表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/24

15 事情聴取と乱入者



 次の日の朝教室で、放課後に事情聴取があると担任に言われる。あの二人は欠席だ。お昼休みにジーク様に相談する。ありのままに話せばいい、婚約はまだだけど結婚の約束をした人がいるから、あれは二人の勝手な暴走だと説明するように言われた。




 放課後行ったのは、会議室みたいな何もない広い部屋。何故か薄暗い。担任とドロッセルマイヤー先生がいる。昨日目撃したことを先生に聞かれた。二人が目の前でケンカを始めたと、できるだけ端的に答える。理由に心当たりがあるか聞かれたのでそのまま答える。護身術の自主練習中に相手役を申し出てくれたカラボス様に抱きしめられて、助けを求めたらシュタール様が来て、そのまま喧嘩になってしまったと。


 二人のうちのどちらかと、もしくは両方と交際しているのかと問われるので否定した。すると、交際をエサに二人を手玉に取って、金品を巻き上げようとしたのではないかと、ドロッセルマイヤー先生が言い出した。唖然とした。酷い。教育者の言葉とは思えない。高位貴族子息の不祥事の責任を、全てわたしに被せるつもりかもしれない。昨日の腹いせなのかな。「そんなことするわけないです、だって」と言うと、質問に答える以外の発言は禁止だと言われたので「いいえ」と答えた。ニタリ顔の魔法講師は続けて言う。


 

「君の家には負債があって、父親は豪商から後妻を迎えたんだよね。で、継母に子供が生まれて邪険にされている。侍女も護衛も付いていないということは、君にあてられる予算は潤沢ではないんだろう?」 


「家庭の事情や資金についてはおっしゃるとおりですが、よそ様にお金をもらったことはありません。町で王子殿下に助けてもらった時、カラボス様のお姉様の洋服を貸してもらいましたが、断ったのに押し付けたのは向こうです。執事さんに聞いてください。金品は今後も巻き上げるつもりはありません。」 


「では結婚を迫るために色仕掛けでもしましたか?」


「していませんしする必要もありません。」


「彼らと結婚すれば玉の輿ですよ。なぜ必要がないのですか。」


「玉の輿に乗る意志はありません。必要がないのは結婚の約束をしている方がいるからです。」



 ガタガタ、バタンと問題の二人が部屋に入ってくる。盗み聞きでもしてたんだろうか。



「あなた方の聴取は済みました。出て行ってください。」 


「婚約しているとはどういうことだ?俺を差し置き……」


「婚約はしていません。結婚の約束です。」


「つまり正式ではないということですね。どこの誰ですか?その、金に汚い継母に無理矢理約束させられたのですか?想い合う我々二人を引き裂こうとは極悪人め。」 



 わたしに詰め寄って来る二人。魔法講師が二人をシールドに閉じ込める。ずっと黙っていた担任が口を開く。



「全員落ち着きなさい。オデットさん。その結婚の約束は、親に無理強いされたものなのですか?」


「いいえ、違います。」


「あなたとお相手は互いに想い合って結婚の約束をしたということですか?」


「(えーっと、境遇を思い合いお互い最適な相手として見繕った訳だから)――はい。」


「――今の微妙な間が、大変気になるところですが、まあいいでしょう。お相手は誰ですか?」


「公表していいかどうかお伺いしてからでないと答えられません。」



 しばらく黙ってわたしと担任の話を聞いていたドロッセルマイヤー魔法講師が言った。


 

「初めから相手がいると言っていれば、この二人が問題を起こすこともなかったはずだよね。やはり気を持たせて思わせぶりな態度をとったんじゃないの?」 


「――以前、王太子殿下や婚約者の令嬢の前でも言いました。私には他にお慕いする人がいますと。その場にこのお二人もいて聞いていたはずです。その時は、その方とはまだ結婚の約束まではしていませんでしたので、それ以上のことは言えませんでした。お二人に、教室で色々お誘いいただいた時には全てはっきり断っています。クラスメートの皆さんも、それは聞いていたはずです。何故、わたしが思わせぶりな態度をとったことになるのか、全くわかりません。」



 シールドの向こうでうなだれる二人。担任はまともな人だったのか、これで納得してくれた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ