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探偵シュガーと遺言室

作者: モフきのこ

 探偵シュガーは私立探偵である。

 そして私立探偵でありながら、公的な組織からも助力を求められる探偵でもある。

 彼女の仕事は浮気調査と言った有名なものとは違い、殺人事件や紛失物探しを主としている。

 シュガーと名付けられたのは彼女が甘党であり、謎を解く際のルーティーンが飴玉を舐めながら謎を解くからだ。

 だからこそのシュガーであり、甘党探偵と言われるよりかはそっちの方がいいと、彼女が望んだからでもある。

 身体的特徴で言えば、身長は低め、撫で肩、そして前髪以外は全白色である。


 ……え?僕は誰だって?


 僕は三昧蓮馬。贅沢三昧と書いて『みまい』に蓮に馬と書いて『れんま』と読む男であって、シュガーさんの下で助手兼雑用として働いてる人間だ。

 とある病院で出会い彼女の手引きの下で探偵事務所に迎え入れる事になった。

 雑用はと言うと男性故の力作業、長身故の高所探索といったシュガーさんでは難しいものが特に求められている。後は金勘定、電子処理、受付、掃除etc・・・・・・。


「……僕の仕事多すぎません?しかもシュガーさんのズボラさ故の仕事ばっかりなんですけども」


「互いに補い合うのが探偵と助手の間柄だと私は思うんだけどねぇ〜〜〜」


 調子良くおちゃらける上司を放って置いて、そろそろ始めるしよう。

 探偵と助手が謎を繙く物語を。


 ごくごく単純な愛を残した遺言(ラストメッセージ)を。


 @@@@@


「なるほど『父の遺物を見つけて欲しい』ですか……」


 テナントビルの二階から上にある彼女の探偵事務所には商業利用(テナントの賃貸)以外では彼女は探偵の顔を見せる。


「遺物と言うと……彫刻や宝石類ですか?」


「いえ、わたしにも父が遺したものがわからなく、手をこまねいていまして」


「ほう……内容不明な遺失物って感じですかね?」


 夏の暑さで額に脂汗をかく男性は金有札束さんという、なんとも金運まみれた名前をしている男性だ。

 僕は見かねてクーラーのスイッチを押して、室内の温度を下げるようにした。


「それがですね。内容不明までとは言えません。そもそも遺失物でもありません」


 彼は何を言っているのか。遺失物は単純に忘れ物。彼の父が無くしたと言うことではないのか?


「父が無くしたから遺失物ではなく。わたしは『遺物』として扱いたいんです」


 しかし彼は言った。父が遺した物が分からないと。それなら立派な遺失物だろう。


「遺したものは分からなくとも、遺した場所は分かるのです」


「遺したものは分からなくとも、遺した場所は分かる・・・・・・?だったら探偵に頼まずに自力で解いた方がお金の節約に向きますよ?」


 金策に煩いシュガーさんもやりがいの無さそうな謎に、金勘定を提示して逃げようとしている。


「それがですね……。父が最後に遺したのは『メッセージ』なんです!!」


 …………ん?


「それ、答え分かってるくない?」


 それに関しては完全に僕も同意だ。『答え』が分かっている。先程までの問答はなんだったのか。

 そんな僕たちの反応に気づいたのか、慌てて札束さんは訂正した。


「違います!遺した『メッセージ』はあるのですが、問題は『メッセージ』の方で……ああ、えと、すぐに見せますね!」


 札束さんは大きめのショルダーバッグにクリアファイルに挟まれた『封筒』をファイルごと取り出した。


「父は作家で、昔からイタズラで担当者さんを謎解きに参加させたりするようなお茶目な人でした。だからこそ、わたしは最初は封筒の中に入っているのは小説だと思ったのですが、どうにも軽くて」


「USBでデータを運べる時代ですし、別に軽くともなんともないのでは?―――シュガーさん?」


「いや、もしかしてだけど、その中には『謎解き』の『メッセージ』が入っているのかい?」


「そうです。謎が書かれた紙が三枚ほど」


 シュガーさんが封筒を持ち上げる。


「ん?この封筒に『LAST』の文字が書かれてある。元々の小説の内容だったりする?」


「違います。父が好んだジャンルは現代風なライトノベルであって、その上そうそう英単語が出るような作品ではありませんでしたし」


 聞けば彼の父親―――金有厳三さんは和風チックでありながら、コミカルな会話劇とシリアスな剣戟が兼ね備わった小説だったらしい。


「そうか……カタカナ言葉は使っても英単語は使わないもんな」


「どういうことですか?シュガーさん」


「至極簡単な話だ。『読みづらい』。Wordで打ったりして横文字だったとしても、一時期主流になったケータイ小説と違ってほとんどが縦書きだ。中途半端に縦の横書きが加わる方が読者に混乱を生みやすい。会話劇をモットーにしてるんだったら、選択肢に入れにくい単語なんだよ」


 そうか……僕はあんまり読まないもんな、小説を。なんだったら参考書以外でまともに活字書を読んだ覚えがない。


「シュガーさんはよく読んでますもんね」


「まぁ〜〜〜ね。探偵小説だと、フィクションとノンフィクションが混ぜ合わさってできてるからちょうどいいくらいに読み応えが……なんだこれ?」


 半ばどうでもいい、会話の中でもシュガーさんは手を動かしていたのだが、三枚の紙を捲ったところで動きを止めた。

 そう。彼女の手元にある三枚の紙には三つの謎が書かれているだけでなく、それぞれ文頭に英単語の大文字が手書きで書かれていたからだ。


 一枚目は、『G』と書かれていた。

『①メダカ+シラヌイ=ゼンキチ(ヒント:アシイン=9160』と筆算の形式で書かれていて(ヒントは横に書かれてある)、さらにその上で『三桁の数字を求めよ』とも書かれている。さらに①の下には問題文が書かれている。

 これは後々もう一度触れるから、次の問題に移ろう。


 二枚目は、『F』と書かれていた。

『正しき鍵を求める者よ。私から餞別を送ろう。二つの嘘に耳を逆立てろ。牛の頭に潜り込むのは間違いで、鼠の穴に入り込むと、たちまち餌になるだろう。鍵を手に入れたくば、蛇に背中を睨まれながら、進み続けるのが吉である』―――そう書かれてあった。


 三枚目は、『S』と書かれていた。

『赤は黒よりも弱く後ろにつき、四つ葉は矢の後ろに、心は宝石の前をいく』と書かれている。


「———っとまぁ、シャレオツなのか、遺言にしては、少しばかりスケールの大きい話なのか」


「そうですね。数字を求められたら、続いては動物に最後は赤に黒?ですか……」


「まあそれにしても、一問目をさっさと解こうか―――と言いたいんだけど、金有さん。この問題に関しては貴方も解けるのではないですか?」


 それは確かにそうだ。奇をてらった二問目と三問目と違い、一問目はスタンダードな問題式だ。いわゆる覆面算。時間をかければ解ける問題。


「わたしもそう思って解こうとは思ったのですがどうにも解けなくて……」


「なるほど……じゃあ蓮馬。君が解き給え」


「僕ですか!?」


 いつのまにかコピーをとったらしい一問目の紙を半分に切ってシュガーさんは放り投げた。

 僕は慌てて取りこぼさないように、両手で受け取った後に文句を言おうとしたが、


「分担して仕事をしようじゃないか。なんせ一問目だけ②がある」


 ぴらぴらと揺らすもう一枚のほうは、②と書かれていて何かしら文脈のあうであろう、問題が書かれてある。


『②黄昏時を進む道、君は一つだけぶつかってしまう壁が見えるだろう。だけど恐れないで、あなたにはかに座が見守っていたのだから』


「ほんとチュートリアルにしては難易度がやらしい。れんま~~~。黄昏時って何時から何時?」


「えっと……17時から19時までです」


「ホント君は痒い所に手が届く男だねぇ~~~!!」


「シュガーさんがテキトーに行きすぎているんですよ!!」


「おいおいそんなに声を張り上げるなよ。クライアントがビビってるじゃないか」


「シュガーさんが煽ってくるからじゃないですか!!……はぁ、ちょっと黙ってくれませんか?」


「えぇ~~~?暇なんだよぉ~~~かまってくれよぉ~~~」


「あなたが作業を分担させたんですよね?僕に負担をかけたいんですか?———ん?もうわかったんですか!?」


 僕がこんなに鉛筆をカリカリさせている間にシュガーさんは暗算で終わらせてしまったのか!?


「うんにゃ。解らないことが解った」


「ただの無能!!」


 僕は諦めてクライアントで金有さんに泣きに行った。


「すみません……。金有さん。一緒に解いて貰うことはできませんかねぇ……?」


「はい……なんか居たたまれない気持ちになったので是非」


 今の僕の様子はどうやらずいぶんと酷かったらしい。


「えっと、でも、この問題文字が12文字ありますよね?これじゃあ問題が成立しない」


「ええ、覆面算は基本10文字に数字を当てはめる問題だから……どうしても答えが見つからない」


 聞けば金有さんもパッと見、覆面算にみえるこの問題も、家の者と一緒に考えたのだが、どうしても答えが見つからないそうだ。


「1から9に当てはめたとして……わかりますかね?」


「12文字だから1から9ではなく、1から11でしょうか?問題はこの覆面算を解いたとて、うちのシュガーさんが解いてくれるかどうか……」


 問題はそれこそ散らばっている。僕たちが今①を解いたとして、肝心の②を解くはずのシュガーさんが解けなければ意味がない。なんだったら、このポエムにも近いこの問題をもう一回頭を悩ませて解いていかなくてはならない。

『案ずるより産むがやすし』ではなく、『案じても産むは難し』だ。


 見ればシュガーさんは飽きたのか、それとも本当に僕たちを待っているのか、冷蔵庫から取り出したフルーツ牛乳をラッパ飲みしている。流石シュガーさん、健康に悪い。


「シュガーさん……。この飴ちゃんをあげますからいつもみたいにパパッと解いてくださいよ。飴をご所望しない限り、もう解けてるんでしょう?」


 僕の精一杯の皮肉だ。普段なら「ご所望」なんて言葉使わない。


「う~~~ん。まあ、解いてはいるし解けてはいるけれども。答えはなあ……ズルくないかい?せっかく分担したのに結局私が全部解くとただでさえ君は語り部なんだから影が薄くなるよ?」


 余計なお世話だ、影が薄いのは。


「だからってシュガーさん。解けなかったら解けなったで、クライアントに迷惑でしょ?」


「最悪壊せばいいんじゃないかなぁ」


「テキトーすぎでしょ。……そうだ!ヒント!ヒントくださいよ!!」


 露骨に嫌そうなシュガーさんをフルーツ牛乳を脅しの材料にして聞き出そうとする。


「親子……見たいですね」


 金有さんがそう、ぼそっとつぶやいた。


「この人の方が年上なんですけどね!」


「いえいえ、そういう意味で言った訳ではありません。まるで親子、兄妹のような間柄だ。とても懐かしくて」


「………………」


 そうだった。この人はクライアントである前に一つの人生を持っている人なのだ。そのうえ、父を亡くしたばかりで。


「そういや金有さん。お父さんと、仲は良かったのかい?」


「それが……わたしは別に父のことは嫌いだったのではありませんが。父はどうやらわたしのことを嫌っていたのか、わたしが話す度にそっぽを向かれたり、困った顔をされて……」


「ふ~~~~~~ん。まあいいや、ヒントを出してやろう」


「どうしたんですか急に!!」


 いやうれしいんですけども!!


「『目に見えるものだけを頼りにするな』ーーーってところかな?」


「……また、謎を増やすつもりですか?」


「違う違う。そのままの意味だよ。『その問題自体に大した意味がない』んだよ」


「問題自体には意味がない……」


 僕はじっと紙を裏返したり、光に当たらせてみたりと、そのままに見ようとはしなかったけれど……何も見つからなかった。


「問題自体に問題がないのなら……問題があるのは問題文自体?」


「問題文自体と言うならば10文字ではなく、12文字だというところですね」


「―――もともと10文字の覆面算は『十進数』で計算する。当てはめる問題だけど……。だとしたら、12文字は……『十進数』ではなくて……」


「そうだ!『十二進数』か!!」


「十二進数・・・・・・?ああ、綺麗な数法のことか!」


 本来覆面算での『十進数(十進法)』は0〜9まで数字を文字に当てはめて計算する。だがしかし『十二進数(十二進法)』は0〜9、ABの2文字を併せ持って計算する、本来存在しない(解けなくはないが)問題になっていた。


「十二進数は無いってことは、問題がおかしい訳じゃ無い。解けなくはないから。チュートリアルのように時間があればあるほど解けやすくなる」


「―――でも解けないってことは……」


「「問題は『十二』進数にあてはまるからだ!」」


「おめでとー!お疲れ様!時間がかかり過ぎて、昼寝が出来てしまうところだけどね!」


「褒めるか貶すかどっちかにしてください!」


「じゃあ……遅ぇよ。ナメクジだと思ったわ」


「何故そこで貶すを選択に!?」


「―――てへ!」


「可愛くありません!」


「ちょっと待ってください!ここで探偵さんが動いたと言うことは―――」


 シュガーさんはソファからガバッと立ち上がって、封筒を掴み上げる。


「謎解きは後回しにして、さっさと答えを検算しに行こうか!」


 〜謎解きタイム〜


 覆面算のように見えて、文字が12文字使用されている。つまりこれは『十進数』ではなく『十二進数』。『十二進数』で12時間の時計を暗示しており①の答えは時計となる。続く②は①の答えではなく、答えの過程で使用された『十二進数』が使用される。しかしここで②にある『かに座』が印象を残し、十二星座を暗示している。ここで必要となるのなのは①の『時計』と②の『十二星座』であり、三桁の数字を表すには『十二星座』の『時間』が必要になる。ここで②の『黄昏時』が必要となる。黄昏時は蓮馬が語ったように『17時から19時』で『ぶつかってしまう壁』は『一時間』の壁を指す暗示であるため18時以降は削除される。故に17時内の問題となる。そこで『かに座』が必要となる。一時間を十二星座で割ると一星座5分となり、5分ずつ他の星座に『見守られる』ことになる。問題では『かに座に見守られている』為、四番目に見守られる。つまり『20分』の時点で表すことが出来る(ここで16〜19がないのは『見守っていた』と過去形であるから)。しかし、17時20分では『三桁』の数字が分からない。だがここで『誤変換』があり、針時計は正しい時間を『誤認識』しやすいパターンがあるので、ここでは『17時20分』ではなく『5時20分』つまり一枚目の答えは『520』の三桁の数字となるのだ。


 @@@@@


「ここが金有家ですか……ずいぶん絢爛豪華な屋敷ですね」


「天空の城ラ◯ュタみたいだねぇ」


「いやその表現はどうかと」


 ラ◯ュタであるかはどうかとて、そのモデルとなった竹田城みたいに雲に囲まれている宮殿だ。


「小説家ってどれほど大成したらここまでの城を手に入れるだ?」


「芥川龍之介並みの著名度じゃないですかね?」


「著名度と人気度は違うんじゃない?」


「シュガー様、三昧様。遠路はるばるお越しくださりありがとうございます。私はここのメイドを勤めさせていただいております安田と申します」


 エドワーディアンなメイド服を身につけた彼女は僕たちを応接室へと連れていった。

 そこには先日会ったばかりの依頼人―――金有札束さんが既に僕たちのことを待っていた。


「言っていた通り―――部屋の鍵は開けなかったかい?」


「ええ。確かにパスワードのある錠部屋は動かさずにいるままです」


「よかったよかった」


「シュガーさんシュガーさん。何で部屋を動かずにいたんですか?」


「何言ってんのさ。わざわざ一問目だけ『時間を掛ければ解ける問題』を用意しているんだと思う?」


「えっと……チュートリアルだから?」


「そうだ。チュートリアルだからだ。チュートリアルだからこそ時間をかけれる。掛けれるから解ける。でも、他の二問は違う。本質的な数字を求めた第一問と違って、直接的な名称を求められていちゃ、どんな名探偵だってあぐらをかくだろ?」


「要は後半二つは目で見ないと答えが分からないって事ですか」


「そうともゆー」


 僕は安田さんが入れてくれたアフタヌーンティーとケーキを戴きながら応接室をぐるりと見回した。


「しかし……札束さんと源三さんの写真が多いですね」


 ガラス棚の中には札束さんの成長記録を語るかのように、さまざまな年代の彼が写っている。それと同じように彼と共に源三さんの姿も。


「母は私が生まれてすぐ心臓病で亡くなってしまし、父が私を育ててくれたのです」


「じゃあ、そこらにいたメイドや執事達は……」


「父が大成した後で雇った方たちです」


 言うに源蔵さんは札束さんが生まれた後からヒットしだしたそうだ。それまで支えてきた妻が先に亡くなってしまったことが心残りの一つだったとか。

 いくらかまってあげたくとも父子家庭で、人気作家の父親。寂しくないように先ほどの人たちを雇ったそうだ。


「私は父の背中を見て育ちましたが、どうも現実感がなく、成人になったときに家を抜け出したんです。あの時は浅慮な人間でしたよ私は。今でも父のあの顔は忘れられません」


「う~~~ん。でもここは居心地が悪すぎないか?こんな天空城じゃ、学校行くにもままないだろ?」


「いえいえ、私が幼いころは一般家庭の平均いくかどうかの家でしたよ。どうやら父の晩年この城を買ったらしく、父が亡くなったと聞いて慌てて向かった私は目を丸くしましたよ」


 札束さんはくすぐったそうに笑う。

 確かにそうだ、古き良き一般家庭から一転、こんな豪華な暮らしを父がしていたなんて誰も予想できない。


「……このガラス棚、開けてみても?」


 シュガーさんは一応断りをいれて、窓ノブに手をつかむ。


「いいですけどそれはどうやらはめ込み式らしく、飽きませんよ」


「え―――……マジだ。ピクリとも動かない」


 完全に固定されているらしくシュガーさんが力をいれてもガシャガシャとも音が鳴らなかった。


「……まあ、いいか。わざわざ開こうともしなくても、覗き込めるし」


「卑しい見方しないでくださいよシュガーさん」


「どこに卑しさがあった!?」


「探偵なのに泥棒のような見方をするからいけないんですよ」


「この世の性犯罪者は皆他人のせいにする!君のその類か!!」


「今、人のせいにしているのはシュガーさんなんですけどね」


 シュガーさんはこれ以上言い張るつもりはなく(なにかとぶつぶつ愚痴ってはいたが)、もう既に冷えていたアフタヌーンティーをグイっと呷るとパン!と両手を叩いた。


「それじゃあ行こうか!謎を解き明かすために―――!」


 @@@@@


 僕たちが札束さんに連れられて着いたのは、荘厳極まりない城には似つかわしくない平々凡々なドアだった。むしろこの城にこんなドアがある方が違和感が強い。だがしかし、そのドアの上には『蛇の間』と、匠の手で掘られたであろう標識があった。


「うん。確かにドアノブの上に鍵がはめ込まれている」


 ドアノブの上には三桁のダイヤル式の鍵錠があった。その代わりに鍵穴がない。これしか、鍵を開ける方法はないと語っているかのようだった。

 シュガーさんはそれに最初の謎で解いた『520』の数字を合わせると、ガチャ、とそれらしき音がなる。

 得信したようにシュガーさんがドアノブを引くと、ゆっくりとドアが開かれていって内部が明らかになった。


『久しぶりだね。札束』


「「「!?」」」


 三人の視線が部屋の中心に移る。そこにはキューティーなクマのぬいぐるみと時計、そして絶対何か入っているであろう宝箱があった。

 その宝箱は鍵穴が付いていて、それにあう合う鍵を探せと言っているようなものだった。

 そして、僕たちの視線の中心はそのクマのぬいぐるみ。そこから音がはっきりと聞こえた。


「父の声です!」


「生前録音したってことか……」


 渋い、イメージだから仕方がないが髭をきっちり整えている文豪のような、どっしりとした声。


『今ここで私の声を聴いていることは、きっと、私は死んでしまったのだろう』


「少年漫画かな?」


「しっ!」


『札束……お前の母―――美代子が死んでから必死に育ててきたつもりだったが……どうも父であることは、予想以上に難しかったよ。お前が家を抜け出した時に言われた言葉は今でも覚えている』


「父さんのような腰の曲がる人生は進みたくない」ーーーそう言ったのが札束の心を深く敷き詰めた。


「札束さん……」


「……いえ、大丈夫です。もう過ぎてしまったことだから……」


『だが、私は嬉しかったよ。私を超えていこうとしているのだと、胸が高鳴った。誇らしいよ、札束』


「父さん……!」


 源三氏の話を二人が聞いている間、シュガーはカチカチカチ、と時計が動いているのだけを見ていた。

 きっと一時間のタイムリミットは進み始めているのだろう、と考えながら野暮にならない程度に周りを見渡す。


 現在シュガー達は『蛇の間』の扉からそれほど遠くないところに立っている。一、二歩進んだ程度だと言った方がいいかもしれない。

 そして、そこは全体をほとんど見渡せる位置だと彼女は踏んでいて、実際死角である天井と背後以外は見えている。


 左右には個人的にはセンスのないと思われる絵、さらに右奥に化粧台、左奥には鍵付きで開戸の収納棚、真正面には暖炉、から右二つに通風口と通風口のおかしな設計、左手奥には写真が机の上に置かれていた。


 そして化粧台のある地面にはこれ見よがしに矢印が貼られていた。


『ここには札束だけか?それとも興信所の人でもいるのか?』


「……シュガーさん」


「ああ、いるよ」


 もちろんこれは遺言だ。シュガーが返したところで録音した人間には届かない。けれどシュガーは礼儀として彼の声に返事をした。


『もしもいるとしたら頼みがある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』


「……ああ、分かったよ」


『……時間を掛けて済まなかった。時計は、君たちが入ってから進み始めたはずだ。一周するうちに三問、解いてくれ』


 そう言って多少の雑音の後にプツンと音が途切れた。終わった、と言うことだろう。


 それと同時に―――


「さあ、謎解きを始めよう」


 パン!と手を叩いてシュガーさんは言った。

 そうしてメッセージが入っているであろう人形をのかしてシュガーさんは椅子に座った。


「探偵さん……?」


「蓮馬。飴ちゃんを」


「はい……!」


 僕はリュック備えのペロポップキャンディを取り出してシュガーさんに手渡す。

 シュガーさんは器用に剥がして、口の中に放り投げ、合わせた手のひらを顔の前に置き、目を閉じた。


「あの、探偵はいったい何を……?」


「シュガーさんが謎を解く時のルーティーンですよ。特に難しいと感じた謎を、ある程度の鍵を用意した上でああやって整理整頓して、答えに導いていくんですよ。その時に脳をかなり消費させるから飴が必要でその姿から『シュガー』と呼ばれているんですよ」


「なるほど……つまり、今探偵さんは全力で謎と向き合っているのですね」


「ええ」


 @@@@@


―――牛の頭と、鼠の頭の意味とは?


―――意味深に置かれた化粧台の矢印は?


―――私たちの通った『蛇の間』の真意は?


―――蛇に背中を睨まれて進む場所には?


―――どの装飾がミスリードでどの装飾が正しく答えが導かれる?


―――二つある通風口の意味と、暖炉には何が?


―――答えの先には何がある?


―――更なる謎が?


―――そこには私が解けれるようなものか?


―――それは、札束氏に関係があるものなのか?


―――あの遺言の真意とは?


―――最後を彼に解かせるには何の意味がある?


―――ああ、いや全く別の問題にまで着手しようとするのは駄目なところだな。問題は……どの道があっている。


―――平面か?立体か?


―――それとも……現象か?


―――違う、現状では名称に意味は無くなる。……あれ?


―――違う!違うかった!原点の始まりがズレていたんだ!私たちはあの封筒に入っていたのが問題だと思っていた。だが、源三氏は中に入ってから『三問』と答えた。彼がそう言う人物ならともかく普段なら言わない。


―――つまりこれは、


―――スタートダッシュでもチュートリアルでもなく


―――それこそ、ここの謎の一つだったとしたら?


―――なら、あの問題文に納得がいく。


―――どの問題にも、必ずあった謎の英単語。


―――『G』と『F』と『S』と『LAST』。


―――『FARST』に『SECOND』に『LAST』だとしたら、順番が分かる。


―――だったら、『G』はきっと『導く』の英単語『GUIDE』だろう。


―――一問目も、二問目も導かれるように出来ているのなら。


―――そうしたら、なんだ。『12』に関係がある問題か。


―――『鼠』に『牛』に『蛇』……そこまで並べられて『12』の数字があるならきっとあれが導く。


―――なら、答えは……。


―――あれ?だったら矢印は?


―――『SECOND』の問題に出てくるのか?それとも『LAST』に?


―――違うな。何かしらに必要な……。


―――鏡には、反射させる性質が……。


―――なるほど、そう言うことか。


 @@@@@


「謎はもう解けている」


 シュガーさんはそう、決め台詞を語ってくれた。

 ニヤリと確信をついた顔で。


「ならシュガーさん。この謎を」


「ああ―――この謎には一つ特別性があったんだ。二つ目の謎を解くのではなく、一つ目の謎を解くとして」


「一つ目……?」


「ああ、最初の問題文を見てくれ、君が気になった『英文字』があるだろう?」


「いや、まあ気になりましたけどそこには」


「源三氏は謎は『三問』と言った。私たちはそれを最初は封筒にある『三問』だと最初は思い込んだ。だけど違うかったんだ。きっと……謎は足りてない」


「謎は足りてない……ってあれ?なんで戻るんですか?」


 シュガーさんはスタスタと、背中を向けて歩き出していた。


「封筒自体に問題があったんだ『LAST』っていう謎が明白にそれでも抜かりなく問題が施されていたんだ。そう考えると妥当だろう……だってこれ一つでは解けない問題だったのだから。……そしてこの謎は封筒の第一問と源三氏の第一問のミックスだったんだ。ようは封筒の第一問の答えに導く『12』の数字、そして置かれた『蛇の間』それは『十二支』に導くものだ」


 だけど、とシュガーさんは言った。


「ここには鏡がある。鏡には反射する鏡像……ようは反転する特性がある。そこから反転させることを導かれる―――十二支を反転させることが必要になるんだ。鼠から始まり猪で終わる十二支の輪。そこから反転させると言うことは180度その輪を動かすんだ」


「……と言うことは、この『蛇の間』は動き出して『猪』になる?」


「ああそうだ。時計の12時間を表しているそれは十二支の輪で12時から始まる鼠は『蛇』を背にして暖炉の一つ隣の通気口。牛もその隣の通気口。反転させれば絵と開戸の棚になる。つまりこれがミスリード。正しかったのは『蛇に背中を睨まれる』だ」


 シュガーさんと同じように見上げるとそこには『蛇の間』ではなく、『猪の間』が書かれてあった。

 札束さんが困り果て最終的にでも見つけられるように設置された違和感が。そこにはあった。

 僕はシュガーに言われ、それを手に取るとポロッと簡単に外せた。


 そしてその裏には銀色の鍵が嵌め込まれていた。


「さあ、謎解きを続けよう」


 @@@@@


 札束さんの手で開戸の鍵穴を挿して回す。

 すると、ガチャと落ち着いた音が鳴って、札束さんが戸を開く。


 そこには―――トランプが並べられていた。


「―――そうだと思ったよ」


 シュガーさんはそれだけ言った。


「シュガーさん。もしかして最初から―――?」


「そうだよ。これだけヒントが多かったじゃないか。矢と四つ葉、心と宝石、そして赤と黒。西洋の矢には曲線な矢尻があり、その形からクローバー、四つ葉はそのまま、心は英語にすればハート、宝石はダイアモンドーーーつまりダイヤ。憶測に過ぎなかったが、四つも出されちゃ必然と予想がつく。赤と黒もね」


「……すごいですね。探偵さんは」


「ひらめきの秀才なだけだよ。特別性のない……ね」


 シュガーさんは謙遜の何もせず、そう言った。まるで自分を卑下するように。

 すると少しむず痒くなったのか、ぽりぽりと頬をかき、さて次の謎は何なのかなぁ〜と僕たちをのかしながら進んだ。


 そこには―――


『♠︎5♠︎9♠︎5♣︎A♣︎A♠︎9♠︎J♠︎A♣︎10♠︎A♣︎5♠︎A♣︎A♣︎8

 ♡J♡A♢K♢2♡J♢8』


―――こう並べられていた。


 羅列が分からない。


「シュガーさん……もう一本いきますか?」


「いや、もう謎解きの時間だぜ」


「!?」


「もう、解かれたのですか!?」


「ああ、トランプのは四つの記号があり、その枚数は13×4の52枚。アルファベットはA〜Zまでの26」


「ちょうど2倍だ!」


「そして『四つ葉は矢の後ろに、心は宝石の前を行く』これはアルファベットの羅列を説明している。ならば、ハートはダイヤの前に置いてアルファベットに当てはめる」


「だったら!四つ葉のクローバーの前に矢のカクローバーを置いて当てはまる!」


「そう。そこからアルファベットに当てはめて、トランプを呼べば―――一行目は『EIENNI(永遠に)KAWARANU(変わらぬ)』二行目は『KAZOKU(家族)』となるんだ」


「永遠に変わらぬ……家族。どういうことですか、シュガーさん」


「変わらぬとは『歳をとらない』『変化しない』と言うことだ。すなわちそれは―――」


「家族の写真だ」


 札束さんはそう呟いて写真立てを掴んで裏の箱を外す。するとそこには布に包まれた鍵があった。

 その写真立ては唯一札束さんが産まれたばかりの赤子。そしてその母親美代子さんの姿があった。


「父さん。……永遠に、変わらない……」


「源三氏は家族の事を……札束さんの事を愛していたのだと思いますよ」


 そうシュガーさんはいつもとは違う。優しい笑みを見せた。先だった人生の先輩に敬意を評して。


 @@@@@


「そういえば良かったんですか?謎を札束さんに解かさないで……」


「言ったろ?ようは最後の問題を解かせればいい」


「―――もしかして最後の問題を予想してますか?」


「さあね」


 シュガーさんは何食わぬ顔で既に舐めきったキャンディの僕を咥えていた。


 そして札束さんは問題から手に入れた鍵を、最初に置かれていた中心の宝箱に挿す。

 そして宝箱を開くと―――


「あれ……紙が一枚?」


「土地所有権かもよ」


「そんな所に置くもんなんです?―――置くか」


 何故か納得してしまった。シュガーさんがいないとイタチごっこを繰り返していたのかもしれない。それに今現在の時間も最初の話を聞いていた上でももう30分を超えている。


 だがそこには名前が書かれてあった。


『狩野顔 久美』


 そう、書かれてあった。


「これは―――」


「ちょっと待ってくださいシュガーさん」


「ん?」


「これは僕に解かせてください」


「いけるのか?」


「任せてくださいよ。シュガーさんの助手ですよ」


 フッ、とシュガーさんは笑うと。


「任せた」


 そう言ってくれた。

 僕はそう言って札束さんから紙を貰う。


 最初には何かしらの違和感があった。

 無理やり名前に押し込めた違和感が。

 作り方などきっと、適当、極まりない、どうでも良かった事。

 それは奇跡的な組み合わせで、作られたものではない。

 それは強引に作られた、組み合わせ。

 適当に、強引に、乱雑に出来てしまったもの。

 キーパーツでもキーワードでもない、ただのキー。


 僕は急いで慌てないよう丁寧に紙をハサミで一文字ずつ切る。


 そして、バラバラに見る。


「分かった……分かった!」


「そうですか!蓮馬さん!」


「はい!札束さん!」


「……なんか男の友情ってやつが出来上がってるなぁ……」


 シュガーさんはそうぼやいたが。まあ、元気なら全然いいんだけどさぁ、と納得している様子だった。


「それで……どういう感じで分かったんだい?」


「これは……アナグラムでしょ!」


 アナグラム……言葉遊びの一つで、単語または文の中の文字をいくつか入れ替えることによって、全く別の意味にさせる遊びのことだ。


「つまるところここは『狩野顔 久美』をひらがなにして『かのがお くみ』に置き換えて、並び替えると―――『かがみのおく』になるんですよ!」


 だから最後の問題があるのは鏡の中―――つまり!


「化粧台の中にあるんですよ!」


 そう言って僕は化粧台の鏡を外す。

 そこには―――


「金庫……?」


 プッシュ式の小さな黒金庫が置かれてあった。


「これって……何桁の答えか分かりませんよね」


「そうだね?リセットボタンも無いし、もしかしたら一発限りかも」


「そんなにな答えですかね?」


「多分ね。でも解くのは君だよ札束さん。なんせ依頼人の父親から……最後の問題は君に解いてほしいって」


「そうですよね……分かりました!やります!」


 札束さんは金庫を引き抜いて、金庫を睨みつける。


「僕は分かりましたよ。シュガーさん」


「ああ、私も分かってしまったよ。蓮馬くん」


 なんとなく、発端者の人間性を考えてみれば分かってしまうような問題だ。

 むしろ当事者ではないからこそ見抜けたのかもしれない。


「分かったんですか!?蓮馬さんもこんなに早く!」


「何、僕がバカみたいな考え方を?」


「いえいえ!?特段その気持ちはなかったのですが!―――どうも、探偵さんよりもどこか、抜け目が……」


「はいはいどーせバカですよ!」


 札束さんの言葉に頰を膨らませる。

 事実だけど!事実なんだけど!


「……それで、何かヒントを」


「だ、そうだけれど言っておくかい?蓮馬よ」


「そうですね……あなたの父親はあなたのことを大切にしていた事ですかね?」


「父さんが、私のことを大切にしていることがヒント……」


「極々単純で、パスワードにしちゃNGなものが答えだよね」


 父は私の事を大切にしていて、パスワードにしていてはNGなものが答え。

 だとすれば、もしかして、もしかすると―――。


「チャレンジしてみてもいいですかね」


「いいと思うよ?君の選択だ。君だけの行動だ」


 そうすると札束さんはゆっくりと、それでも確信を持ったような手でボタンを押した。


 @@@@@


 今から話すのは後日談になる。


 シュガーさんは満足気にケーキを食べていた。

 いつもは糖尿病やらなんやらで極力禁止にしているが、今回はまあいいだろう。


「それにしても分からなかったのは……だな」


「どうしたんですか、シュガーさん」


 フォークを振って思考を巡らせるシュガーは世間話をするように語った。


「最後のパスワードが札束さんの誕生日ってのは分かってたんだけどさ……あの中身が分からないんだ。母子手帳なんてさ」


 シュガーさんは後々、母子手帳のコピーが仕舞われている事を札束さんから知った。

 だがその本物の母子手帳を手にした札束さんは泣いて喜んでいた。


「分かりますよ。なんとなく」


「そーなのか?」


「ええ、僕だって元々産婦人科で働いていませんよ」


「それで、どーなんだい?」


「母子手帳ってのはですね。出生記録が載ってあるんですよ。だから……彼は、本当に育ててくれた親が実の親だってことに安心したんですよ」


「ん?それはおかしくないか?元々札束氏は父親があの人だと知っていたハズだろ?」


「心理的に違うものなんですよ。実の父親なのか、育ての父親なのか、それとも全く知らない赤の他人だったかもしれないとかは―――」


「―――そういうものか」


「そういうものです」


「私には分からなかったなぁ。それは、そういう気持ちは」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 僕は何も言わない。

 野暮だからだ。

 彼女の生きている世界は僕の生きている世界とは違う、彼女には彼女の人生があって、僕とは視線も感情も全くの別物だからだ。


 その点札束さんと源三さんは最後の最後で同じものを見ることが出来たのだろう。

 幸せで、不幸せな、表裏一体の幸不幸。そこにはたった一本。『家族』という太い糸がそこにある。

 無意識だろうか、なかろうか、こんがらがってしまったソレを優しくほぐしていったのだ。


「よし!蓮馬!気分がいい!今日は甘いものパーティを繰り広げようか!」


「気分がよくても身体に悪けりゃ意味ないですよ!今日はそのケーキで我慢してください!」


 甘いものが大好きで、甘いもので答えを導く名探偵。


―――探偵シュガーに。

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