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14 二人の継母と理想の結婚



 バタン。誰かが入ってくる音がして、目を開ける。ドロッセルマイヤー先生は開いたわたしの目を見て、苦い顔をした。入って来た人物が、キュッと足を止めた。あ、ジーク様だ。眼鏡もしてない、髪も解いているわたしが誰か分からないのかもしれない。でも、わたしが泣いてるからか、グッと眉をしかめ「何をしているっ!!」と慌てて近付いてくる。途端に先生はまたニヤニヤしだし「ヤボだな~邪魔しないでよ」とかなんとかごまかしながら医務室を出て行った。



「大丈夫か?――寮まで送る。身支度を整えるまで、外で待っている。」



 ジーク様はこちらを見ないようにしながら優しく言って出て行った。三つ編み眼鏡のいつもの容姿に戻った方がいいか、この別人状態のまま帰った方がいいか……。明日は事情聴取とか謹慎とかでお昼休みに温室に行けなくなるかもしれない。それなら事情を話すべきだ。いつも通り、三つ編み眼鏡で出て行っても変化に驚かないジーク様。歩きながら、今日までのゴタゴタはふんわりと、騎士団長子息と宰相子息が今日決闘をした流れは詳しく説明した。 


 悪女だって思われたら嫌だな。侍女として最後までお仕えしたい。私はジーク様に嫌われたくない。だから権力のある人と結婚はしたくないし、あの二人のことはむしろ苦手だから、思わせぶりなことはしていないということを訴えた。



 静かに聞いてたジーク様が、どういう人となら結婚したいかと聞いてきた。わたしは答えた。貴族的な家族じゃなくて平民みたいに触れ合えて温かい家庭が作れる人と結婚したい。継母に利用されないように、権力のない人がいい。浮気しない人、暴力を奮わない人、お金にだらしなくない人。 



「他には?」


「護身術の手合わせをしてくれたり、隣り合って本を読んだり、一緒にご飯を作ったりするのもいいかもしれない……。はっ!――何を、言ってるんだろう、わたし……。失礼致しました。出すぎた真似を……。」


「いや、僕が聞きたかったんだ。今の条件にあてはまれば、結婚するのか?」

 

「そんな方がいればいいのですが……。」



 廊下の途中で立ち止まり、ジーク様は俯くわたしの顎に指をそっとあて、上を向かせた。一瞬クシャっと泣きそうな顔をして、すぐに微笑み、跪いてわたしの手を取り言った。 



「僕と結婚してください。」


「えっ!?」


「条件はクリアしていると思う。考えて。明日からもっとお互いのことを詳しく話し合おう。でも君がどこの誰でも、僕は君自身が好ましい。――僕がどこの誰かわからない、現時点での君の気持ちはどう?知った後で翻してもいい。今の気持ちを教えてくれ。」 


「――お側にいさせてもらえるならうれしいですが、わたしは平民のようにして生きてきました。ジーク様とは釣り合いません。」


「正妻を刺激しないように、庶子の僕には後ろ盾のない令嬢の方がいいんだ。贅沢はさせてあげられないけど。」


「侍女としてでもお側にいられたらと私は思っていました。それに権力やお金がなければ、わたしの継母にたかられることもありませんね。婚姻して継母との縁が切れるのが待ち遠しいです。」



 うっすら微笑んでいたジーク様は、それを聞いて真顔に戻り、すぐに苦笑した。











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