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先祖返りの町作り  作者: 熊八
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魔力

スローライフでありながらも、

少し充実した日々を過ごしていくうちに、

二年が過ぎ、

私はようやく待ち望んだ10歳になった。


10歳の儀式の後に、鼻息も荒く、


「魔法を教えてください!」


と、祭司長に詰め寄ったら、


「まあ、落ち着くのじゃ。明日には教えるからの」


と、宥められた。


ルンルン気分で寝床に収まりながら、

楽しみ過ぎて、なかなか寝付けない夜を過ごした。


翌日、鼻歌でも歌いだしそうなぐらい、

上機嫌な私の対面に、祭司長が座っている。


「まずは、魔力を感じる事からじゃ」


祭司長はそう言うと、

私と両手を結んで輪のようにした。


「何か感じたら教えよ」


目をつぶって、体の中に意識を向ける。


しばらくすると、

右手から何かが入って来るような感覚があり、

それが左手から出て行くようだ。


「何かが右手から入って来て、

 左手から出て行くように思えます」


「それが魔力じゃ。

 やはりおぬしも、先祖返りじゃな。


 里のものでも、四半日くらいは、

 かかるものなんじゃが」


そして、そのまましばらくすると、

流れが止まった。


「流れが止まったみたいです」


「よろしい。


 普通は、何度かこれを繰り返すのじゃが、

 おぬしなら大丈夫じゃろう。


 手のひらを合わせて、それを一人でやってみよ」


手を合わせてやってみる。

なんだか、すごく流れが悪いように感じるが、

何とか流れているようだ。


「それで良い。


 後は自分でその感覚を磨き、

 もっと早く流れるように、精進せよ。


 これが、魔法制御の訓練の基本じゃ」


「はい! ありがとうございます!」


満面の笑顔で答える私を、

祭司長は微笑みながら見ていた。


これが魔石作りに繋がり、

やがては外での生活の収入源になる。

思い描いた人生設計が、

順調に進んでいると感じた私は、

それから、ひたすら訓練を続けた。


テンションが上がりっぱなしの私は、

寝る時間も食事の時間も惜しんで訓練に費やし、

4日目。


最初に比べると、

かなりスムーズに流れるようになった。


ふと気付いたら、目の前に、

なんだか微笑ましいものを見るような、

祭司長の生暖かい視線があった。


「祭司よ。

 うれしいのは見て分かるが、やりすぎじゃ。

 今日はもう休め」


「えー。嫌です。もっとやります」


「そうか。素直に休むなら、

 明日は魔石に魔力を込める方法を、

 教えようと思ったのじゃが、

 いらぬ世話じゃったの」


「止めます! 今すぐ止めます! 今寝ます!」


寝床に慌てて飛び込んだ、私を見た祭司長は、

笑いながら、


「では、また明日の」


と言った。

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