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星の願い

作者: 冬樹リア

 本当の輝きを携えた眩しい人を見たことがありますか?

 僕は、本当の輝きを見たことがあります。何をやっても長続きせず、中途半端な人間だったけれど、それだけに色々な分野の眩しい人を見たことがあります。

 そして僕は、そういう人にはなれない、なんでもない様な、ありふれた、つまらない人間です。いいえ、なろうと思えば誰だって、きっと僕にでもなることはできたでしょう。

 だから、そうなれなかった理由も分かっています。

 長続きしない。中途半端。これです。

 貴方は「私は頑張った」「私は頑張っている」と自信を持って、誇りを持って誰かにそう言える何かがありますか?

 あるのなら、本当に凄いことです。自分を褒めてあげてください。或いは、既に誰かにそれを認めて貰えているかもしれませんね。

 けれど、無かったとしても自分を責めないでください。そんなことは汚点でもなければ、ましてや引け目に感じるようなことでもありません。珍しいことではありません。

 こんな説教じみたことを綴っている僕も、無い側の人間です。悲観することはありません。

 なんて、これを読んでいる貴方にとっては、まるで説得力の無い言葉かもしれません。ただ、僕は本当にそう思っています。

 別に、誰かを笑顔にできなくたって、この世界に自分の生きた証を残せなくたって、誰の記憶にも残らなくたって、構わないのです。

 それならなぜこんなものを遺しているかと言えば、それは単に、僕が幸せでなかったからです。心の底から楽しいと思えることが無かったのだと思います。

 好きなことはありました。本を読むこと。音楽を聴くこと。アニメを見たり、ゲームをするのも。ここではない世界に、そこに生きている人達に触れることが好きでした。

 それも、今にして思えば憧れからくるものだったのでしょう。

 そして、それらのどんな時間でも、僕は本当に心から楽しいとは、幸せとは思えていませんでした。或いは心が楽しくても、思考のどこかで、喉の奥に魚の小骨が引っかかったような煩わしさがいつでも蟠っていました。

 僕なんかが幸せになっていいのか?

 呪いのような、楔のような、鎖のような卑屈に溺れ、怯えていました。

 生まれつき誰かより劣っていたとは思いません。そもそも才能の有無は、人の輝きにとっては些細なことですし、僕は何不自由無い体で産まれてきました。

 強いて言うなら僕は、物心ついてから一度も、達成感という達成感を覚えてことが無いかもしれません。

 それは僕が頑張っていたかどうか、というよりも、自分の頑張りを認められないことの方に原因があるように思います。

 人の努力を画一的に評価する基準は無いのですから当然といえば当然です。

 僕は、例えば僕に周りの人より少し優れたことがあっても自信が持てず、自分の能力の劣っているところばかりを他者と比べてしまう質で、自分よりも優れた人はいくらでも居る、なんて考えを常日頃してしまうような人間です。

 自分の性能を正しく評価できていない、とでも言えばいいでしょうか。

 自信の無さが故に心が弱く、そのせいで長続きしない、という悪循環もあったかもしれません。

 挙句、僕は自分の弱さを人に曝け出すことについてひどく臆病でもありました。「自分は必要とされていないんじゃないか」なんて、強迫観念にも似た不安に日々押し潰されそうになっていた僕には、誰かに弱味を見せることなんてできませんでした。

 ただ、数少ない友人が悩みや不安を僕に打ち明けてくれた時には、そのほとんどが理解でき、共感もできました。不思議と、自分にも心当たりのあるものばかりでした。

 だから、僕はこれを、今悩んで、苦しんで、不安に怯えている誰かのために遺しています。

 世界は優しくないけれど、思っているほど厳しくもないかもしれません。きっと身近な誰かも、似たような悩みを抱えている人は居ます。

 無理に打ち明けるべきだとは思いません。僕も出来なかったことです。それを人に強要することはできません。

 けれど、その不安は、誰かに向けて言葉に出してしまえば案外簡単に理解を得られるものかもしれません。

 もし僕が、人の心の機微に人一倍鋭い人間で、他の人には受け入れてもらえなかったら、理解してもらえなかったら僕のせいです。謝ります。申し訳ないです。

 最後にひとつだけ。

 僕はこのメッセージを受け取った人の幸せを願っています。もし良ければ、僕の得られなかった分まで楽しんで、幸せになってください。


 ーーーーごめんなさい。

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