5:結論としてこの世界は……
アルケミストを錬金術師に変更しました~
まずはレベルを10にすると、錬金術師の職業クエストが受けれる。なので、レベル10にするため、倉庫にあった装備でレベル上げすることに。
ユイ
レベル2
ジョブ:錬金術師 レベル1
装備:
姫に忠誠を誓った騎士の短剣 攻撃力+120
小花の帽子 HP自動回復
破片の盾 防御力+130
キャトルルのコート 防御力+50
二段ジャンプブーツ 素早さ+80・スキル二段ジャンプ使用可能
とりあえず、レベル1からでも装備できる武器と防具。低レベルから装備できるので性能はそこまでよくないけど、このくらいのレベル帯であれば十分。
次は10レベルを越えたら、もう少しいいものを装備できる。
「それとアイテムも持って行こうっと」
ポーション類などの回復アイテムをインベントリに入れて、ギルドの倉庫を出る。
「おかえりなさい、倉庫は――え?」
「装備とアイテムを取り出してきました。どうかしましたか?」
先ほどの受付嬢が、目をぱちくりと瞬いている。
「な、なんですかその装備!!」
「え? これからキャトルルとかスライムでレベル上げするので、整えただけですけど……。さっきまでの装備は、あんまりいいものじゃなかったので」
いいものじゃないどころか、初期装備でしたから。
「いいもの……って、さっきまでのも駆け出し冒険者なら普通よりちょっといいものでしたけど……」
なんだか納得いかないという顔で、受付嬢が私を見る。
まあ、今の私が装備してるのは低レベルで装備できる一番いいやつなので、驚かれてしまったのも仕方がない。
でも、この世界で目立つのが嫌っていう理由で装備のグレードを落としたくないから……。
私は気にしないことにして、話題を変える。
「討伐依頼を受けたいんですけど、いいですか?」
「あ、はいっ、もちろんです」
「依頼って、いくつまで受けれますか?」
「ご説明しますね」
カウンターに戻って、依頼の受け方やレベルについての話を聞いた。まず、レベルだけど……私がゲームをしていたときよりかなり低い。
レベル1~10:子供
レベル11~25:一般人
レベル30~:国に仕える騎士や傭兵など
レベル20~:初級冒険者(E~Fランク:依頼三個まで)
レベル35~:中級冒険者(C~Dランク:依頼五個まで)
レベル50~:上級冒険者(A~Bランク:依頼無制限)
レベル70~:一流冒険者(Sランク)
レベル90~:国に数人(SSランク)
という感じらしい。
ちなみに、自分のランクと一つ上のランクしか依頼は受けられないようになっている。
レベルは目安で、実績や貢献度によってランクがつけられているとのこと。
ゲームだとランクなんてなかったから、なんだか新鮮。
そもそもカンストレベルが300だったので、100レベル未満なんて初心者かキャラを作ったばかりの少しの期間だけだったけれど……。
「とりあえず始まりの塔に行くまでの道にいるモンスターがいいから、スライムとキャトルルの討伐依頼を受けます」
「はい、かしこまりました。ギルドカードをお願いします」
「ギルドカード?」
受付嬢の言葉に、私は首を傾げる。
今までそんなの使ったことがなかった気がするんだけど――あ! そういえば名前とかステータスが書かれたギルドカードをアイテムとして持っていたことを思い出す。
インベントリ収納じゃなくて、ステータス画面を操作すると出てくるカードだからすっかり忘れていた。ゲームでは使わないしね。
私はステータス画面を出して、ギルドカードを取り出す。
「これで大丈夫ですか?」
「はい! ユイさん、レベル2の錬金術師ですね」
「そうです~」
受付嬢がギルドカードに手続きをすると、カードの裏面に依頼内容が印刷されている。おおっ、これは便利だ。
しかも討伐数をカウントしてくれる機能までついている。
そう思っていたけれど、普通にクエストウィンドウも立ちあがった。
――わざわざ冒険者カードを見る必要はなさそう。
ウィンドウがなければ便利だけどね。
「それじゃあ、依頼に行ってきます」
「錬金術師は戦闘職ではないので、十分気をつけてくださいね! 無理だと思ったら、すぐに帰ってきてくださいね!!」
「大丈夫ですよ~」
心配する受付嬢に笑顔で手を振って、私は冒険者ギルドを後にした。
***
町へ来るときと同じように門から外へ出て、塔へ向かって歩く。さすがに、町のすぐ近くは門番たちが討伐してくれているみたいでモンスターがいない。
「あ、薬草発見!」
草原を歩いていると、水色の花が咲く薬草を発見した。これは錬金術師のジョブクエストで集めるアイテムなので、今のうちに採取しておく。
数束分を採取したところで、スライムが飛び出してきた。
「お、初スライム!」
普通はレベル1の場合、スライムは数発殴らなければ倒せない。だけど、私は装備だけは持ってるので一撃で倒すことができる。楽勝。
一撃でスライムを倒し、続いて出てきた二匹目やキャトルルも倒していく。すべて一撃なので、簡単にレベルが上がっていく。
とはいえ、雑魚モンスターゆえに経験値はそんなに多くない。
なのでそこそこの数を狩らなければいけないのが面倒といえば面倒だ。ほかのモンスターを相手にしてもいいんだけど、少し移動しなければいけないのでちょっと面倒。
『にゃう!』
「キャトルル、可愛いけどごめんね!」
ということで、私はひたすらスライムとキャトルルを狩ってレベルを9まで上げた。あと1レベルで、ジョブクエストを受けれるようになる。
しかしそこで、ふとしたことに気づく。
「そういえば、死んだ場合のデスペナってどうなってるんだろう?」
本来であれば5%の経験値を失うというものだけれど、今は? でも、あえて死ぬのも嫌。もしかしたら、最悪本当に死んじゃうかもしれないし……
とはいえ、スライムとキャトルルでは傷一つ負わないからなぁ。
「んー……」
ここから右手にいった森マップだとゴブリンがいるけど、私のレベルだと少しきついんだよね。
装備があるから倒せるけれど、順当にいけば次はうさもっちというもふもふしたうさぎのモンスターを倒す予定だった。
ここから少し歩くけど、可愛いグラフィックもあり人気のモンスターだから低レベルで狩りの対象にする人は多い。
「でもまぁ、考えるよりはやったほうがいいよね! ゴブリンがいる森なら見えてるから、歩けばすぐにつきそうだし」
うさもっちのエリアに今から歩きで行くと、帰りが夜になってしまいそうだ。さすがにそれは避けたい。
ということで、森へきてみました。
ラッキーなことに、入り口に一匹のゴブリンの姿。さすがに数匹を相手にするのは無理なので、タイミングがいい。
ゴブリンも私に気付いたらしく、こちらへ向かってきた。武器は持っておらず、素で殴ってくるだけだ。
「装備はあるし回復アイテムはあるから、一匹ならぎりレベル9でも倒せるけど……どうかなっ!?」
『ぐぎゃっ!』
私がナイフで攻撃すると、ダメージを与えることができた。しかしスライムのように一撃というわけにはいかず、反撃されてしまう。
ゴブリンの拳が私のみぞおちにヒットして――
「いったああああぁぁぁっ!!」
待って待って、めちゃくちゃ痛い。
私はすぐさまポーションを飲んでHPを回復し、ゴブリンから離れる。
「うそ嘘、あんなに痛いなんて聞いてない」
ゲームの痛覚遮断……というか本当に受けているわけじゃないんだから痛覚はないんだけど、改めてそれの偉大さに気付く。
そしてここはゲームの中じゃなくて現実の異世界であること確定だ! 今まで目を背けていたけれど、これはガチでファンタジーだ。
「さーて……どうしようか」
なんて意味深に言っても、このままゴブリンと戦うしかない。
ゴブリン
75/107
「うわ、まだ地味にHP残ってるね~」
私の一撃が32だったみたいなので、あと三回攻撃しないと倒せない。ちなみにポーションを飲んだこともあり、私のHPは満タンだ。
とはいえ、頑張らなければ。
「痛いのが怖くて冒険ができるか……っ!」
『ぐぎゃぎゃっ!』
私がもう一度斬りつけると、ゴブリンに反撃される。
「……っつぅ! でも、さっきよりは全然我慢できる!」
最初だからびっくりして、大袈裟に反応してしまっただけだ。現に、よく見るとHPだって全然減ったなかった。
そりゃそうだ。防御力高い装備だもん!
私がゴブリンと対峙したままでいたら、茂みががさりと音を立てた。
やばい、もしかしてゴブリン追加? そう思ったら、青年が飛び出してきた。
「大丈夫かっ!?」
「えっ?」
青年は冒険者のようで、手に剣を持っている。どうやら、私の悲鳴を聞いてかけつけてくれたみたいだ。
なにそれ、めっちゃいい人じゃん!
「ちょっとラビ、急に駆け出さないで……って、ゴブリン?」
「ああ! さくっと倒すぞ!」
「……はあ。わかった」
後ろから来た人は、ウィザードっぽい女の人だ。
ラビと呼ばれた青年が前衛をし、剣で一撃。そしてウィザードが魔法を一撃。ゴブリンをあっという間に倒してくれた。
《レベルアップしました》
私もゴブリンに攻撃していたので、その分の経験値をゲットしてレベルが上がった。これで錬金術師のジョブクエストを受けれるレベル10だ。
ジョブクエストでレベルを上げると、錬金術師のスキルを使えるようになる。攻撃用ポーションは錬金術師ギルドで売ってるはずだから、あとで見に行ってみよう。
っと、その前に。
「助けていただきありがとうございます!」
私は冒険者の二人にお礼を告げた。