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先祖返りの町作り  作者: 熊八


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リスティン王国の終焉

ヴィジャス砦を陥落させた我ら主力軍は、

この戦争の総仕上げとして、

王都攻略を目指して進軍を続けていた。


最前列に装甲車部隊をズラリと並べ、

空には熱キキュウ部隊を全機浮かべた状態で、

ゆっくりとではあるが、

可能な限り整然と進軍させていた。


「ヒデオ将軍。

 いつもにもましてゆっくりな進軍の狙いは、

 いったい何ですかな?」


皆不思議に思っていたようで、

代表してゲイル将軍が質問を繰り出してきた。


「心を折るための演出ですね」


私は簡潔に答えを述べる。


「難攻不落で有名なヴィジャス砦ですら、

 二日と持たずに陥落させるだけの力が、

 こちらにはあるぞと、

 誇示しているのですよ」


そう。これは一種の示威行動だ。


例えご立派な王城に籠城しようとも、

我々には意味がないぞと脅しているのだ。


そして、ゆっくりと喉元に迫ってゆく事で、

真綿で首を絞めるように、

プレッシャーを与え続けているのである。


「まあ、無駄かもしれませんが、

 心を折る事ができれば、

 無益な戦いをしなくても相手を下せますから。


 戦わずに勝てるのであれば、

 それが一番良いのですよ」


私はこう、説明を締めくくった。


そうすると、

別の幕僚から思わぬ提案をされる事になる。


「なるほど。意図は良く分かりました。

 しかし、それでしたら、

 最も敵にプレッシャーを与えられる存在を、

 忘れておられますよ?」


「ほぅ。それは何ですか?」


「ヒデオ将軍ご自身です」


「へ?」


私は思わずポカンとして、

間抜けな声で聞き返してしまった。


彼らの言によると、

一連の新兵器は確かに強力ではあるが、

それら全てを作り出したのは、

他ならぬ私自身であると指摘された。


そのため、

味方からは軍神のごとくあがめられているが、

敵にとっては、

悪夢のような存在として認識されているらしい。


「だから、私が言ったでしょう?

 王侯貴族達は、

 絶対に敵に回してはいけない相手に対して、

 喧嘩を売り過ぎたのですよ」


とは、ゲイル将軍の言である。


「ですから、ヒデオ将軍。

 あなた自身が神輿となって、そうですね。

 あの装甲車の上で存在を誇示してください」


思わず私の頬が、ヒクッと引きつる。


「いや……。

 あの、それはとても恥ずかしいので、

 できれば勘弁して欲しいのですが……」


私は歯切れも悪く拒否しようとした。


しかし、私が陳列されると、

敵に対する威圧効果の他に、

味方を鼓舞する効果も絶大だと、

口々に説得を受けた。


(こ、これも仕事の内と割り切りましょう)


思わずトホホと言ってしまいそうな、

心の内を無理やり押し殺し、

黙って了承するハメになってしまった。


彼らの行動は迅速だった。


ただ、装甲車部隊内で、

誰が私を乗せて運ぶかでモメにモメたそうだ。


最終的には決闘騒ぎにまで発展しかけたので、

私に直接決めて欲しいと言われた。


私は投げやりにその場でワシのクジを作り、

抽選会を行う事を宣言した。


その方法はあまりにも、と苦情を言われたので、

投げやりついでにヤサぐれながら、

建前を述べる。


「一応、私は総大将ですからね。

 私が死んでしまうと敗北になってしまいます。


 ですから、

 最も幸運なものに守って欲しいのですよ」


こうして、どうでもいい争いは回避され、

レーニという若い兵士が当たりクジを引き当てた。


そしてその日の内に、

装甲車の上で皆に見えるような高さの椅子が、

取り付けられた。


私はそこに座らされ続けるという、

羞恥プレイに耐えざるを得なくなった。

なってしまった。


ことさらゆっくりと進軍する事を決めた、

過去の自分の後ろ頭を、

全力で殴り飛ばしてやりたい。


そして1か月後。ようやく王都に到着した。


熱キキュウ部隊のいくつかに、

ボウエンキョウを持たせ、

偵察に出した。


そうすると、

明らかに弓の届く高度まで下りてきて、

じっとボウエンキョウを使っている。


「あんな高度で大丈夫なのでしょうか?」


私はとても心配になったが、

どの熱キキュウにも攻撃される事なく、

無事に偵察任務を終えて帰還してきた。


そして、意外過ぎる結果が報告された。


「戦う準備をしているものは、誰もおりません」


「では、彼らは何をしているのですか?

 もしかして、降伏の準備ですか?

 それにしては、使者も来ていませんが……」


「それが、その……。

 酒宴を開いて、

 ドンチャン騒ぎをしてるようにしか、

 見えないのです」


これは何かの罠かと疑った私は、

さらに地上からも斥候を多数放った。


そうすると、

事実誰も防具すらまとっておらず、

すんなりと内部に潜入できたと報告を受けた。


実際に酒宴も開いていて、

真昼間から大酒をあおっており、

仮に罠だったとしても、

あれではまともに動けないだろうとも言われた。


「これは、いったいどういう事なのでしょう?」


そうすると、

王城で料理人として働いている市民と、

接触したものがいたらしく、

内情を語ってくれる。


「それが、ヒデオ将軍の脅しが少々、その、

 効き過ぎたようでして。


 心を完全に折られて抵抗する意思を失い、

 貴族どもは現実逃避を開始したそうです」


「え? では、財産をまとめて、

 逃げ出す事すらしていないと?」


「はい。どうも、その気力すら、

 失っている模様です」


予想の斜め上の答えであった。


それでも私は念には念を入れ、

空挺部隊から人を選りすぐって王城に向かわせた。


空挺部隊にしたのは、

彼らは本来、

敵地のど真ん中に降下して戦う部隊だからだ。


なので、罠にはまって王城内で孤立したとしても、

彼らであれば生還できるだろうと考えたのだ。


罠である可能性が完全には否定できないからと、

至極真面目に説明したが、

皆からは心配のしすぎだと笑われていた。


実際にその通りであったようで、

誰一人抵抗するそぶりすら見せず、

直前まで酒をあおって、

そのまま捕縛されていったそうだ。


今は国王を含め、全員まとめて、

王城の地下牢に放り込んでいるらしい。


こうして、

拍子抜けするほどあっけなく王都は陥落した。


この日、この時をもって、

リスティン王国は終焉を迎えたのであった。

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