決意
それからしばらくが経過した頃。
私は里帰りしていた。
新しい子孫の誕生等、
祭司長にいろいろと外の世界の出来事を、
面白おかしく伝えていた。
祭司長はコロコロと笑いながら、
私の土産話を聞いてくれている。
彼女は、私よりもかなり年上で、
長い年月を生きているはずであるが、
その笑顔は、
どこまでも素朴さが残る素敵なものだ。
(ああ。私はとっくの昔に、
この笑顔の虜になっていたのですね)
私はこの時になって、ようやく、
自分の恋心をはっきりと自覚した。
その時、ふと、
エストの訃報を知らせた時の様子が、
思い浮かんだ。
エストの旅立ちを知った祭司長は、
うつむき加減で、ただ一言、
吐き捨てるようにしてつぶやいた。
「これじゃから、先祖返りの長すぎる寿命は、
呪いの類じゃというのじゃ」
その言葉を思い出した時、
私はある事に気付いた。
(私一人ではとても耐えられない、
子供達との別れも、祭司長様と二人でなら、
きっと……)
そこまで考えを進めた後、
私はある事を強く決意する。
(いつか、王国での仕事を全て終えた時、
その時こそ、私は……)
その時、チラリと、クリスさんの顔が浮かんだ。
私は心の中でだけ、そっと、
クリスさんに平謝りしながら、
祭司長との楽しい会話を続け、
今回の里帰りを終えた。




