど。それで、相手と審判が間違いを認めて、謝罪して来たとしよう。君はどうする?」

「は・・・?次から気を付けてくれと言って、ゲームを再開します。」


「そうだ。私だってそれで済ますだろう。

だが、「ある種」の人間は、それでは済まさないのだ。

非を認めたら、相手チームが解散するまで、さらなる追い込みをかけたり、特権的な立場を得ようとする。酷い場合は、最初から反則というものが無くても、最初から相手チームを解散させることが目的で、隙を狙っては批判材料を探している。

そもそも建設的にプレーを楽しもう、という姿勢では最初からないのだ。」

「はあ・・・。」

「そして、彼等は周囲全てが自分達と同じように考えている、と思い込んでいる。

したがって、「誤りを認める」ということは自殺行為になるので、決してしてはいけないことなのだ。彼等の中では。」

「そんなものですか?」

「うん、君はまだそういうタイプに出くわしたことが無いんだろう。この手の人間に「とりあえず謝って済ます」というのは逆効果になる。気を付けろよ。」


木村は上官の話を聞いて、沖縄県知事はどっちだろうと思った。最悪、江間二佐の例え話双方に該当するかもしれない。


2025年4月1日 22:20 東京 首相官邸危機管理センター


首相をはじめ、国家安全保障会議のメンバーは、官邸地下の危機管理センターに入っていた。


モニターには澤崎の記者会見が映っている。

会見を主導したのは官房長官だった。国家公安委員長は、自首してきた澤崎の証言には裏取りが必要と考えたが、時間が無いと考えた首相の判断により会見が行われた形だった。

澤崎の証言もあり、ここ1年の政権の混乱に中国が関与していることが濃厚となった。総理はこれまでの恨みを込めて、思いきりの良い判断を下すようになっている。


既に自衛隊は臨戦態勢と言って良い。宇宙作戦隊はいつでも衛星の退避行動を開始できる。サイバー防衛隊も同様に、サイバー攻撃への警戒態勢に入っている。

海上自衛隊は捕捉している敵性潜水艦に対し、反撃許可を与えられていた。

航空自衛隊のCAPも、敵戦闘機に対する反撃許可を与えられている。

陸上自衛隊の特殊作戦群、海上自衛隊の特別警備隊は、沖縄県内での敵特殊部隊による破壊活動に対して、米軍の特殊部隊と協力して阻止する命令を受け、既に行動を開始している。


「台湾からの難民の流入は?」

「今のところ懸念していた程ではありません。僅かと言って良いです。向こうの総統府が、漁船での避難は海上での交戦に巻き込まれる危険と機雷に触れる危険があるから、軍を信じて台湾に留まるように繰り返しアナウンスしているおかげかもしれません。」

「国内でのテロ活動は?浜名湖橋と石垣港以降何も起きてないぞ。静かすぎないか?」

「公安に加え、米国の諜報機関が以前から秘密裏に調査を進めていたおかげで、九州や本州の活動はかなり抑え込めています。ですが、これから活動が活発化してくる可能性もありますから、予断は禁物です。」

「分かった。沖縄に敵の特殊部隊が上陸してきたのは本当なんだな?」

「間違いありません。かれらは、自爆ドローンの他、ピンポイント爆撃に使うレーザー照準器や、GPSの座標を特定する装置を所持していました。まず間違いなく中国は破壊工作に留まらず、沖縄本島も爆撃してきます。」


そこで防衛大臣に統幕長が相談をしてきた。歯切れが悪い。

「特殊作戦群からの要請です。米軍特殊部隊と共に敵破壊工作員を制圧中ですが、その・・、」

「なんですか?」

「破壊活動を行うグループに日本人が含まれていた場合、彼等を射殺しても宜しいでしょうか?」

彼女は絶句した。「敵」に同胞が含まれるのは想定外だったのだ。

総理が間に入る。

「私が許可する。現場の判断でテロリストと見なして射殺したまえ。

ただし、出来るだけ投降の機会は与えるように。

問答無用の射殺は、余程切迫していない限りは厳禁だ。今の発言は公式記録として、確実に残してくれ。いいな?」


2025年4月1日 22:20 嘉手納町


李達は嘉手納町に移動し、そこで車載のTVで澤崎の会見を見た。

部下達が視線を向けている。李は部下達が言わんとしていることを察して答えた。

「問題無いさ。今更奴が我々のことを暴露したところで、NPOや学生の連中は簡単に事実を認めることは無い。

何割かは脱落するかもしれんが、大半の連中は我々への協力を続けるさ。自分達の間抜けさを今になって世間に認める勇気は、奴らには無いからな。知事が良い例だろ?

それに解放軍が攻撃を仕掛ける大義名分は成立した後だ。我々の任務は成功しているよ。

それより慎重に行動しろ。ここは米軍の警戒が厳しい。」

「了解。」


李の部下は、5人がキャンピングカーで共に行動していたが、うち4人は追加の命令で、これから嘉手納基地の敷地に潜入し、爆撃の誘導をすることになっていた。

レーザー誘導爆弾用のレーザー照射機は、やはり反社を使って密輸したものだった。

照射機は、中国の工作員だけでなく、李達が活動を開始する以前から沖縄に存在していた、筋金入りの反政府系組織にも渡してある。彼等は喜んで協力してきた。

NPOや学生団体と異なり、こちらの真意や正体を隠す必要も無かったほどだった。

中国軍の爆撃機が投下するレーザー誘導式の爆弾は、彼等が目標に向けてレーザーを照射することで、レーザーの反射に向かって吸い込まれるように誘導されることになる。



2025年4月1日 22:45 ホワイトハウス


アメリカでも国家安全保障会議が開かれている。

国家情報長官と、国防長官、統合作戦本部議が大統領に緊急の報告を行っていた。

「大統領。中国軍の協力者から、国家主席による作戦決行の演説があったという報告です。報告は複数の人物から入っています。」

「そうか。いよいよか。避けられないのだな。」


アメリカ側はここ1週間、日本や他の西側諸国と共に、中国の危険な兆候を捉える度に、懸念を表明し続け、特使を派遣して中国側に自制を促してきた。

だが、中国は止まることは無かった。

中国の報道官は言い掛かり、米国の妄想、批判には当たらないと繰り返すだけだった。

むしろ、アメリカ軍の展開を批判している程だ。

アメリカとしても、今更中国が止まるつもりは無いだろうとは考えている。だが、平和的な解決の追求は、可能性がまだあるなら、あきらめるわけにはいかなかった。


一方で、大統領は去年から苦しめられてきたスキャンダルが、中国側の政治工作によるものと判明して以来、復讐の機会を待ってもいた。危うく大統領選で敗北寸前だったのだ。


「大統領。太平洋軍と宇宙軍に作戦開始を命令します。よろしいですね?」

「よろしい。やりたまえ。だたし、繰り返すが相手に先に手を出させるんだ。宇宙軍の戦いは目に見えないから、慎重にな。」


同時刻 宮古島


花と中村はテントの中で澤崎の会見を見た。

「今の、ど、どう思う花ちゃん?」

「嘘!こんなのエイプリルフールだよ。だいたい今の会見、東京だったよね。なんで澤崎さんが東京に居るの?きっと東京政府の連中に、拉致されて無理やり言わされてるんだよ!」

「うん、きっとそうだね。。。」


彼等のチャットのグループでの投稿は、当初は花と同意見ばかりだった。だが、一人が

「ごめん。俺抜ける。最近なんか変だと思ってたんだ。今までありがとう。」

と投稿した途端に、追随する者が続出した。花や中村は説得の投稿や、電話での説得を試みたが流れは止まらない。

「私直接行って、説得してみる!花ちゃんここにいて!一人で無茶したらダメだよ!」

中村はそういうと、テントから出て行こうとする。

花は「うん、お願いね」と言って中村を送り出した。


ここも危ないと思った。裏切った連中が、花と中村の待機場所を通報するかもしれない。

中村だって本当に説得に向かったのか怪しい。花は中村の態度に高校時代に彼女を裏切った(実際は見限った)かつての友人達と同じものを感じていた。

(中村は本当に仲間の説得に向かっていたものの、この後すぐに警察にあっさりと身柄を拘束された。とは言え、中村はSONの活動の変質には気付いていた。

元々は牧歌的な環境保護活動がしたかったのに、反政府活動ばかり熱心に行っていることにハッキリと違和感を感じていたし、メンバーが親子関係を崩壊させることを奨励するかのような方針には、違和感どころか反感を抱いていた。

だが、根っからのお人好の彼女は、一度は仲間と認めたSONと縁を切ることが出来なかった。

同様に、沖縄で出来た最初の友人であり、危なっかしい花を放っておくことも出来ず、付き合っていたに過ぎない。まるで愚かな主君に最後まで忠義を尽くす、中世の忠臣のような気質の持ち主だったのだ)


花は持てるだけの荷物を持つと、場所を変えようと徒歩で移動し始めた。最悪、水とスマホと予備バッテリーさえあれば、何とかなると思う。

(結局、高校の時に私を裏切ったあいつらと皆同じ。だれもかれも私を裏切る。

私は群れてないと何も出来ない連中とは違う。一人になっても、信じることをやるだけなんだから!)


テントの中で、一時冷静になりかけた花だったが、結局は妙な思い込みに支配されている。澤崎の会見も、中村もギリギリのところで信じることが出来なかったのだ。


こうなったら頼みの綱は久米だけだと思った。彼女に電話をしてみたが、繋がらない。

それでも花は止めようとせず、最後の一人になっても、自分に出来ることをするつもりだ。


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