ヒロインのモノローグ
私はミモザ。
と言ってもこの体の持ち主がミモザであって私はミモザじゃないわ。
三堀茜という女子高生だったのよ。
三堀って言えば不動産から海運業で成功した人生の成功者でそこの末っ子として生まれたわ。
お祖父様の代から成功しているから財産だって莫大なものだし、働かなくても一生困らないと思っていたの。
だけど小学校に入るときに見つかった心臓病のせいで病院から出られないということが分かった。
これじゃいくらお金があったって海外旅行にも行けないし意味が無いって人生悲観したんだけど心臓移植ってやつがあるって知ってからは捨てたもんじゃないかもって思ったの。
だってそうでしょう?
天下の三堀よ。
お金はいくらでもあるんだから私の心臓を買えば良いのだと思ってお母さまに言ったら頬を打たれたわ。
私は何も間違ったことを言っていないんだし、同年代の子が普通に走り回っているのに私が我慢しないといけないって不公平でしょう?
皆がそれは間違っているって言うけど私が元気に走れたら嬉しいと思っている癖にと考えたわ。
でもこれが世間でいう世間体ってやつなんだと思うと心臓を買ってというのは止めたの。
私だって三堀のお嬢様なんだから世間体くらい気にすることができるもの。
代わりに子どもらしくゲームや本を買ってもらうことにしたの。
ついでにインターネットも繋いでもらったわ。
パソコンで見る世界はどれも陳腐だったけど病室から出られない私の慰めにはなったわ。
そこで乙女ゲームというものを知ったの。
ヒロインがイケメンに囲まれてハッピーエンドってやつよ。
同年代の友達っていうのはいないし、雑誌に載っていたイケメンに恋人になるようにお母さまにお願いしたけどダメだって言われたわ。
病室から出ないで、ずっと我慢している私にこれ以上、我慢しろって言うのよ。
でもゲームの中の男たちは私の望む言葉をくれるの。
中には、お前には愛想が尽きたとか言っていなくなる男もいるけど皆、私のことを愛してるって言ってくれるのよ。
私と彼たちの中を引き裂こうと邪魔をしてくる女がいるけど三堀に楯突こうなんて百年早いわ。
いっつも引き下がるのよ。
根性がないわよね。
恋人が三十人を超えたくらいのときね。
異世界転生ということあるってネットに書いてあったの。
事故にあったり病弱だったりする女の子がここではない別の世界に行けるってやつよ。
六歳のときから病院にいる私に異世界転生が起こっても不思議ではないって思ったら起きたのよ。
しかも会いたいって思っていたエチャードがいる世界によ。
今までは画面上でしか会話できなかったから実際に会えて本当に嬉しかった。
二番目の推しはスティーブンなんだけど、こっちは王子様だから気軽に会えないって分かって残念だわ。
決まり事だから仕方ないんだってエチャードに言われたけど、同じ王子である弟の方のアンソニーは気軽に会えるわ。
身分差は無くした方が良いから王になるって言ってるから、そうなったらスティーブンにも気にすることなく会える。
アンソニーには頑張ってもらわないといけないから応援はしたわ。
それに宝石やドレスでも良い物をくれるからアンソニーとは友達でいたいのよね。
ぜんぜんタイプじゃないし、画面で話しているときよりも馬鹿そうなんだもの。
異世界転生したときは嬉しかったけど、私が転生した時間軸は皆と出会う直前だった。
どうせなら皆と仲良くなって邪魔者がいなくなってからだったら良かったと思ったけど、未来が分かっているから簡単よねって考えることにしたの。
そして本当に簡単だったわ。
エチャードからはマリーナと婚約を破棄するから婚約してくれないかって言われたときは嬉しかったわ。
だけど仲良くなっているはずなのにスティーブンがプロポーズしてくれないのよね。
私の一番はエチャードだからエチャードと結婚して、そのあとにスティーブンとも仲良くするって決めてたのにガーデンパーティが終わっちゃうし。
代わりにアンソニーがプロポーズしてくるんだもの。
うんざりしちゃうわ。
私の邪魔をするマリーナのことも有耶無耶になって終わったし。
いくら貴族でも悪いことをしたら罰を受けるのが当たり前なのに、きっと世間体ってやつを気にしてあの場では出来なかったのね。
マリーナの取り巻きのルーシーとか言う女が煩かったけど私は公爵令嬢で向こうは伯爵令嬢だもの。
きっと不敬罪で捕まっているに違いないわ。
ざまぁみなさい。
エチャードには心配だからって一緒に家に来て欲しいって言われたけど、寮から出ることはできないって断ったわ。
でもまだ学生なのに一緒に住むための家を用意してくれるなんて私のことを本当に愛してくれてるのね。
マリーナに虐められてるって訴えても気のせいだって言っていたから愛されていないんじゃないかと思っていたけど、愛されていたのよ。




