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2話

目の前には毎日見ている兄と、その友人、そして…誰?




完全なる知らない女性、髪の毛を緩く巻いてバッチリメイクをしている人が兄の腕をもげそうになる程引っ張っている光景を見てしまった妹の私はこういった時にどうすればいいのだろうか。




「さ、集まったし、行こ。」

ツッコむのが面倒だったのか、手短にそう言った尊は私の空いている手を掴んで職員室の方向に向かっていく。そして、自分は何も見ていない、見えていないように振る舞う元いた残る2人、彗星成廻(すいせいなるみ)街花麟太郎(まちげりんたろう)が後ろから着いてくる。




「水葱は日誌出さないとなんだよね?僕達もお供するよ。」

成廻はそう言いながら最後に「…あの勘違い女には近づきたくないし。」という声が聞こえてくる。チラリと後ろを見るとにっこりした成廻と目が合った。横に視線をずらすと麟太郎もにっこりとした顔をしている。元々麟太郎は読めない奴なのでなんとも言えないが、成廻からは早くこの場から逃れたいという強い意志を感じる。




奥の方でまだ兄にぶら下がる女子生徒が見えたが見てはいけないものを見てしまった気になり、フイッと視線を前に戻した。




職員室につき、流石に中までは一緒に行く気はないのか、掴まれていた手がそっと離れていく。




「行ってらっしゃい。私ここで待ってるわー。」

そう言いながら反対方向の壁に寄りかかって手を振ってきた。




私は職員室の扉を叩きながら、入室の許可をとり中に入る。先生は部活動の顧問などの用事があるのか、ほとんど人がいなかった。




露上(ろかみ)先生、日誌を書き終えたので持ってきました。」

そう言うと、担任の露上はデスクのパソコンを見ていた視線を上げ、こちらに向かって片手をひらひらさせる。どうやら自分で取りに来る素振りがないので、水葱は露上のデスクまで日誌を持って行った。




「はい、お疲れ。相変わらず、天井は真面目だな…わざわざ放課後まで残って日誌書いてる生徒なんてお前ぐらいだぞー。」

「後から色々言われたくないので、先にやっておきました。」

「そうか、そうか…ん、帰ってよし。」

パラパラと日誌をめくって水葱が書いたページをざっと見た露上はそう言ってまた手をひらひらさせた。




「気を付けて帰んな。」

生徒を早く帰したいのか、はたまた本当に帰路を心配してるのかわからないが先生と話すこともないので早々に退出することにして、先生に背中を向ける。




「あ、そうだ。天井、ついでで頼みたいのがあんだよ。」

と言って後ろの席から立ち上がる音が聞こえる。




振り返ろうとも思ったが、相手の方が手足が長いからここまできてもらおうと思いその場で立ち止まる。露上は前に回ってきてそれなりに分厚い紙を私に差し出してきた。




「はいこれ、来週の校外学習の内容ね。クラスのチャットとかあるでしょ?それに内容だけ流しといて…あ、それ先生用だから生徒に向けた連絡以外は他言無用ね。」

「…露上先生、無闇矢鱈に生徒に先生側の書類を渡さないでください。いつか職務放棄で訴えられますよ?」

「大丈夫、それ天井用にコピーしたやつだから。先生は先生で持ってるし…俺の頭には全部入ってるからへーき、へーき。」

軽い調子で渡してきた書類はそれなりに厚みがあり、表に密と押されたマークがあるのだが、これは本当に受け取っていい物なのだろうか。




先生間で共有される内容には興味があったのでぺらりとページをめくって最初のページを見てみると今後の予定がずらりと並んだ予定表のようなものが出てきた。




「先生…私はいったい何を渡されたんですか…これ、本当に学校側のもの?」

最後の方は独り言に近いが、なぜか嫌な予感がする。




「ん?ああ、それ年間予定表兼、校外学習の内容が全部集約されてるやつな。」

「いや、内容は聞いてません。内容が書かれてるからか分厚いし、色んな意味で重いんですけど…。」

「そうか。」




「…」

なんとも言えない沈黙が起きる。私は先生をジロリと睨むように見る。




「…そんな目で担任を見るのも、お前ぐらいだぞ。わかった、それならこれは郵送するわ。代わりにこれ持っとけ。」

さっとマル秘書類を私の手から奪って何か透明なカードのような薄くて少し青みがかったものを渡された。




「…は?」

意味がわからず、思わず担任に悪態をついてしまう。




「口が悪いぞ、天井。あーそれ、家で確認しろよ。あといろいろ高いからできるだけ肌身離さず持っとけ。」

「…ついにおかしくなったんですね、露上先生。」

肌身離さずと言ったかこの男は、一体何を渡されたんだ。





もう何を言ったらいいかわからなくなったので黙っていると先生は再び口を開いた。





「ん?ああ、安心しろ。GPSの機能はついてない、つけようと思えばつけられるけどな。」

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