メンターとの闘い〜その2
オリトはメンター仲間と結束して、現在各メンターに指示を出している大元を特定しようとしていた。
「メンターは各自の意思に従って人々を導き、より良い社会を構成する」
オリトの掲げる言葉を噛み締めながら、ミサはコンピュータハッカーと結託してメンターに一台ずつ与えられているコンピュータ端末にウイルスを送り込み、上層の指示が行き渡らないようにジャミングした。
「オリト?」
待ち合わせの十分前に公園に行くと、オリトがスマホで誰かと会話している最中だった。ミサはオリトに気づかれないようにベンチの後ろに回り込み、耳をそばだてた。
「…反対派を洗い出す絶好の機会です。あなたがたの描く未来図がもうすぐ手に入ります。その際には私オリトの名前をお忘れなく」
ミサはオリトのそばから離れて、会話の内容を熟考した。
私は、オリトを盲信しちゃいけない。
ミサはこのとき、とても重要なことに気づいた。
オリトは頭が良い。何を考えているのかミサにはわからない。ただ、わかるのは、世界を動かそうとする勢力と、それに対する個々人の考えの勢力がオリトとミサの手によってこれから二分されるということだった!
どちらにつくかは、オリト次第だ。
ミサは膝ががくがくするのを感じた。未知の勢力とオリト。どちらも畏怖を感じる。しかし、ミサは兄の仇をとりたかったし、何かと闘わなければならないことは明白だった。
オリト。お願い。味方でいて!もしそうでなければ、私は独りでどうすればいい?
だけど、ミサはミサ、オリトはオリトでれっきとした個人だ。二人の考えが一致する確率の方が少ないだろう。ミサは自分の両頬を手で叩いて気合いを入れ直した。
「オリト」
「やあ、ミサ。早かったね」
「ええ」
計画の実行がどのくらい進んでいるか話すオリトの横顔をミサは目に焼き付けた。
ミサも自分の分担している方の進み具合を報告した。
打ち合わせを入念に済ませ、二人は別々に公園をあとにした。