ガイン自由都市、立つ
それから1年ほどが過ぎた。
いったん燃え盛り始めた反乱の炎は、
紅蓮の大火となって瞬く間に国中を席巻し、
燃え広がっていった。
平民の傭兵達が反乱の鎮圧を拒否し、
あげく反乱に加担していたため、
各地で領主館が占領されていった。
しかし、
最初の方こそ勢いのあった反乱ではあるが、
各自がバラバラに戦っていたため、
各個に撃破され始めた。
そのため、
次第に貴族連合軍の勢いに押されだしていた。
(兵力の集中運用等の用兵に関しては、
さすがに貴族側に一日の長がありますか)
このままでは、時間さえかければ、
反乱が完全に鎮圧されてしまうと判断した私は、
次善の策をユキムラに進言する。
「ユキムラ。もはや時間切れです。
こちらから打って出ましょう」
ユキムラは少し不思議そうな表情をして、
私に確認を取る。
「ですが、大おじい様。
それでは、平民自身の手で、
革命をなす事ができなくなってしまうのでは?」
私はそれに頷きを返し、
肯定しながら反対意見を加える。
「ええ。それが一番良いのは確かです。
ですが、現在のように、
各地でバラバラに戦っていたのでは、
各個に撃破されて、
やがては鎮圧されてしまいます。
これからは時間をかけるほどに、
平民側が不利になってゆきます。
ですから、ここで私達が先頭に立って、
反乱軍を一本化せざるを得ないでしょう」
ユキムラは納得した様子で、
近場の官僚の一人に声をかけて、
会議の開始を指示する。
「分かりました。では、そこの人。
すいませんが、
主だったものを会議室へ集めてください」
そうして始まった会議では、
まずは私がこちらから打って出る意義を唱えた。
「このように、兵力を集中的に運用し、
分散している敵を各個撃破するのは、
兵法の常道です。
これらの用兵に関する知識が貴族側にはあり、
平民側にはありません。
このままでは、この内乱は、
平民側の敗北で終了してしまうでしょう」
だからこそ、ガイン自由都市が音頭を取って、
反乱軍をまとめて一本化する必要があるのだと、
説明した。
それに対する反対意見は、誰からも出なかった。
皆もこのままではまずいと、
重々承知していたのだ。
それからの会議では、
細部を詰める作業だけが行われた。
そして早速翌日から、
反乱軍を組織するので、
ガイン自由都市に集まるようにとの、
触れを出して回ってもらった。
「ガイン自由都市がついに立ち上がってくれた」
この知らせは国中を瞬く間に駆け巡り、
続々と反乱軍志願のものが、
集結し始めるのであった。




