12 婚約解消?って、まだ候補だった……
女子寮、リラ様の居室にて。
「リラ様、あの二人が想い合っているというのは本当ですか。」
「まあ、そうなって欲しいというわたくしの願望が含まれてはいますけれど、嘘とまでは言い切れないでしょうね。」
「願望、ですか?」
「王太子殿下達は何故かあの子を気にかけて構っていますでしょ?あれでも子爵令嬢ですから万が一ということもあります。幸い、本人は心底嫌がっていますので、わたくし達の座を奪いに来ることはないでしょう。しかし、先程のように無理矢理我が物にするような真似を、王太子殿下達がしないとは限りません。わたくし達の婚約を確固たるものにすると同時に、あの子にも蔑ろに出来ない婚約者ができれば安心です。」
「――ですがあの人は……」
「ドラジェ様。あの方の婚約者として、経済的政治的に力のない子爵家である、あの子の家は最適です。わたくし達の婚約者である双子の王子達にとって、あの方が下手に有力な貴族と婚姻を結ぶことこそ避けるべきなのですわ。」
「成る程……。流石リラ様!」
* * *
隣国の王子はあれ以来私には絡んでこない。そしてドラジェ様も絡んだり囲んだりしてこなくなった。だけど今度は彼女達の取り巻きが私を囲むようになった。仕切る人間がいない分、我も我もで今までより酷い。
だが相変わらず詰めは甘くて、キラキラ王子グループに見咎められ、婚約者候補の取り巻きとバレ、彼女達がけしかけたと誤解され、ドラジェ様が否定し、王子達に嘘付き呼ばわりされる泥沼だ。取り巻き達はわざとなの?これは悪役令嬢がざまあされる布石?私的には格好良く助けてもらったし、糾弾する積もりなんてない。それとも取り巻きをけしかけたのが私ってことになって私がざまあされるの??
ある日、ついにリラ様が割って入った。基本的に不干渉を貫いていた彼女が、ついに見かねたようだ。ドラジェ様に向かって言う。
「聞く耳を持たない人には何を言っても無駄よ。」
そして取り巻き達に向かって言う。
「貴女達が勝手なことをしたせいで、わたくし達が婚約者である王子達に嫌われてしまうわ。王子達の心変わりを阻止しようという、貴女達の心配はうれしいけれど逆効果よ。今後はお控えなさいな。」
流石!素晴らしい切り返しです、リラ様!私も考えろ、挽回するのだ!私は令嬢ズに駆け寄り、手を取りお礼を言う。
「いつも助けに来てくださってありがとうございます。」
「慣れ慣れしい!」
っと手を払うドラジェ様。ツンデレ様、今は出番ではないよ! 案の定「礼を言った相手に態度が悪い。」と第二王子に言われてしまう。あぁ、フォロー求む、リラ様!
「そもそも殿下達が婚約者以外にベタベタするからこのようなことになるのです。」
あ、リラ様切れた。おっしゃる通りだけども、今言っちゃ火に油!「やはり嫉妬で取り巻きにイジメさせたのか?!」と王太子も参戦。なんなのこのベタな展開。まさかここで婚約者候補から外す宣言とかしちゃうの?そうなの??偉い人の言葉は遮れない。実際直面すると難しいぞ。宣言前に打開しろ、私!
「リラ様が嫉妬される必要などありません。私には他にお慕いする人がいますので(嘘だけど)。」
「貴女が誰を好きでも関係ありません。婚約者がいるのに、他の女性と必要以上に親しくすること自体がだめなのです。」
「あの、でも、リラ様はご存知の通り、私は王子殿下達とは距離を取るよう心から努めています。私はどうしたら……」
「悪いのは貴女ではないのよ、オデット。悪いのは王子達です!他の女に手を出したいなら、婚約を破棄してからにしてくださいませ!!」
それ言っちゃダメなや~つ~!!
「婚約破棄なんて困ります!!私を巻き込まないで!そんなこと望んでいません!そっちで勝手に結婚してください!!私は関係ありませんから~!!」
今世初の大声で叫んで、ダッシュで逃げた。
結果、王子達は元サヤに戻りました。むしろ正式に婚約を果たされました。――なんか、リラ様に嵌められた感がありありだ……。




