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先祖返りの町作り  作者: 熊八


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確率論の特別授業

私はダイガクの学長として就任したため、

高等学校の時と同じように、

授業の進捗の確認も含めて、

時々、特別授業を行っていた。


これは、そんな特別授業の一幕である。


「学長先生。今日の授業内容はなんですか?」


最前列に陣取っている、

勉強熱心そうな女子生徒が、

好奇心に満たされた目で質問をする。


私は、それに微笑みを返しながら説明をする。


「今日は、確率の落とし穴についてですね」


そう言って、少し周りを見渡してから、

内容を語る。


「確率というものは、

 数字から受ける印象以上に、

 望まない結果が生じやすいというお話です」


私は、そのように前振りを述べてから、

持論を展開していく。


「例えば、

 95%の確率で勝てる勝負があったとします。


 この数字なら、まず間違いなく勝てると、

 思いませんか?」


先ほどの質問をした女子生徒をはじめ、

いたるところで頷いている様子がうかがえる。


「こういう数字は、実は、

 望まない結果の数字を分析した方が、

 より正確な意味が分かります。


 この場合は、5%ですね。

 これを分数に直すと、いくつでしょう?」


私の質問に、

一番元気良く手を上げた男子生徒を、

私は指名した。


「100分の5ですから、20分の1です」


「はい。正解です。

 皆さんは優秀ですから、

 この程度は簡単ですよね。


 つまり、20人に1人は、

 負けてしまうという確率になります。


 この教室の皆でこの勝負をした場合、

 2人ぐらい負ける人が出てしまうという、

 意味になります。


 そう考えると、案外負ける事もある確率だと、

 思えてきませんか?


 自分がその2人になりうる数字だと、

 思えませんか?」


私がそう述べると、頷いている生徒が多数見える。


先ほどの最前列の女子生徒は、

とても驚いた顔をしながら、頷いてくれている。


「この傾向は、繰り返し確率で遊ぶ、

 ギャンブルのようなゲームでは、

 特に顕著になります。


 例えば、99%勝てる勝負があったとします。


 これなら、100分の1しか負けませんから、

 ほぼ確実に勝てる勝負でしょう」


生徒達は、皆真剣に聞いてくれている。


私はそれに手ごたえを感じながら、

続きを語る。


「この勝負を20回行った場合、

 少なくとも1回は負ける確率は、

 どのような計算式で求められますか?」


今度は、控えめに手を上げている男子生徒を、

指名した。


「1 - 0.99の20乗です」


「正解です。やはり、皆さん優秀ですね」


私は、微笑みを絶やさないように注意しながら、

結論を述べる。


「これを手計算で求めるのは大変ですから、

 デンタクの魔道具を使って計算しました。


 それによると、この値は、

 約0.182となります。


 つまり、確実に勝てるはずの勝負で、

 実に2割近くも負けてしまうという、

 計算になってしまいます」


驚いている顔をしている生徒達を、

私は頷きながら見渡し、

結論を述べる。


「このように、確率の数字は、

 自分にとって不利な方を、

 詳細に検討すると、

 より正確な意味が判明します。


 皆さんも、確率で物事を考える際は、

 その表面的な数字だけを見るのではなく、

 裏側の意味するところを、

 きちんと判断するように心がけてくださいね」


この日の特別授業は、

生徒達の受けがとても良かったため、

キョウジュ達に頼まれて、

毎年の恒例行事として、

組み込まれる事になったのであった。

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