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公爵令息のエピローグ

 俺はエチャード・モテニューだ。

学院を卒業後、第一王子殿下に承認いただいたミモザと結婚し、軍に所属した。

三男であるからいつかは己の身ひとつで生計を立てなければいけないと、薄々思っていたが幸運にも同じ公爵家に婿入りが決まった。

親が決めたことでもマリーナは申し分ない令嬢で結婚しても家族として愛を育めると思っていた。

だが、どうしても夢を捨てきれずにいたため婚約破棄を宣言し、俺はミモザと結婚した。


 あのガーデンパーティで婚約破棄を宣言するなど貴族としてはあるまじき行為だったが、ミモザを手に入れるためには仕方のないことだと割り切った。

俺は三男でさらに軍に入るため貴族社会から爪弾きにされても痛くも痒くもない。

問題は破棄を言い渡されるマリーナの方だ。

いくら優秀で公爵家の跡継ぎだとしても傷物として扱われて社交界では笑い者にされる。

それでもこの方法しかなかったから選んだのだが、苦労をかけてしまった。


 婚約破棄をしたものの幼馴染としては好きだし、二十も三十も上の訳ありな男の後妻になんてならなければ良いと思っている。

もしそうなりそうだったら全力で阻止はする。

だってそうだろう?

俺の勝手な夢のためにマリーナが不幸になるのは論外だ。


 まぁそんなことをしなくてもマリーナは第一王子殿下の側室になることが決まったし、俺は俺で貴族平民として自由を手に入れた。

これは魔女のルーシーが転生者の存在を教えてくれたからで感謝してもしきれない。

準備する時間が短かったのは大変だったが、ミモザが俺を好きだと言ってくれたのは幸運だった。


 俺は卒業をしたら軍に所属して一生を剣とともに生きて、ゆくゆくは国王になるスティーブンを兵士として支えるのが夢だった。

これはマリーナも知っていたしスティーブンも幼馴染で気心が知れた奴なら安心だと言ってくれた。

公爵家に婿入りするとなると難しいが、マリーナは最低限の社交界に出てくれたら領地運営も全部するから良いと言ってくれていた。

俺もそれで良いかと思っていた。

だが、公爵家ともなると最低限の社交界というだけでも学生時代の比ではない。

それでは訓練も休みがちになるし、何より貴族平民ではなくなる。

軍の上層部には当主が隊長をしていたりするが、俺は前線で剣を振るい護りたいのだ。


 それがマリーナと結婚すれば叶わないとは言わないが難しい。

そんなときに俺に好意を寄せてくれたのは公爵家の庶子だと名乗りを上げたミモザだった。

ブリズム公爵家に婿入りではなく、ミモザが俺に嫁入りしたいという。

実現すれば貴族平民が参加する社交界は王家主催の物だけになり、さらに護衛の関係もあり交代制になる。

参加数は学生のときよりも格段に少なくなる。

俺が望むのはこんな生活だ。


 幸いにもミモザは派手なことは好きだが、ドレスを着るためのコルセットが好きではないらしく社交界に出たがらなかった。

体を動かすダンスも疲れるから好きではないということで参加を強請られることもない。

家で夫の帰りを待つセンギョウシュフなるものになりたいそうで、この点も都合が良い。

ミモザには俺の都合で寂しい思いをさせてしまうかもしれないから願いがあれば叶えることにした。


 ミモザの望み通りの生活を用意しているのにミモザには不満があるようだ。

俺はミモザが何もしなくていいように手配しているのだが、まだまだ足りないらしい。

夫の帰りを待つセンギョウシュフをしたいというから半年に一回の長期休みを全部使って家に帰っているんだが、何が足りないのだろうか。


 そう言えば、第二王子殿下が足繁くミモザの下に通っているということだが既婚者愛人にでもするつもりなのだろうか。

いくらミモザが公爵家の庶子と思われていても平民を愛人にはできない。

それに王家が一兵卒の妻を所望したとなると外聞も悪いだろうし。

ミモザは第二王子殿下とはお友達だと言っているが満更でもないようだし。

だけど分かっているんだろうか。

離婚したところで平民では第二王子殿下の妃どころか愛人にもなれないということを。


 アンソニー様に頼んで俺との離婚届けを用意してもらっているようだが。

今、アンソニー様と会えるのは既婚者であり、公爵家の庶子という立場があるからだ。

既婚者である限り、ミモザが産んだ子どもは子種が誰であれ、俺との子として扱われる。

一応、避妊薬は飲ませているが万が一ということもある。


 マリーナからは万が一にでも子ができたら養子として引き取るから心配いらないと言われているけど、これ以上迷惑はかけられない。

それにしてもミモザは俺のことを愛しているのではなかったのだろうか。

俺を選んでくれたのだから何不自由なく過ごせるようにと願いは全て叶えてきたというのに一体、何が足りないというのだろうか。

本当に女心とは謎だ。

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