1 はじまり
輪廻転生はアジア的な考えらしい。日本に来た外国人に密着するテレビで、欧米出身の女性が確かそう言っていた。もちろん宗教観によるのだろうけど。私は、死んだら生まれ変わるのが当たり前って自然と思ってた。とは言ってもそれは、いつか、の話。四十九日とか三回忌とか色々あるし。
だけど最近の転生ブームの影響か、死ぬ瞬間にふとよぎった。このまま異世界に転生したりして、って。
私は人生やり直すなんて面倒臭いこと、したいと思ったことはなかった。強いて言うなら大学で、司書課程をとればよかったなってくらい。趣味の読書は紙の本オンリーで、電子書籍なんて味気ないって思ってた。次に読む面白そうな本を探すため、深夜アニメを試聴しては原作本をチェックする日々。
その流れで、課金なしでできる現代が舞台の乙女ゲームならやったことがある。サクサク話が進まないのがじれったくてつづかなかったけど。結局、どんどんいくらでも続きが読める、WEB小説にどっぷりはまった24才。早く帰って続きが読みたいって仕事中にすら考えちゃうドはまりっぷりの今日この頃。
今日も足早に帰宅中、WEB小説のストーリーの続きに思いを馳せていた。ふと前を見ると突進して来る男性。両手は右の腰。――握る刃物?うそっ?!通り魔?本当にっ!?
眠れない夜に、こんな時の為にシミュレーションした動きを思い出す。突き出された刃物をかわし、腕を取って引き倒す。できちゃった!次は握った刃物を落とさせ……落とさせられないっ!!ぱっと瞬時に通り魔と上下が入れ代わる。
犯人や、なぜ君はその身体能力を他に生かさない?そもそも武芸を嗜んですらいない私はそう思う。イメトレ通りにいかないこの現実に、イメトレしかしてなかった事実と共に絶望し、振りかぶられる刃物を見る。
その瞬間に思ったのだ。このまま異世界に転生しちゃったりして、と。
主人公の認識です。シリーズを読んでいただいても分かりますが、輪廻転生は型は違えど各地にあるようです。