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 村から帰る途中で見つけた、あの金色の髪の人が忘れられない。鋭い眼光は金色に見えた。ポワルドゥルキャロットの人たちはもっと穏やかな目をしている。それに何より怖かった。見てはいけないものを見た気分になった。

 だけどそのままにしておけない。デュデュにはあの時の布をかぶった人たちが金髪であったことを伝えておいた。意外なことにデュデュはあまり驚かなかった。

「村の中でもごくたまに金色の髪の者を見たという報告は受けているのだよ。彼らが略奪をするのは真夜中だが、もしかすると昼間は旅人や村人に扮しているのかもしれない」

「ということは、大勢で襲ってくるというわけではないのでしょうか」

「ふむ、それには気づかなかった。そうかもしれないな」

 そう言ってデュデュは警備をする兵隊のところへ行ったようだった。

 ポワルドゥルキャロットのカールバーンが来ている今、僕が村に来たばかりのころよりずっと外国人の姿を見かけるようになった。基本的にデュウの村の人は黒い髪で顔立ちは僕と似たような感じだけど、茶色い髪の人も時々見かける。黒髪で黒い目でも肌の浅黒い人も見かけるし、すごく背の高い人種の人も見たことがある。

 夜中の火事は金色の髪の砂漠の民の仕業らしいけれど、戦争を持ちかけてくるのは砂漠の民とは限らない。こうして村に入り込んだ誰かが村の様子を探っている可能性もあるのだろう。


◇◇◇


 デュデュと出かけて井戸丸の12人兄弟の話を聞いて、僕はさらに歴史に興味がわいた。古文書の解読を早くやったほうが良いんじゃないだろうか。

 先生にそのことを言うととても喜んでくれた。

「いよいよ古文書の解読ですね。この作業はひとりでは難しいのですよ。ミツヒコと一緒にできるとなるときっと解読も進むでしょう。今まで解読したものでも、古い言語ですから解釈が間違っている場合もあり得ます。違うと思ったら遠慮なく言ってください」

「はい、わかりました。じゃあ、こちらからとりかかりますね」

 僕はまず、先に先生が解読した書物を読むことにした。それを参考にして、未解読のものに移ることにした。

 ところが、先生が解読したものもかなり未完成だった。

 単語の意味がまったく分からないものも多かったし、ある程度の意味が推測されても確定できていないものもある。それらを飛ばし飛ばし読んでいるために、意味が通じないところもあった。

 こういうのは、実はとても楽しい。パズルをしているみたいだ。パチリとはまった時は何とも言えず爽快なんだ。僕はつい熱中しすぎて時間がたつのを忘れていた。

「ミツヒコ、良いかい?」

 デュデュの声が聞こえて顔をあげると、部屋に先生はいなかった。

「あ、デュデュ」

「来客の時間なんだが、来てもらっていいかね?」

「はい、ああ、もうそんな時間ですか」

 急いで立ち上がってデュデュと玄関へ向かった。最近、来客の時は僕も同席することが多い。呼ばれないこともあるけれど、予定の把握のために僕が同席していた方が色々と都合が良いんだ。というか、来客の前にデュデュを呼びに行くのは僕の方だったんだけど、あまりにも古文書に集中しすぎていて忘れていた。


 来客の出迎えに玄関に行くと、ちょうど客用の扉が開いたところだった。

「いらっしゃいませ、シュブリッジさん。お待ちしておりました」

 お辞儀をしてお迎えをする。今日のお客は、このデュウの村から一番近くにあるシユウの村の(領主の弟)シュブリッジさんだ。この人というか、シユウの村とは仲が良くて近隣にあることもあって、シュブリッジさんは週に一度は訪ねてくる。顔なじみになったものだ。

 いつものように足を洗い、客間に通すとデュデュはもう座って待っていた。

「やあシュブリッジ。今日はアピュのジュースが冷えているよ」

「ああ、ありがたい。さっそくいただくよ」

 そんな挨拶をしながら二人はいつものように親しく話し始めた。いつもなら僕はここに居る必要はないから席を外すのだけど、今日はデュデュに居るように言われたので、3人で3角になるように座った。

 するとシュブリッジさんが僕の方を向いてちょっと考えるようなぐさをして言った。

「ミツヒコ、あなたは・・・」

 なに。何言い淀んでるんですか。次の言葉をじっと待つ。言いにくそうにゆっくりとシュブリッジさんは口を開いた。

「男、だよな?」

「・・・はい?」

 ん? どういう意味? 僕の耳には「男」と聞こえたけど、それで良いんだよね? 普通こういうことは聞かれないから、僕の聞き間違いかと思ったけど、良いんだよね? ていうか、女と間違われたことなんてないけどなあ。本当にそう聞かれたのか?

 すぐにデュデュが助け舟を出してくれた。

「ミツヒコは男だ。そう見えるだろ?」

「あ、ああ。ああもちろん、男に見えるが、万が一ということもあるかと思って」

 万が一女に!? ならないからね!

 だけど、シュブリッジさんの話を聞いていて、彼がなぜそんなことを言ったのかわかったのだ。いや、それ以上に深刻な状況を聞かされることとなった。




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