19 攻略対象者の正体
「――あ、あれ?再起動……」
「オデット!すまないオデット。瞳を見せて!――あぁ、大丈夫。色は変わってない。」
「ジーク。そなたまさか自分の身分も説明せずにここに連れて来たのか?」
「――王族であることはこちらに来る馬車の中で伝えました。陛下に謁見することも。」
「それだけ情報を得て分からないとは……。浅はかな娘で申し訳ございません。これは令嬢教育を受けておりません。瞳がグレーになったので、家から出さずに育てた為、世間知らずで……。自分を卑下するところも、全て私が至らなかった為です。」
「違います。義父上!馬車に乗せる直前に求婚し、その時まで家名を名乗っていなかったので、オデットには知りようがなかった。慎ましやかな彼女は、王族だとバレたら絶対頷いてくれないと思ったので、あえてサインが完了するまで黙っていたのです。申し訳ない。」
「謝り合いもいいですが、彼女は一年間学年一位ですよ。非常に聡明であることは講師の僕が保証します。求婚前はさておき、王族と聞いてジークの身分は何だと予想してた?」
「――畏れながら、王弟殿下と推察いたしました。」
「成る程……でも残念!王弟は僕です!」
「先生がぁ??――あのようなことをなさる方が王弟殿下とは……少しも予想できませんでした。ジーク様と旧知の間柄ということはなんとなく……。ですが、あの……」
「いいよ、あのようなことをする王弟が答えてあげよう。これでチャラだよ。」
「王太子殿下と第二王子殿下が双子の兄弟であるならば、王太子殿下が第一王子なのでは?」
「そうか、知らないとそうなるのか……。正解は、王太子は第三王子、でした~!」
「成る程……。王妃様がお産みになった王子殿下同士でも、長子相続ではないのですね。」
「その通り!その上、側室腹でも適性があれば順番が下でも王になれるよ。血には平等な権力争いだね。冷静な分析ありがとう~。で、もう婚約しちゃったけどジークでいいの?今なら全員口止めすれば反古にできるよ。確か双子の王子にも言い寄られてたよね。乗り換えちゃう?」
「先生、嫌がらせですか?私がどれだけキラキラ王子達から逃げ回ってたかご存じですよね?そのお陰でジーク様と出会えたのです。――逆に、ジーク様をお慕いしておりますが、王位を望まれるのであれば婚姻はお断りいたします。」
「なんで?王妃になりたくないの?贅沢できるよ?」
「目立ちたくないから三つ編み眼鏡にして、侍女の振りをしていたのですよ。王妃になりたいとも贅沢したいとも思うわけありません。平民になりたかったのですから。」
「ふ~ん……だそうですよ、兄上。ご懸念は払拭されましたか?彼女なら王位争いをたきつけたり、義姉上の勘に障ることもないでしょう。ちょ~っとイジメたくなるタイプではありますが、リラともドラジェともそれなりに上手くやっているようです。」
「ふむ。――よろしい。では家族になるのを楽しみにしているよ、オデット。ジークをよろしく頼む。」
「慎んでお受けいたします、国王陛下。」
「そこは父と呼んでくれんか。」
「畏まりました、お義父様。」
「うむ、娘はいいな。――ではフリッツ、子爵領については事務方と手続きを。」
「はっ。」




