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先祖返りの町作り  作者: 熊八


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82/230

三代目領主と初代様

高等学校の開校から、2年ほどが経過した頃。


56歳になっていたエルクは、

ちょうど30歳になったエストに家督を譲り、

引退した。


このことから、

エルクが先代様と呼ばれるようになり、

私は初代様と呼ばれるようになった。


家督を譲るときのエルクの言葉は、

以下のようなものである。


「エスト。これからは、お前が領主だ。

 私ももう年なので、

 そろそろ、のんびりと余生を過ごしたい」


エストが応える。


「お父様。本当に長い間、お疲れ様でした。

 今後は私が領主として、このガインの町を、

 発展させていきたいと思います」


エルクは、

エストに領主としての注意点を述べる。


「いいか、エスト。

 ふんぞり返っているだけの、

 他の貴族達の話は聞かなくていいが、

 税金を納めてくれる、領民達の話には、

 良く耳を傾けるようにしなさい」


エストは頷いて、肯定する。


「ええ。良く分かっています。

 おじい様の教えは、ちゃんと私にも、

 受け継がれています。


 それに、何か困った事があれば、

 物知りのおじい様に相談しますので、

 そんなに心配しなくても、

 大丈夫ですよ?」


私もエルクをねぎらう。


「エルク、お疲れ様でした。

 今後はのんびりと、

 隠居生活を送ってください。


 これからは、

 エルクとルースと私の3人で、

 あちこちに遊びに行きましょう。

 昔のようにね」


エルクも、微笑みながら同意する。


「それはいいな。

 それじゃあ、早速、

 仲良し3人トリオの復活と、

 行こうじゃないか」


それからの私達は、宣言通り、

あちこちに3人で遊びに行くようになった。


目に入った町のレストランに、

ふらりと入ったり、

領民と一緒に、

北の小川で釣りを楽しんだり、

3人で狩りをしたりした。


私の無限の寿命では、

いつかはこの二人とも、

別れなければならないと、

重々承知してはいるが、それでも今だけは、

このような、

楽しい日々がずっと続けばいいのになと、

思っている。


そんなある日の事である。

エルクは楽しそうに会話を始める。


「なんだか、昔に戻ったみたいだな」


ルースも同意する。


「私も、そう思う。

 エルクとヒデオの3人で遊ぶの、楽しい」


私も微笑みながら、会話に加わる。


「二人とも若返っているみたいですね。

 口調がすっかり、昔と同じですよ?」


ルースとエルクも気付いたようだ。


「言われてみれば、その通りだね。

 自由な平民に戻ったみたいで、

 私はこっちの方が好きかも」


「そうだよなー。

 お貴族様にあこがれてはいたけど、

 俺も今の方が、気楽でいいや」


そんな楽しい日々を過ごしていたある日。

メイは第二子を出産した。


今回は、比較的安産であったが、

それでもゴランさんは心配だったようで、

私は再び、

大地の神様への祝詞を、

唱え続ける事になった。


生まれた子供は、また男の子で、

後にリックと名付けられた。


ゴランさん譲りの茶髪と、

メイ譲りの青い瞳をした、

元気な赤ちゃんである。


涙もろいゴランさんは、またしても、

涙を流して感動していた。


その様子を、ガイン家の家族は皆、

微笑みながら見ていた。


隠居したエルクは、それからは、

孫たちの様子を見るために、

たびたびメイの家を、

訪ねるようになっていた。

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