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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ダメヒロイン全部フる

 新しい人生は女運がひどく悪い。


「貴様! 私を辱めるつもりだろう!」

 これはこの国の副騎士団長だ。私を見るたびにこのような激しい被害妄想を口から垂れ流す。

 私は転生してきた平民上がりの王宮魔術師にして王立魔法研究所副所長。ちなみに名前はロニー。平民だから姓はない。体は男だが、転生前が女なのでそもそもこの体にまずなかなか馴染めず、生まれてこの方19年苦労し続けている。

「副団長シモーヌ殿。私を見るたびに私を悪し様に言うのは避けていただきたい」

「貴様がその様な舐め回す様な目で私を見るからだろう! 私を犯す妄想をしていたのだな!?」

「シモーヌ殿」

「やめろ! 私の名を呼んで耳を犯すのはやめろ!」

 クソほど話を聞かない女シモーヌ。

 初めて出会ってからかれこれ3年くらいこんな感じだ。

「私が貴様に恋心を抱いているわけないだろう! 私は貴様のその行動に絶対に屈しないからな!」

 ああ、もううざったい。

 妄想だけで話す変な女ほど気持ち悪いものもなかなかない。

 ――いや、そういえば。

 ――私は彼女に「話しかけないで」と言ったことがなかったな。

「シモーヌ殿」

「貴様、これ以上名を呼ぶなと、」

「二度と職務上必要な内容以外話しかけないでくれ」

「……は、」

 シモーヌはピタリと固まった。静かになってせいせいする。

「私はあなたが苦手だ。いつも私があなたを辱めるだのなんだのと……好きでもない相手にそんなことを考えるわけないだろう」

「すきでもない、」

「苦手……いや、嫌いだ。なんなら私はあなたの妄言のせいで昇進のチャンスを二度逃している。憎んですらいる」

「憎んで……」

 妄言を真に受けた上司が私の昇進を取り下げたことが2回ある。通ってたら今頃研究所長になってたのに。本当にこの女は――この女のせいで。

「もう一度言う。業務連絡以外、金輪際話しかけないでくれ。焼き殺したい気持ちは山々だが、妄言がなければ騎士として優秀なあなたを失うのは、私にとって得でも国にとっては損害だ」

「どうして、」

 シモーヌははらはらと涙を流し始めた。焼き殺すは言いすぎたか? だがそのくらい腹が立っていたのは事実だ。

「?」

「貴様は私を好いていて、だからみつめて、私を、のうないで、おそってくれる、」

「好きなわけない。最初の三ヶ月以来、あなたの顔もまともに見たくなくて見ていない。あなたの顔にカナブンが止まってたって無視する自信がある」

「どうして、私を……どうして襲ってくれないんだと思っていた、こんなに……こんなに好きなのに……」

 襲われたい妄想からくる被害妄想だったらしい。

 巻き込まれる側の身にもなれ。

「で、では、ロニー殿は一体誰が好きなんだ?」

「二度と話しかけるな」

「ひっ、」

 ――ああ、せいせいした。




 あまりにもスッキリしたので、私を悩ませる他の女性陣にも出逢い次第「二度と関わるな」を突きつけていこう。

 そんなことを考えていたら後ろから強く蹴り付けられた。昔私の隣の家に住んでいた女性だ。名をアニカという。

「……蹴飛ばすのはやめてほしいと言ったはずだが」

「あんたが悪いんでしょ!」

 これである。こいつもこいつで話が通じない。シモーヌは3年だが、アニカについては10年くらい耐えている。

 信じられないくらい、理不尽に蹴りかかってくるのだ。お陰で防御魔法と回復魔法をたくさん覚える羽目になった。

「私の何が悪かったというんだ」

「それはっ……あんたが……あんたがまた他の女を引っ掛けようとしてたからよ!」

 そう言いながらゴン、と脛を蹴られる。防御魔法を張ってなかったらもっと痛かったところだった。

「あんたに引っ掛けられるカワイソーな女の子を助けただけ! べつにあんたのことが好きだからやきもち焼いたとか、そーいうんじゃないから!」

 私とシモーヌの会話を見ていたらしい。そして、聞いていなかったらしい。

「シモーヌに二度と業務連絡以外で話しかけるなと言っただけだ」

「は?」

「アニカ」

「な……なによ……」

 アニカの顔が赤くなる。何か期待されているらしいが、そんなことは起こらない。

「アニカ、お前も二度と私に触るな」

「……は、」

「10年間も蹴飛ばされ続けて、もううんざりだ。アニカも二度と私に職務上必要な内容以外で話しかけないでくれ」

「な、なんで? あんたが悪いんでしょ、あんたが私以外の女の子と話すから!」

「アニカと話すよりよっぽど有意義だ」

「なんで、」

「アニカは私を蹴って傷つけるだろう」

「だからっ、あ、あんたが他の女の子と話すからっ……あんたは私のなのにっ」

 アニカが大粒の涙をこぼし始めた。泣きたいのはこっちだ。

「誰がいつお前のものになった? ずっとうんざりだったんだ、ずっと憎んでた」

「憎んでたって何よ! うそ! うそよ……ロニーは私のこと、大好きだって、」

「誰が言った?」

「ロニーのお兄ちゃんが、」

「じゃあ言ったのは私じゃないだろう」

 兄の入れ知恵だったらしい。兄もこの女に蹴られ続けて辛かったんだろう。弟に押し付けないで欲しい。

「私の兄にまとわりついていたから、兄が私に押し付けた。私は数少ない同郷の人間だから、ご近所どうしの仲が険悪になるのを防ぎたくて10年耐えた。それだけだ」

「じゃあ、ロニーは、好きじゃない私が蹴るのを、10年耐えてたの?」

「そうだ」

「ご……ごめ、」

「今更謝ってもらっても困る。忘れはするかもしれないが、許しはしないし、思い出し次第許さない気持ちになる」

「ごめん、なさい……」

「二度と仕事以外で話しかけず、私を痛めつけなければなんでもいい」

「ごめんなさい、……ごめんなさい」

 これで蹴られなくなれば万々歳だ。ああスッキリした。




「……きゃ!」

 三人目だ。ずっこけて派手にパンツを見せつけてくる。男爵令嬢カトリーヌ。所長の娘だ。

「いったーい……あ! もー、パンツみないでください!」

 無視無視。前二人と比べれば比較的穏やかだ。

「んもー、みんなに言いふらしたりしちゃダメですよっ。あ! おやつ食べませんか? どうぞ!」

 クッキーを押し付けてくる。

 こいつはとにかくわけわからんテンプレ行動をこうして繰り返し差し向けてくる。

 目の前で転び、パニエの中のパンツを見せつけてくる。ドロワーズ履けよ。このクッキーも九分九厘砂糖と塩を間違えた代物だ。味見してないものを押し付けるな。

「自分で召し上がりましたか?」

「え? うーん、私、味付けは見た目でする派なんです! でもでもっ、お父様も美味しいって言ってくださったんですよ♡」

 娘が真心込めて作った料理を美味しくないとは言えなかったんだろうな。真心どころか何もこもってない証拠に味付けがあからさま適当だけど。

「二度と渡さないでください」

「へ?」

「味見をしてない料理は絶対に口にしたくない派なんです」

「え、ええっと、」

「それと、先程わざわざ私の前で転んでいましたが、他の男のように興奮するということも絶対にありませんので、二度とわざと転ばないように」

「わ、わたしのこと、すきだから、危なくないように転ばないように言ってくれてるんですよね?」

「嫌いですよ」

 カトリーヌは両手でスカートをぎゅっと握った。正直嫌いだ。女のパンツに興味なんかあるわけない。いや、女の体に戻れたら自分の女性用ショーツとかは欲しいけど。

「……パンツ、みたくないですか?」

「次見たらあなたを燃やしてしまうかもしれませんね」

 びく、と震えて涙を流し始める。泣けばいいと思ってるなこいつら。

「お、お父様に言いつけますよ!」

「もう言いつけましたよ。はしたない娘で申し訳ないと謝罪を既にいただいております」

「わたし、わたし……」

「業務連絡以外のお話はお受け致しませんので、今後ともそのようによろしくお願いします」

「すきだったんです、ロニーさんのこと……」

「私は嫌いでした。二度と仕事以外で話しかけないでくださいね」

 ああ、すっきり。これだけいえばわかってくれるだろう。




 今日だけで三人もの女性との関係を改善した。

 なんてスッキリ爽やかだろう。早めにやっておけばよかった。

 改善したい女性関係はまだまだある。変な女は枚挙にいとまがないのだ。

 掻い掘りで池をきれいにするが如く、一網打尽にきれいにしちゃいたいところだ。


 まあ、一番改善したい女性関係は――過去の自分との関係であり、ようするにこの体を女の体にすることだけど。便利だけどしっくりこないんだよね、男の体。

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