表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの町作り  作者: 熊八


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/230

献上拒否

デンタクが発売されて、しばらく経過した頃。


ガインの都市の領主館に、

見た事もないほど立派な馬車がやって来た。


馬車から降りてきた男性は、

国王の使者を名乗り、応接室の上座で待っていた。


執務室で仕事をしていたエストと私は、

呼ばれてその前にたどり着くと、

いきなり跪くように言われ、

なんだか良く分からないうちに、

国王様のありがたいお話とやらを聞かされた。


「国王様は、

 デンタクの魔道具にとても興味を示された。


 大変名誉な事なので、

 すぐにデンタクを献上するように」


それを聞いたエストは、

跪いたまま私に視線を向け、

語り掛けた。


「おじい様。私が領主として許可しますので、

 デンタクの開発者として、

 そして、この領地の初代として、

 使者様に言ってやってください」


私は頷いて、使者を見つめて返答する。


「そのような理不尽な命令は、

 断固として拒否します」


「なっ……」


使者は顔を真っ赤に染めて、

ワナワナと震えている。

私はそれに追い打ちをかけるように、

すくっと立ち上がって、そのまま話を続ける。


「5年前に他の貴族家達が、

 この都市に向かって挙兵しようとした時、

 王族は何をしてくれましたか?


 仲裁も何もしてくれませんでしたよね?

 肝心な時に全く助けてくれない王族なのに、

 こんな時だけ、

 都合よく従うように命令されても困ります。


 いまさら、ふざけているのですか?」


使者は、私とエストを交互に睨みながら、

確認を取る。


「本気なのか? それとも、

 国王様の命令を拒否するとどうなるか、

 平民上がりには、やはり理解できないのか?」


私はその目を真っすぐと見つめたまま、

続きを語る。


「別に売らないと言っている訳ではありません。

 欲しいのでしたら、

 普通に予約を取って、

 順番を守って買ってください」


「ふざけるな!!

 国王様への献上品と、平民の予約を、

 同列に扱うと言うのか!!」


私は頷いて、肯定する。


「ええ。そうです。

 あなたもおっしゃっていた通り、

 我が家は平民上がりですので、

 平民の味方です。


 貴族だからとか、王族だからといって、

 特別扱いはしません」


しばらく口をパクパクさせていた使者だったが、

再び我々を睨みつけて、最後の言葉を放った。


「……後悔する事になるぞ」


そう捨て台詞を吐いた後、

のしのしと、元来た馬車に戻っていった。


その姿を見送ったエストは、

私を見て、ニヤリと笑った。


「さすが、私のおじい様です。

 スカっとしましたよ」


「ですが、これから戦争になるでしょう。

 急いで準備を整えなければなりませんね」


「でも、状況的には、

 5年前とさほど変わりませんよね?」


私もニヤリと笑って応じる。


「そうです。しかも今回は時間的猶予があるので、

 しっかりとした準備もできます。

 必ず追い返して見せましょう」


そして、

私達はこの会話の内容等を全て領民達に公開し、

貴族達が、

報復のために挙兵する事は確実である事も、

合わせて説明した。


その後、ガイン警備隊への入隊希望者を募り、

食料や医薬品等の備蓄も始めた。


この話を聞いた平民達は、

貴族からの報復を恐れるのではなく、

国王が相手でも一歩も引かず、

平民の味方をすると宣言したガイン家に、

喝采を浴びせてくれて、

領地総出で戦争準備を始めたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ